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Bリーグ京都の“元気印”片岡大晴が背番号「91」に秘めた思い

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
コートに立つ度にチームをスパークさせる京都の片岡大晴選手(筆者撮影)

 2017-18シーズンの後半戦に突入したBリーグ。すでに公式戦も過半数を消化し、いよいよチャンピオンシップ争いが熾烈を極めようとしている。

 ここまでシーズン開幕から健闘を続けているのが西地区2位の京都ハンナリーズだろう。昨シーズンは25勝35敗で同地区5位に終わっていたが、今シーズンは開幕から勝率5割をキープし続け、現在も18勝14敗でチャンピオンシップ進出圏内に入っている。先週末の第17節では強豪サンロッカーズ渋谷を迎え連勝を飾るなど、改めてチーム力の高さを証明している。

 チームの個人成績をみれば、各主要部門は外国人選手を中心に先発選手が独占している状況だが、その中で唯一無二の存在になっているのが片岡大晴選手だ。ここまで主に控え選手として全32試合(うち3試合先発)に出場し、コート上で常にハッスルプレーを披露し、チームにガッツとエネルギーをもたらす存在だ。今シーズンの京都のスローガンは「ダシツクセ」なのだが、まさにスローガンを体現している選手だ。

 片岡選手は現在のチーム状況をどう捉えているのだろうか。

 「(チームがよくなっているという)感覚は最初よりは僕も実感しています。もちろんいい選手がいて、でも最初は自分たちがどういうことをすればいいのか、自分の個、特長を出したいとかという個々の思いが先走ってしまい、当たれば上手くいくけど、そうじゃない時は完全に崩壊してしまうような雰囲気だったんですけど、炎さん(浜口HC)や久山コーチが根気強く『僕たちがやりたいのはこういうことで、こういうルールがあって、それを徹底していこう』というのをずっと言い続けてきてくれ、やっとここまで来られたかなというのがあります。

 そうやってチームをつくっていく(浜口HCの指導法)のが昔から素晴らしいなと思っていて、それがかたちになってきているのを感じています。みんなでお互いの長所を生かしながらゲームをコントロールしていくというのが炎さんらしいバスケットだと思うので、それができる試合が増えてきているかなとすごく思います」

 片岡選手が指摘するように、試合を重ねながらチームとして熟成し続け、ここに来て個々の役割が明確になってきているようだ。もちろん片岡選手も自分の果たすべき役割をしっかり把握している。

 「ベンチから出て(試合の)流れを変える役割を任せられていると思っています。そこに対してどういうアプローチをしていくだとか、ベンチにいる時にどういう視点でゲームを見るかだとかを考えながら取り組めています。

 本来はみんなスタメンで出たいんですよ、選手だったら。その方がメインで使われているんだという気持ちにもなれるかもしれないんですけど、僕もその思いはありますし、そこは競争なんですけど、ただチームのバランスを考えれば自分にしかできない役割があると思いますし、いろいろな見方で自分の状況をプラスに捉えられるように考えながらやっています。最近は炎さんも『アグレッシブにやりなさい』と言ってくれてますし、チームメイトも信頼してボールをくれプレーをつくってくれます。あとはディフェンスというもので信頼されるように頑張るだけだと思っています」

 32歳の片岡選手は184センチ、80キロと、バスケ選手として決して恵まれた体格ではない。試合では巨漢選手たちとマッチアップしコートに吹き飛ばされることも度々あるが、それでも恐れることなくコート上ではすべてを出し切る全力プレーに徹する。昨年末は左手にサポーターを着けてプレーしている場面もあったが、実は左手の甲を骨折していたのだという。一時は修復手術を受ける方向に傾いたが、浜口HCから「ベンチにいてくれるだけでいい」との説得を受けプレー続行を決断し、コート上では負傷を感じさせないプレーを披露し続けた。

 片岡選手の強みは何と言っても試合の流れを変えることができるスピードとガッツ溢れるプレーだ。だがスピードに乗ったファーストブレイクで一気にシュートまで狙う積極性を見せる一方で、最近ではPG役を務め試合をコントロールしながらオープンスペースから3点シュートを狙う冷静さも見せている。本人も認めているのだが、今も選手として成長を続けているのだ。

 「元々駆け出しの頃は3ポイントばかり打つシューターだったんです。でもいろんな経験していく中でアタックできるようになって、次はそればかりになってしまってそのバランスがうまくとれなくて…。ディフェンスも激しくなってきて、なかなか3ポイントだけではリズムがとれなくなってきて、でも決めたいと思って焦っちゃったりとか、いろいろな思いをしてきてそれでも何とか突破口を見出したいなと思って、練習だったり心の持ち方だったりを追い求めているので、そこが最近はいいバランスでできています。すべて(の試合)はその時の力しか出せないので、理想を考えてもしようがないし、チャンスがきたら思いっきりやるだけだし、ていうのをやっと自分の中に落とし込めるようになってきたかなという実感はあります」

 ところで片岡選手は大学時代からずっと背番号「91」を使用し続けている。91番といえば、大抵の人がブルズ時代に使用していたデニス・ロッドマン選手を思い浮かべるだろう。ロッドマン選手はNBA屈指の“悪童”として知られているが、片岡選手はその真逆でチーム一の“ナイスガイ”だ。試合後の記者会見に呼ばれた際は、退出時にメディアの1人1人と握手をしてお礼していくほどの紳士だ。

 「そんなに深い意味は…(笑)。ただただあの番号が格好良かっただけです。デニス・ロッドマンみたいになりたいと思ったわけではないです。大学でその番号をつけてからずっとつけてます。ずっと小さい頃から4から18の世界でやってきたので、その他の番号を選びたかったんです。そう考えたら91番て格好良いなと思って、そこからです。もちろんデニス・ロッドマンのようなハッスルという部分では理想としているんですけど、パーソナリティという面では全然ないです」

 確かにロッドマン選手は悪童だった一方で、コート上では類い稀な運動量とハッスルで相手チームから嫌がられる存在だった。そういったプレースタイルではまさに片岡選手とオーバーラップしているように思う。

 残りシーズンも片岡選手は京都に必要不可欠な存在だ。個人成績には表れることは少ないが、コート上を縦横無尽に走り回る片岡選手の躍動感溢れるプレーに注目して欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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