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インディアンスが新投手王国に? 史上初の“200奪三振カルテット”が誕生

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
22日のレッドソックス戦で自身初の年間200奪三振を達成したクリビンジャー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現地22日のレッドソックス戦に先発したインディアンスのマイク・クリビンジャー投手が5回を投げ、3安打2失点6三振の好投を演じた。この日までに196奪三振を記録していたMLB3年目の27歳右腕は、自身初のシーズン200奪三振を達成した。

 この日の快挙はこれだけに留まらない。今シーズンのインディアンスには、すでにカルロス・カラスコ投手(217奪三振)、トレバー・バウアー投手(215奪三振)、コリー・クルバー投手(205奪三振)がそれぞれ大台に到達しており、MLB史上初めて同一チーム内で“200奪三振カルテット”が誕生した。MLBの様々な公式記録をツイートしている『MLB Stat of the Day』でも、4投手の画像付きで以下のような投稿がなされている。

 史上初のカルテット誕生ということは、これまでの記録は“トリオ”ということになるが、1シーズンで同一チーム内に3人の200奪三振達成者が揃うということ自体もかなり希有なことだった。米国のスポーツ専門サイト『The Score』が報じたところでは、1967年のツインズ、1969年のアストロズ、2013年のタイガース──と3度しか実現していない。カルテット誕生がどれほど希少なことかが理解できるだろう。

 ただ昨今のMLBの潮流は、本塁打が量産される一方で三振も量産されるようになっている。本欄でも5月に「三振数が安打数を上回る逆転現象」が起きている事実を報告しているが、実は現在もその現象は続いており、このままシーズンが終了すればMLB初のことになる。

 それは最近のデータにも如実に現れている。シーズン200奪三振は長年にわたり先発投手の金字塔ともいうべきものだったが、ここ最近はどうも違ってきている。2007年までは200奪三振を達成する投手はほぼ10人を超えることは珍しいことだったが、2008年以降は毎年10人以上の達成者が続いている。

 ちなみに今シーズンもマックス・シャーザー投手の290を筆頭に、新たに仲間入りしたクリビンジャー投手を加え、すでに14人が達成している。しかも22日時点で190台に乗せている投手が5人おり、あと数人はここに加わってくる可能性もある。それだけ現在の200奪三振は、達成難易度が下がっているのだ。とはいえ、同一チーム内に4人揃うというのは簡単なことではなく、やはりMLB史に刻まれる快挙であることは間違いない。

 そうなると、どうしても気になってくるのがポストシーズンの行方だ。短期決戦は投手力が重要なカギを握っているといえる。2015年のメッツを思い出してほしい。マット・ハービー投手、ジェイコブ・デグロム投手、ノア・シンダーガード投手──と“次世代トリオ”の台頭で、ポストシーズン進出チームでシーズン勝利数が最下位だったにもかかわらず、ワールドシリーズ進出を決めたのだ。

 今シーズンのインディアンスもこのままいけば、ア・リーグの中で最も勝利数の少ないチームとしてポストシーズンに臨むことになる。“200奪三振カルテット”の存在はやはり他のチームにとって脅威だろう。彼らの活躍次第で、2年ぶりのワールドシリーズ進出も決して夢ではないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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