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世界へと繋がり始めたシーズン3年目を迎えるBリーグ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
関西圏4チームの選手とともに会見に出席した大河正明チェアマン(中央、筆者撮影)

 Bリーグは7月23日、9月にマカオで開催される国際大会に千葉ジェッツ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、琉球ゴールデンキングスの3チームが参加することを明らかにした。

 同大会の正式名称は『The Terrific 12(テリフィック12)』で、国際バスケットボール連盟(FIBA)公認の国際大会となる。日本、中国(CBA)、韓国(KBL)、フィリピン(PBA)、台湾(SBL)の4リーグから計12チームが参加し、5日間にわたり予選リーグ、決勝トーナメントを実施し、優勝チームを決めるというものだ。

 同大会に出場するBリーグの3チームは、昨シーズンのチャンピオンシップ(いわゆるプレーオフ)に進出した8チームの中で大会出場を立候補していた上位チームをBリーグが推薦し選出されたものだ。ちなみに昨シーズンのBリーグ王者であるアルバルク東京も、ほぼ同時期に中国で開催されるアジアのクラブチーム王者を決める『FIBA Asia Champions Cup 2018』に出場予定で、実に4チームが2018-19シーズン直前に国際大会に出場できることになったのだ。

 実はそれだけに留まらない。Bリーグは昨年に続き、シーズン開幕前に『B.LEAGUE EARLY CUP』(以下、アーリーカップ)を実施することになっているのだが、全国6地区(東北、関東、東海、北信越、関西、西日本)のうち関西トーナメントで、Bリーグの枠を超えKBLのソウル三星サンダース(同チームはテリフィック12にも参戦する)の参戦が決まっているのだ。

 つい先頃大河正明チェアマンも出席し、関西圏4チーム(大阪エヴェッサ、滋賀レイクスターズ、西宮ストークス、バンビシャス奈良)が揃いアーリーカップの大会開催会見が実施されたのだが、会見に参加した選手たちは一様に、今回のアーリーカップで海外クラブチームと対戦できることを歓迎している。

 「国内の試合だけでは世界レベルというのは体感できないので、そういう試合に各クラブがどんどん参加できる機会が増えたら嬉しいですし、それを知ることでどのくらいのレベルに達すれば自分が代表に呼んでもらえるのかという目安にもなってくるので、それは大事なことですし、参加できるならどんどんしていきたいと思います」(大阪エヴェッサ・藤高宗一郎選手)

 「やはり普段海外の選手、チームと戦えることはほぼないので、とてもいい経験になりますし、身体の当たりだったり、シュート力だったり、チーム力だったりが違うと思うので、そういったことを経験できるということはとてもいいことだと思います」(滋賀レイクスターズ・狩野祐介選手)

 「滅多に(試合を)することがないので、フィジカル面、シュート力も全然違うと思いますし、これから先自分のキャリアにいい影響をもたらすんじゃないかと思い、いいチャンスじゃないかと思い、いい経験にしたいなと思います」(西宮ストークス・道原紀晃選手)

 「皆さんがいった通りで、海外のチームとなるのはいい経験になると思いますし、今後の自分のキャリアにも影響があると思うので、自分の成長につながるようにそうした試合を楽しんでいければと思います」(バンビシャス奈良・本多純平選手)

 残念ながら今回は関西トーナメントだけの試みとなってしまったが、大河チェアマンは具体的な案ではないとしながらも、将来的にはもっと多くの近隣諸国チームをアーリーカップに招待したり、さらには海外選手を集めての“Bリーグ版”のサマーリーグの開催なども視野に入れているようだ。

 チェアマンによれば、2年目のBリーグは前年比11.8%増の観客動員数を記録し、B1の公式戦では全体の40%が満員シェアだったという。新規プロリーグとして着実に歩を進めているのは確かだが、バスケという世界規模の競技から俯瞰的に考えれば、Bリーグ自体の国際的競争力はまだまだ非力だ。

 サッカーの例を見ても明らかなように、今やサッカーW杯は日本中を興奮させるスポーツイベントになった。それは日本代表がW杯の常連チームになったためであり、そうした環境を整えることができたのもJリーグが誕生したからに他ならない。Jリーグもここまで国際競争力を高めていく中で、海外からスター選手を呼び寄せる一方で、日本人選手をどんどん海外に送り出し、日本サッカーの実力を向上させていった。やはりBリーグも同じ道を歩んでいくしかないのだ。

 そういった面からも各年代の代表チームに偏っていた国際経験の場を、リーグ全体に拡大していくのはとても重要なことになってくる。今後Bリーグのチームが国際大会で活躍できるようになれば海外を含めスポンサーを獲得できるチャンスが広がるし、資金が増えていけば今度は実力のある外国人選手と契約できるようにもなる。また国際大会で活躍する日本人選手が増えることで、彼らが海外リーグから声がかかるチャンスも広がっていくわけだ。かつてJリーグで常務理事まで務めていた大河チェアマンだからこそ、そうした重要性は十二分に理解している。

 「八村(塁)選手や渡邉(雄太)選手なども現れ、たんだんと世の中がバスケットボールも外に向くようになってきたし、アジア・チャンピオンズ・カップなどでも(さらに外を)向くと思いますから、外に対して出ていく、そうした希望の選手がたくさん出てくることが代表が強くなることでもあると思います。

 確かに八村、渡邉、さらにそれに続く選手が海外に行かないでBリーグでやってくれる方が短期的にはいいなという部分があるかもしれないです。でも結局代表が活躍してワールドカップやオリンピックに出て、そうしてBリーグが活性化するわけなので、そのためには彼らがなんであれだけ急成長できるかといえばアメリカでもまれているわけで、そういう選手が1人でも多く出ててくることが(日本のバスケ全体の利益になり)、サッカーがいい例だと思います」

 大河チェアマンのビジョンが具現化し、Bリーグが日本人選手を海外リーグに輩出するプラットフォームになれれば、日本のバスケは急成長を遂げることができるはずだ。3年目を迎えても、Bリーグがさらに魅力的に見えているのは自分だけではないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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