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古巣川崎との対戦を控えた永吉佑也と晴山ケビンが期するもの

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズン京都に移籍し飛躍を遂げた永吉佑也選手(左)と晴山ケビン選手(筆者撮影)

 すでにチャンピオンシップ進出を決めている京都ハンナリーズが、27日から強豪の川崎ブレイブサンダースとの2連戦に臨む。チームにとってチャンピオンシップでの戦いを見据えた重要な対戦となるが、その一方でこの試合に特別な思いで挑もうとしている選手がいる。昨シーズンまで川崎に所属していた永吉佑也選手と晴山ケビン選手の2人だ。

 永吉選手、晴山選手ともに、今シーズンの京都を支えた主力選手だ。永吉選手は開幕から先発PFを任され、帰化選手らとマッチアップする重要な役割を担ってきた。出場を重ねながら選手として着実に成長を続け、シーズン途中からは3点シュートを積極的に狙っていくなどプレーの幅を広げることに成功。念願だった日本代表復帰も果たしている。

 昨シーズンも川崎で全試合出場を果たしているものの、先発出場は1試合のみ。平均出場時間も昨シーズンは約15分だったが、今シーズンは約26分まで上昇している。出場時間が延びれば個人成績も必然に上昇し、平均得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックショット──のすべてのカテゴリーで昨シーズンを上回っている。

 晴山選手も今シーズン飛躍的な成長を遂げている。昨年12月から先発SFに抜擢されると、永吉選手とスイッチしながら帰化選手らとマッチアップする身体能力の高さを披露。自らの力で出場時間を勝ち取っていった。昨シーズンは32試合の出場で平均出場時間は約6分に留まっていたが、今シーズンはここまで55試合中54試合(うち先発39試合)に出場し、平均出場時間も17分に迫っている(先発出場するようになった12月以降では20分以上の出場試合も多くなっている)。成長度という点では永吉選手以上かもしれない。

 そんな2人が移籍後初めて川崎と対戦し、しかも古巣のコートに戻るのだ。その胸中に特別な思いがあるのは仕方がないところだろう。まず永吉選手の思いを聞いてみた。彼はシーズン開幕当初からこの対戦を楽しみにしていたといい、以下のように話してくれた。

 「3年間お世話になったチームなので、選手もスタッフもファンもみんな僕のことを知っている人たちなので、自分が京都に来てどれだけ成長したかというのを見せるいい機会です。自分の中では入れ込んでしまう部分もあると思うんですけど、そこも(含めて)冷静にプレーできる準備はしているつもりです。自分のいたチームであることに変わりはないですけど、あくまでBリーグの1チームとして、東の強豪として捉えていて、しっかり準備して戦うことだけだと思っています。

 川崎にいるスタッフは全員自分にとって師匠みたいなもので、大学卒業して社会人になってから社会で生きていく上でのいろんなことを教えてくれたので、そういう人たちの前で勝つことで自分の中では恩返しできると思えるし、決して自分のプレーが良かったから恩返しだとは思っていなくて、あくまでチームが勝つことです。今自分がいるハンナリーズは誰にでも自慢できる素晴らしいチームだと思っていて、今このチームにいるんだよということを何よりもファンの人たちには解ってほしいというか、(自分の)成長よりもチームのことをもっと知ってほしいという気持ちです。

 (京都移籍後は)自分の力を発揮することができているというか、自分のやりたいことを主張しているし、川崎の時はサポート役で、勝利しても自分の力どうのこうのよりは、チームとしてどう機能できたかっていうのを意識していたというか…。川崎にいた時よりも京都の方が自分の力を求められているというのがあるので、そういった面でも川崎の時より自分を出しているなというのを見てもらえればいいなと思います」

 晴山選手も1年ぶりに川崎のコートに立つことについて、以下のように話してくれた。

 「(特別な思いが)ないといったら嘘になるので、正直なところ川崎の人たち、選手、ファン、スタッフ全員に、京都での1年間これだけ成長したっていう姿を見せたいなというのが一番ですね。今の自分があるのは川崎にいた3年間のお陰だと思っているので、その人たちに僕がこれだけ成長できたんだよ、こんなことができるんだよというのをいい意味で見せられたらなと思いますね。

 川崎時代も売りにしていたリバウンドとディフェンスの部分でもっとできるんだという…。アピールっていういい方がベストですかね、リバウンドにがっつく精神、1回1回のディフェンスの圧力というか、そういうのをみせていけたらと思います。ちょっといい方は悪くなってしまうんですけど、自分を(試合に)出していればこれだけできたんだよ、というアピールですかね。それが一番フィットするのかな、そういうことですね。

 正直ブーイング(で迎えられること)の方が嬉しいかなと思います。拍手で迎えられると何か子供扱いされているような(笑)。去年は去年、今年は今年ということで、敵として脅威として思われたいという感じで、フリースローの時もブーイングの圧力を味わいたいなという…、で、決めてやるぞというくらいのシナリオを今考えてます(笑)。

 シーズン初めの頃とかを考えると、プレータイム2、3分の中で一発で自分の良さを出さなければいけないという状況で、今は有り難いことにスターティング5として使ってもらえるということは炎さん(浜口HC)の信頼というのがあると思うので、相手が川崎であろうとそこはぶれずに炎さんが思っていることをすぐできるプレーヤーが一番だと思うので、そこができれば自然といいプレーが生まれてくると思っているので、そこはぶれずに頑張っていきたいですね。

 自分=チーム、チーム=自分だと思っているので、自分が活躍して負けるよりも自分が調子悪くても京都はこれだけ強いんだぞというのをアピールできるのはすごく嬉しいし、すごいチームの一員なんだぞというのもすごく嬉しいことなので、チームの勝利のためだったら何だってやるという気持ちでやっているので、そこをぶれずにやれればなと思います」

 2人にとって川崎の3年間は選手としての基礎を築いた時期であることは間違いない。だが川崎で彼らの才能をしっかり発揮できていれば、現在京都に在籍していることはなかっただろう。だが両選手が川崎時代に過ごした時間はまったく同じだったはずはなく、感じた方もそれぞれ違っていて当然だと思う。それでもかつての仲間やファンの人たちに、チャンピオンシップ進出を果たした強豪チームの主力として躍動する姿を見てほしいという気持ちは完全にシンクロしている。

 川崎のコートでそんな彼らの思いをどのように表現していくのか、両選手のプレーに注目してみたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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