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3点シュートを芸術の域まで高めた岡田優介が追求し続ける“美学”

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
オールスター戦でも3ポイント王者に輝いている岡田優介選手(筆者撮影)

 オールスター戦で3ポイント王者に輝き、すでにBリーグでも屈指のシューターとして知られる岡田優介選手が18日の大阪エヴェッサ戦で、圧巻の活躍を披露した。

 前半を無得点(5本のシュートを放ちすべてミス)で折り返しながら、後半だけで9本中7本の3点シュートを決めるなどチーム最多の23得点を挙げ、チームの勝利に貢献したのだ。「当たり出したら止まらない」と言われる、まさに岡田選手らしい爆発力だった。

 「前半はちょっとシュートが入らなかったんですけど打ててはいたので、(後半も)変わらずフリーになったら打とうという気持ちでいきました。後半1本目が気持ちよく入ったので…。やっぱりチームがピンチの時には自分が仕事をしなければいけないという思いがあるのでそれを狙って、みんながボールを回してくれたので非常に打ちやすく入ることができました」

 特に圧巻だったのが第4Qだった。残り2分28秒に74-74とこの日初めて同点に追いつかれ、チームにとって最大のピンチを迎えていた。しかしここからわずか66秒間で3本の3点シュートをリングに沈めることに成功。残り1分22秒で83-78と再び5点差に突き放し、大阪の追い上げムードを完全に断ち切ってしまった。

 この日京都ハンナリーズは伊藤達哉選手、綿貫瞬選手の2人のPGに加え、チームの得点王でありPG役も務めるジュリアン・マブンガ選手が負傷欠場するという危機的状況で試合に臨んでいた。劣勢に立った大阪は前半途中からその弱みに付け入り、オールコート・ディフェンスでボール運びにプレッシャーを与え続けた。そうした中で徐々に試合の流れが変わっていき、第4Qに同点に追いつかれてしまったのだ。

 それを岡田選手の3連続3点シュートが京都を一気に活性化させ、チームに勝利をもたらしたのだ。今回のプレーを間近で観て、改めて彼の3点シュートは芸術の域に達しており、まさに“3ポイント・アーティスト”という称号に相応しい選手だという思いを強くさせられた。そんな岡田選手には芸術家気質らしい3点シュートへの“美学”が存在するようだ。

 「僕はわりと後半でエンジンがかかるタイプなんで(笑)…。結局40分終わった時に勝ってないと意味がないと思っているので、やっぱり同じ3点だとは思わないですね。ゲームの流れを変える3点だとか、6点だとか、それを常に頭に入れています。ゲームの中の展開で相手に如何によりダメージを与えるというか、ゲームにインパクトを与えるというところを意識してやっているので、やっぱり大事な場面ていうのを見極めてそこは迷わず打つというのが僕のスタイルですね。

 最初の30分とか25分は前段階というか、相手がどういう付き方をしているのだとか、それを見る布石だったりするので、それで最後の5分の間にどういうシュートが打てるかなとか、どれが確率よく打てるかなとか考えながらやっています。まあ上手くはまってくれるゲームもあれば、そうでないゲームもあると思うんですけど…」

 つまり岡田選手は単純に3点シュートを狙い続けるのではなく、試合の流れを読みながら相手が嫌がる局面で強烈な3点シュートを決めきることに強いこだわりを持っているのだ。だからと言って3点シュートだけに固執しているわけではない。本人の言葉通り、究極の目標はただ1つ、チームの勝利なのだ。

 「結果的にシュートが入る、入らないはあると思いますけど、みんなの集中力、ディフェンスだったり、リバウンドに対する意識が高かったから今日は勝てたなと思うので、シュート入った、入らないはあまり関係ないと思います。

 (この日の勝利は)チームとして成長できたかなと思います。こういう(危機的)シチュエーションは必ずありますし、ゲームの中でもファウル・トラブルとかで(選手が足りなくなることが)あると思うんですけど、こういったゲームができたということはチームとしての経験値になったと思うので良かったと思います」

 昨シーズンから京都に在籍する岡田選手。ここまで休まず全試合で先発出場を続ける33歳のベテランは、この日の試合でBリーグ通算1000得点を達成した。SGとはしては決して大きくない185センチという身長ながら、こだわりを持って3点シュートを打ち続けた勲章ともいえるだろう。それでも本人の意識はそこにはないようだ。

 「そうだったんですね、全然知らなかったです(笑)。あんまり気にはならないかというか、チームによって求められるものが違うと思いますし、あくまで積み上げられたものというか、たまたま得点をとれるようなポジションにいたとかいう状況もあると思うので…。まあ節目という意味では気持ちがいいというか(笑)、これが2000、3000と積み上げられるように頑張っていきたいなと…。それはチームメイトのお陰なのであまり個人記録とかを気にせず、さっきも言いましたけど、如何にゲームでインパクトを与える得点をとるだとかというのを考えていきたいと思います」

 これからも京都が接戦になった時にこそ、試合終盤で岡田選手がどんな強烈な3点シュートを放つのか、目が離せそうにない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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