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アスレチックスに続きブルワーズも! 短期決戦のポストシーズンで中継ぎ先発+継投リレーは有効なのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
地区シリーズ初戦は継投リレーを採用することを明らかにしたクレイグ・カウンセル監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロッキーズと地区シリーズを戦うブルワーズのクレイグ・カウンセル監督が現地3日、前日会見に臨み、初戦は中継ぎ投手を先発させ継投リレーで戦うことを明らかにした。前日にヤンキースとのワイルドカード決定戦を戦うアスレチックスのボブ・メルビン監督が、同様に継投リレー採用を発表したばかり。今後もポストシーズンという短期決戦の場で採用されていくのだろうか。

 まずは会見上のカウンセル監督の発言をチェックしてみたい。第1戦の先発投手を聞かれ、以下のように答えている。

 「我々はブルペンを使っていく。“ブルペン・デー(継投リレー)”になる。ここ数週間で先発投手を務めていない投手たちを起用していく。中継ぎ投手を次々に使う予定だ。ただ現時点で明確な登板順は決まっていない」

 さらにメディアから継投リレーを採用する理由について問われると、さらに以下のように説明している。

 「選手皆が休養することができた。それが第一の理由だ。現在のチーム布陣を考え、ポストシーズンを通して大きな意味で先発、中継ぎというものにとらわれないようにしようと思っている。このシリーズは投手陣全員で戦っていくことになる。それぞれの投手が重要なイニングを任されることになり、27個のアウトを奪うのはそれぞれ違った方法でいくべきだと考えている。

 第2戦はジョリース・チャシンが先発するので、いわゆる先発投手を起用することになる。ただし彼にも(ポストシーズンでは)公式戦として先発投手が求められるような仕事を担ってもらおうとは思っていない。

 27個のアウトを奪うためにすべての投手を使っていき、皆で一緒に27アウトを分け合おうという考えだ。このシリーズはオフ(移動日)が入るので(この投手起用策に)自信を感じているし、必ずできると思っている」

 カウンセル監督は地区シリーズに限らず、勝ち進む限りポストシーズンを通して同様の投手起用を採用していくようだ。これはブルワーズのチーム事情にも大きく起因しているだろう。

 今シーズン先発陣は決して盤石の布陣ではなかった。エース格としてチャシン投手が35試合に先発し、15勝8敗、防御率3.50の成績を残しているが、彼以外に二桁勝利した投手はいなかった。しかも35試合に先発したチャシン投手にしても、投球イニング数は192.2イニングと200イニングに達しておらず、それほど長いイニングを投げていない状態だった。

 その一方で中継ぎ陣は、中継ぎ防御率がナ・リーグ2位の3.47(先発防御率は同7位の3.92)からも理解できるように、シーズンを通して安定していた。しかも12セーブ以上を記録した投手が3人おり、絶対的なクローザーを置かず試合状況において分業してきた。それだけカウンセル監督が信頼できる中継ぎ投手たちが揃っているということなのだ。

 つまりブルワーズはシーズン中からやや不安な先発陣を中継ぎ陣がカバーするという戦い方をしてきた。それがポストシーズンという短期決戦の場で、その特長をさらに明確にしようとしているのだ。

 元々「中継ぎ先発+継投リレー」は先発の谷間に用いられる戦術だったが、今シーズンになって先発4人体制でシーズンに臨んだレイズが頻繁に採用するようになり、改めて注目されるようになった。さらにここ数年のポストシーズンでは、カブス、インディアンス、ドジャースなどがクローザーを含め中継ぎ投手を早めに投入する起用法で成功を収めており、短期決戦での投球起用法はシーズン中とは明らかに変化している。

 今年ポストシーズンに進出している10チームは、基本的に中継ぎ陣が充実しているチームばかりだ。今シーズンの中継ぎ防御率をみると、ナ・リーグはカブス、ブルワーズ、ドジャースがベスト5に名を連ね、ア・リーグはアストロズ、アスレチックス、ヤンキース、レッドソックスがトップ4を占めている。

 果たして今年のポストシーズンで「中継ぎ先発+継投リレー」は新しいトレンドとして広まっていくのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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