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シーズン後半戦に突入するBリーグ 地区首位ターンの新潟アルビレックスBBの見過ごせないチーム総合力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新潟アルビレックスBB不動の司令塔五十嵐圭選手(右・筆者撮影)

 天皇杯バスケは千葉ジェッツの3連覇達成で幕を閉じ、Bリーグは16日の第19節からシーズン後半戦に突入する。ここからが各チームにとって本格的にチャンピオンシップ進出、残留プレーオフ回避を賭けた熾烈な戦いが繰り広げられることになる。

 そんな状況下で不気味な存在感を示し、後半戦の主役に躍り出そうな予感たっぷりなのが新潟アルビレックスBBだ。前半戦を21勝10敗で中地区単独首位で折り返し、12月には昨シーズンのリーグ覇者アルバルク東京にも連勝を飾っている。初のチャンピオンシップ進出を狙うそのチーム力は、今や強豪チームに匹敵するものになっているといっていい。

 新潟といえば、過去2シーズンはいずれも負け越し、昨シーズンは後半戦途中まで残留プレーオフ圏内を争っているようなチームだった。だが今シーズンは開幕から白星を積み重ね、川崎ブレイブサンダースやシーホース三河という強豪チームを抑えて中地区首位に位置している。今シーズンの新潟が明らかに変貌しているのは一目瞭然だろう。

 だがBリーグ1年目の2016-17シーズンから五十嵐圭選手、ダバンテ・ガードナー選手が中心選手となり、チームを牽引するというチーム構成は現在も大きく変わっていない(昨シーズン途中から加入したラモント・ハミルトン選手も牽引役を担うようになった)。だが昨シーズンまでのチーム状態であれば、ここまでの成績を残すことは不可能だ。

 庄司和広HCは今シーズンのチーム状態についてどのように感じているのだろうか。

 「バスケットに対して(チームが)賢くなってきました。そしてまた、どういうところで頑張らないといけないのか、今まで2年間はどうしてもオフェンス・マインドが強く、後半やっぱりエネルギーが切れてしまった時に、ディフェンスで頑張ればオフェンスで(試合を)とれる力があるから、そこで点差が開いてくると…。

 そのためにはまずディフェンス、両エンドで頑張らなきゃいけない。そこは誰かがやられるのではなく、チームでやられるという意識を持たせるために今シーズン臨んだんですが、そこはうまく機能し始めて、そして攻め所に対して相手の弱みのところを強く攻められるようになったかなと思います。そこは外国人選手を起点にしながら日本人選手、日本人選手を起点にしながら外国人選手というのができるようになったかなと思います」

 庄司HCが証言しているように、今シーズンの新潟はチームとしてまとまり、今まで以上にバスケットIQが高いバスケができるようになった。それは試合の流れを読みながら戦い方を変えられるようになり、相手チームに対応しながら安定した試合ができるようになったのだ。同HCによると、シーズン開幕したばかりの10月の千葉との2連戦で、連敗しながらもチームとして戦える手応えを得ていたという。

 中心選手たちも庄司HCと同様の感じ方をしている。五十嵐選手も以下のように話し、今シーズンはチームとして戦えるようになっていることを実感しているようだ。

 「シーズンを通していく中で徐々に(チーム状態が)良くなってきているなと個人的に感じている部分ではあります。そんな中で真介(柏木選手)が入って、僕自身は昔からプレーしていたので、コンビネーションという部分で連携が良くなってくれば、自然といいかたちでなっていくんじゃいないかなというところが今の要因にもなっていると思います。

 経験のあるベテランも多い中で自分たちのチームではダバンテがエースなので、そこをうまく使いながらラモントだったり、大事な局面では僕がボールを保持しながらピック&ロールを使ったり、うまくバランスを保ちながらプレーするという意味では1シーズン目、2シーズン目と比べると、今シーズンは少し余裕をもちながらプレーができています。

 あとはディフェンスの部分ですごく強度が上がったというのが今までと違ったところではあります。オフェンスがダメでもディフェンスでしっかり我慢できるようになったのが成長している部分だと思いますね」

 昨シーズンの得点王に輝いたガードナー選手も、シーズン開幕から個人成績はまったく意識せず、チームに勝利だけを考えるプレーを続けてきたが、チームとしての熟成とともに彼のプレーも確実に変化してきている。

今やリーグ屈指の最強外国人コンビを形成するガードナー選手(右)とハミルトン選手(筆者撮影)
今やリーグ屈指の最強外国人コンビを形成するガードナー選手(右)とハミルトン選手(筆者撮影)

 「初のチャンピオンシップ進出に向け、チームはいい方向に向かっており、現在のチーム状況に満足している。チームメイトも常にハードなプレーを続けているし、試合に出てない時でも大声で声をかけながらチームを盛り立ててくれている。今はチームで戦っている感覚がある。

 自分はただ得点だけを狙う選手になりたくない。リバウンド、パス、アシスト、守り──とすべてをこなせるチームにとって最善の選手になりたいと思っている。特に今シーズンは個人的にオフェンスよりディフェンスに集中するようにしている。

 今年はここまでチバやミカワのようなチームと互角の戦いをしている。十分にチャンピオンシップに進出できる力があるように思う」

 以上のように、庄司HCや中心選手たちが今シーズンのチームに自信を深めている。だからと言って現状に満足しているわけではまったくない。それは同HCの発言からも明らかだ。

 「今の順位は何の参考にもならないですし(重要なのは)シーズンが終わっての順位なので、選手にその話もしました。やっぱり今じゃない、僕たちがやることは勝ち続けることと、正しいことをやり続けることと、もし上手くいかなくても下を向かないことだと思うので、それをシーズン終わりまで徹底させることがチームが1つになることかなと思います」

 シーズン後半戦も新潟の躍進が期待できそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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