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10年ぶりに巨人復帰が決まった上原浩治に期待したい先発登板

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
10年ぶりに巨人復帰が決まった上原浩治投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 巨人が9日、上原浩治投手の入団を正式発表した。背番号は「11」になるようだ。これまでプロ野球人生でずっと使用していた「19」は現在のエース、菅野智之投手が使用しているので仕方ないのだろうが、個人的には菅野投手に「18」を手渡し、上原投手に今まで通りの「19」をつけてもらうというのもありだと思っていたのだが…。

 いずれにせよ10年ぶりにNPB復帰を決めた上原投手の決断に、心の中でガッツポーズをとっている自分がいる。もちろん日本に戻ることは彼自身が目指していたものではなかったと思う。それでも現役を続けることを重要視してくれたことに最大限の賛辞を送りたい気持ちでいっぱいだ。

 このオフ上原投手はSNSを通じてその心中を吐露しているが、所属先が決まらないまま自主トレを続けていたのは本当に辛かっただろう。自分の中ではイチロー選手同様に必ずMLBからオファーがもらえる選手だと感じていただけに、多少の寂しさも禁じ得ない。しかし引き続き上原投手がマウンドに立つ姿を見られる喜びの方が数段も上回っている。

 昨年11月に本欄で『“もう1年やりたい”と公言する上原浩治をもう1年見たい!』という記事を公開している。名球会には届かなくても、もう日本球界から二度と現れることはないだろう存在として、彼しかできないと確信しているNPB、MLB在籍10年と、日米通算トリプル100(100勝、100セーブ、100ホールド)の達成を待ち侘びる思いからだった。

 残念ながら今年はMLB在籍10年は達成できないが(米メディアの中には今回の上原投手のNPB復帰を「MLBのキャリアが終わった」と報じているものもが、自分は今でもMLB復帰の可能性を捨て切れていない)、あと10に迫っている100ホールド達成(100勝、100セーブはすでに達成済み)は十二分に期待できるところだ。

 だが個人的には今回のNPB復帰で、別の新たな楽しみが増えてしまった。それは上原投手の先発登板だ。もうオリオールズ時代の2009年を最後に先発登板していないのだが、それ以降も彼は何度となく「また先発してみたい」という言葉を公の場で口にしてきた。自分自身も何度となくその思いを聞かせてもらっている。その一方で先発ローテーションに入り中4日で投げ続けるのは「もう無理でしょう」とも話していた。

 しかしNPBであれば中6日の登板が可能になってくるし、もうすぐ43歳を迎える上原投手でも体力を回復する時間は十分に与えられるのではないか。むしろリリーフ投手として常に待機している状況より調整もしやすくなってくるだろう。日本でなら、そんな諦めかけていた上原投手の夢を叶えることができるのだ。奇しくも今シーズンは中日で松坂大輔投手が復活しようとしている。同じセ・リーグに身を置く今シーズンは、そんな2人のドラフト同期対決も可能になるだろう。自分のみならず誰もが心震えるはずだ。

 リリーフに回れば通算100ホールド達成に期待がかかるし、先発に戻ったとしてもワクワクが止まらない。いずれにせよ上原投手がMLBに拘らずマウンドに上がり続けることで、引き続き人々に夢を与えてくれることだけは間違いない。

 イチロー選手とは別の意味で、上原投手に「お帰りなさい」という言葉を贈りたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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