日大アメフト部問題で本当に考えるべきこと

日大アメフト部で起こったことは氷山の一角でしかないのでは?(写真:山田真市/アフロ)

 日大アメフト部問題が全国で関心を集め、今や大きな社会問題として扱われている。普段は注目度の低い大学アメフトが、これほどまでに注目を集めることはかつてなかったことだろう。

 問題が発覚して以降、内田正人監督は公の場に現れることがなかったが、19日になって自ら関西学院大に謝罪に赴き、メディアの囲み取材の場で引責辞任を表明した。だがここまで後手に回り続けた同監督の対応のまずさ、また騒動の発端となった常軌を逸した悪質タックルが起こった背景についての説明は明確になされていないことに、批判の声は止んでいない。

 結局問題究明は日大から関西学院大に提出される回答書を待つしかないわけだが、これまで周辺取材をしてきた各メディアの報道をチェックし、昨日の囲み会見で自らの指示を否定しなかった内田監督の態度を見る限り、悪質タックルは件の選手が単独で実施したものではなく、指導陣から何らかの圧力があったことは疑いようのないところだろう。

 最終的に問題の原因が解明されることになれば、内田監督の辞任に留まらず、さらに日大側に何らかの罰則が科せられることになるかもしれない。だがそうした動きが、今回の問題を本当に解決することになるのだろうか。

 もし仮に今回の問題が発覚していなければ、内田監督は日大アメフト部を27年ぶりに大学王座に導いた指導者として高い評価を受けていたはずだし、その“熱血指導”も今も変わらず周囲から受け入れられたことだろう。今回のようなスポーツの根本を否定するような指示をしたかどうかは論外に置くが、そもそも“熱血指導”という名のパワハラと紙一重の高圧的な指導がどこまで許されていいのだろうか。

 これは日大アメフト部や大学アメフトだけにいえることではなく、アマチュア・スポーツ界全体で取り組むべき課題のはずだ。奇しくも今回問題が大騒ぎになる中、ここ最近も女子アイスホッケーでの指導者によるパワハラ問題や女子アーチェリーの指導者セクハラ問題が起こっている。これらの根本にあるのはすべて同じ構図ではないだろうか。

 これまでアマチュア・スポーツにおいても野球を中心に様々な競技の現場に足を運ばせてもらい、関係者の方々からいろいろな意見を聞かせてもらった。その中で感じることができたのが、日本ではすべての年齢層で勝つことが重要視されているということだ。いわゆる“勝利至上主義”だ。勝てる指導者の下には選手が集まり、選手たちがどう感じようとも保護者たちからは彼らの指導法は大概は受け入れられてしまう。

 内田監督のような例は数少ないとは思うが、今でもアマチュア・スポーツ界では「どこか痛いとか訴える」「練習を休んだ」「自分のいうことを聞かない」などの理由で試合に使おうとしない指導者が存在している。キャリアが長い指導者からすれば選手たちは“何百人のうちの1人”でしかないが、選手にとっては競技人生の中で掛け替えのない数年間なのだ。DeNAの筒香嘉智選手は今年1月、自身がスーパーバイザーを務め中学時代に所属していた『堺ビッグボーイズ』小学部の体験会に参加した際アマチュア野球界の現状を憂い、以下のように話してくれている。

 「未来のあるこどもたちが潰れていく姿をかなり多く見てきましたし、今も悩んでいるこどもたちが多いと思います」

 自分自身も現在近畿大学で非常勤講師として多くの学生アスリートたちと接し、彼らから高校時代に競技自体を嫌いになるくらいの過酷な指導に耐え続けた過去を聞いたりもしている。勝つためなら選手の感情など二の次という、そうした指導法が正しいとはどうしても思えない。

 今回の日大アメフト部問題は誰の目から見ても悪質だと判断できるものだったからここまで大きく騒がれることになった。だが内田監督のような指導者が大学アメフトのみならずアマチュア・スポーツ界全体に存在している事実を忘れるべきではない。今回の一件を一過性のものとして捉えるのではなく、文科省やスポーツ庁が中心になってスポーツ界全体の問題として環境整備に真剣に取り組むべきではないだろうか。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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