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貧乏球団アスレチックスがみせた意地! 年俸総額最下位からポストシーズン進出決定

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
4年ぶりにポストシーズン進出を決めたオークランド・アスレチックス(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アスレチックスが現地24日、熾烈なポストシーズン争いの末、ア・リーグ最後の一枠を獲得した。チームにとって4年ぶりのポストシーズン進出となる。

 朗報が届いたのは、敵地で迎えたマリナーズ戦の開始直後だった。アスレチックスとポストシーズン争いしていたレイズがヤンキースに1-4で敗れたため、残り1つのワイルドカード枠を獲得することに成功した。過去3シーズンは地区最下位に沈んでいたチームの見事な復活劇だった。

 アスレチックスといえば、MLB球界でも屈指の低予算チームとして知られている。他チームが本拠地移転や新球場建設で予算を確保する中、新球場プランは出ながらも頓挫を繰り返し、オークランドに移転してきた1968年から現在まで同じ球場を使い続けている。ここ数年は年俸総額も常にMLB平均を大きく下回っている状態だった。

 『USA TODAY』によれば、今シーズン開幕時の年俸総額は6265万2500ドル(約69億円)でMLB最下位。1位だったジャイアンツ(2億2142万6944ドル)の3分の1にも満たない額でシーズンに臨み、実際シーズン前半戦は厳しい戦いを強いられた。開幕と同時に地区の下位に低迷し、6月下旬には地区首位と10.5ゲーム差まで引き離されたこともあった。

 それでも4月(13勝12敗)、5月(15勝14敗)と何とか勝ち越しを続け、6月中旬以降から上昇気運に乗り、7月(17勝8敗)、8月(18勝9敗)と快進撃を続け、一気にポストシーズン争いに加わった。MLB公式サイトによれば、6月15日以降の成績(60勝26敗)はMLBトップだという。

 もちろん戦力は高予算チームのようなスター選手が揃っているわけではない。チーム打率(.252)はMLB11位で、チーム防御率(3.77)も同9位と平凡で、個人成績タイトルを争っているのも本塁打、打点の二冠王を狙うクリス・デービス選手くらいだ。それでもチームの総合力を武器に、高予算チームと互角に渡り合ってきた。

 改めて今シーズンの成功で、低年俸でもチームにフィットする選手をリクルートしてくるビリー・ビーンGM(現在はベースボール運営担当上席副社長)の慧眼と、2011年シーズン途中から指揮官に任命されチームをまとめ続けたボブ・メルビン監督の采配が脚光を浴びることになったのではないか。

 ただアスレチックスにとって、年俸総額最下位からのポストシーズン進出は初めてのことではない。6年ぶりに地区優勝を飾った2012年シーズンも年俸総額最下位からの快挙を達成している。しかしメルビン監督指揮下で2012年以降7シーズンで4度のポストシーズン進出を達成しているが、一度も地区シリーズ、ワイルドカード決定戦を勝ち上がることができていない。

 ポストシーズン進出を決めた残りチームの年俸総額順位は、レッドソックスの2位を筆頭に、アストロズ(6位)、ヤンキース(10位)、インディアンス(15位)──と続く。果たして今シーズンのアスレチックスは、この壁を打ち破ることができるだろうか。まずはワイルドカード決定戦でヤンキースと対戦する。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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