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京都・浜口炎HCシーズン回顧(前編)「不完全燃焼みたいな終わり方でした」

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
チームを初のチャンピオンシップに導いた浜口炎HC(筆者撮影)

 Bリーグの2017-18シーズンの全日程が終了してから2週間以上が経過した。改めてシーズンを振り返り、京都ハンナリーズの躍進は特筆すべきものがあった。昨シーズン同様に元NBLの強豪チームが順当にチャンピオンシップに進出する中、限られた資金力の元bjリーグ出身のチームながら強豪チームとも互角の戦いを演じ初のチャンピオンシップ進出を果たしたのだ。チームを率いた浜口炎HCにシーズンを振り返ってもらった。

──まずシーズン中の戦力が揃わないままチャンピオンシップ準々決勝でアルバルク東京に敗れ今シーズンを終えた心境は?

 「正直すごく残念ですし、心残りもあるし、不完全燃焼みたいな終わり方でした」

──シーズンの集大成ともいえるチャンピオンシップでシーズンと同じような戦いができなかったのはやはり歯がゆさがあったのでは?

 「そうですね。歯がゆかったですし、最後の終わり方も全員揃って終われなかったので…。負けた後も(出場停止処分の)マブンガはロッカールームに入れてもらえなかったですし、だいたい毎年(シーズン最終戦が)終わった後にロッカールームで、時折泣いている選手がいる中でハグをして『お疲れさま』と声をかけるんですけど、その場にも加わらせてもらえなかったんです。警備員が横にいて隣の部屋にいるんですけど、ルール上お客さんが会場から出るまでは選手と交流してはいけないので、結局選手みんなで終わることもできませんでした。すごく残念でしたし、心残りのシーズンになってしまいました」

──5試合の出場停止処分中だったスミス選手もチームに帯同していなかった?

 「はい、彼も帯同していませんでした。なので最後は2人いませんでした」

──やはり選手もコーチと同じような心境だったのでは?

 「選手も基本的には『たら・れば』はないですけど、全員が揃っていればもしかしたら先に進めていたかもしれないという思いもあるので、こういうチャンスは歴史のある強豪チームなら現在のNBAの2チーム(ウィリアーズとキャバリアーズ)みたいに4年連続でファイナルにいくとか有り得るかもしれないですけど、我々みたいなチームっていうのはまだまだ安定した力がないので、またいつチャンスが来るかわからないので、今年っていうのはすごくチャンスのシーズンだったのにもかかわらず、最後の最後でああいう風になってしまったので、それは選手も僕も不完全燃焼の部分はありますね」

──ただコーチとして今シーズンは素晴らしいチームをつくれたという部分では満足しているのでは?

 「そこはすごく満足しています。すごく成長しましたし、バランスのとれたいいチームだったと思います」

──今シーズンは浜口ヘッドコーチの中で何が一番“はまった”部分なのか?

 「バスケット的にはしっかりインサイドのプレーヤーがいて、ポイントガードも成長しましたし、1対1に強く何でもできるマブンガがいて、このリーグで勝つために重要な帰化選手も多い4番ポジションのところに永吉が来て安定した活躍をしてくれて、内海、岡田、片岡というベテラン陣がしっかり脇を固めてくれ、本当にいいバランスだったと思います。

 これは最後に選手にも話したんですけど、いい部分がどうしてこうなったのかを考えた時に、これで僕は京都で7シーズン目が終わるんですけど、選手たちに3つの点を指摘しました。1つは(シーズン前に)人数がたくさん入れ替わった中でもマーカス(・ダブ)、(内海)慎吾、(岡田)優介、あとトレーナーの北川くん、この4人が京都のカルチャーだったり僕の考え方であったりを選手たちに伝えてくれて、それがしっかり浸透できたというのがすごく大きかった部分ですね。

 2つめは、頓宮と板東の2人の選手にプレータイムをなかなかあげられなかったんですけど、彼らはどちらかと言うとまだ育成段階で、プレータイムが与えられなかった中で僕にとっては彼らの存在がすごく大きくて、いろんなチームをみてもあそこのプレーヤーたちが如何に我慢して、練習でもしっかりハードワークしてコーチの言うことをしっかり聞くかどうかがチームにとってすごく大きいですよね。彼ら2人は毎日本当に一生懸命やって、コーチや先輩たちのこともよく聞いて、試合に出てなくてもベンチにいる時はすごく盛り上げてくれて、チームをつくる上ですごく助かりました。

 そして最後3つめはマサ(片岡)と(綿貫)瞬なんですけど、2人は元々僕とやっていた選手なんです。いろんな事情があって外に出たんですけど、また僕とやりたいと思ってくれてまた戻ってきてくれたってことがすごく大きかったです。通常は(シーズンを迎える上で)新しく来る選手か、元々いた残留選手の2つのパターンがほとんどなんですけど、今シーズンのその2人が僕のことも分かって京都っていうチームも分かって再度やりたいって言ってきてくれて、彼ら2人の力は大きかったと思っています。前回僕とやった時は元々スターターだったんですけど、今回はベンチスタートですごく我慢しながら、そして僕の考えを分かりながらサポートしてくれました。

 タレントが揃ったという部分ももちろん大きいですけど、この3つがチームとしていい方向に向かわせたのではないかと感じています」

(次回に続く)

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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