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元NBA戦士アレックス・カークが語るBリーグで成功するために必要な外国人ビッグマンの素養とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
リーグ在籍1年目から大活躍を続けるA東京のアレックス・カーク選手(筆者撮影)

 強豪チームが集中し、シーズン開幕から激戦続きの東地区で首位を走り続けるアルバルク東京。竹内譲次選手、田中大貴選手、馬場雄大選手の“日本代表トリオ”など豪華メンバーが揃う中、今シーズンからチームに加わったアレックス・カーク選手の存在も見逃すことができない。

 ここまで平均得点は15.8点でリーグ9位にランク。リバウンドも平均8.2でチーム1位に輝くなど、大型センターとして期待通りの活躍を続けている。

 2014年にニューメキシコ大を卒業後、ドラフト指名を受けなかったがサマーリーグを経てキャバリアーズ入り。NBAの公式戦にも5試合出場している。翌シーズンから活躍の舞台を海外リーグに変え、イタリアを皮切りに中国、トルコの各リーグを転戦し、今シーズンからBリーグに参戦している。

 「すべてのポジションにおいて我々にとってベストな選手をリクルートする努力をしている。まず選手がオフェンス、ディフェンス両面で活躍できるベスト・アスリートであること。コートビジョンが良く、攻守ともにエネルギッシュに動けなけらばならない。アレックスは本当にたくさんのことをすることができる。我々は他の選手同様に彼のプレーメイキング能力に期待しているし、我々のプレーを支えてくれている」

 ルカ・パヴィチェヴィッチHCもカーク選手に絶大な信頼を寄せている。同HCが指摘しているように、211センチというサイズを生かしたペイント部分での働きはさることながら、コート上を縦横無尽に走りチームプレーのためにどんどんスクリーンを仕掛けるなど、他の選手を生かすため、成績には表れない献身的なプレーにおいても全力を惜しまない。ビッグマンとしてはリーグ内でも屈指の運動量を誇っている選手といえる。

 Bリーグ初参戦ながら、カーク選手はなぜシーズン開幕からほぼ完璧にチームにフィットできているのだろうか。直接本人に尋ねてみた。

 「たぶんチームシステムなんだと思う。コーチは明らかにヨーロッパ・スタイルで、過去に同様のシステムを経験していたから、馴染みがあったのは確かだね。間違いなくシステム自体が自分に合っていたし、また周りの日本人選手たちも素晴らしい選手ばかりだったので、フィットするのが簡単だった。最初からチームとして最高のバスケができていたし、本当に楽しんでやっているよ。

 昨シーズンも中国リーグやトルコリーグでプレーして本当に楽しかった。すべてが満足できるものではなかったけど、これまでしてきた経験がしっかり自分の選手生活に恵みをもたらしてくれていると信じている」

 様々なリーグで経験を積んできたカーク選手だが、それではBリーグについてどんな印象を持っているのだろうか。

 「確かに他のリーグとは違ったスタイルのバスケットだと思う。個人的にもこれが自分にとって最高のスタイルだとは言い切れないかな。時にはプレーしながら退屈に感じることもあるし(笑)。ポストに入ってもボールが回ってこないこともあるからね。いろいろな面で違いがあると思う。でも自分はこのリーグが気に入っているし、今後もプレーを続けたいし、できれば来シーズンも残りたいと思っている。リーグ自体も成長しているし、ヨーロッパスタイルのバスケに向かっているように感じてるよ」

 海外リーグと違い、どうしても選手のサイズが小さくなってしまうBリーグ。必然的に補強する外国人選手はサイズの大きいビッグマンに偏る傾向にある。現在も様々なタイプのビッグマンたちがBリーグに在籍しているが、カーク選手から見て外国人ビッグマンがBリーグで成功するには何が必要なのだろうか。

 「もちろんチームのシステム次第だ。そのチームが求めているシステムに合うかどうかだと思う。Bリーグでもシステムは様々だからね。時には千葉のようにピック&ロールをマークしなければならない時もあれば、今日(京都ハンナリーズ戦)のようにポストでジョッシュ・スミスをガードしなければならない時もある。そうした両方に対応できる素養が必要だと思う。またヨーロッパ・スタイルだと、どんどんスクリーンを仕掛けてボールを回してミス・マッチアップをつくっていかないといけない」

 カーク選手の説明を総合すると、今後Bリーグで活躍していくビッグマンはサイズが大きいだけではなく、オフェンス、ディフェンス両面でしっかりチームプレーを全うできる運動能力とスタミナを備えた選手であることが求められるということだろう。まさにカーク選手はその理想像ともいえる選手なわけだ。

 「自分もしっかり走り回れることを目標にしているし、世界の中でも優秀なビッグマンになりたいと思っている。もちろん決して簡単なことではない。ただNBAもプレースタイルが変化してきて、ビッグマンが更なる運動量を求められるようになってきている。とにかく今は目標に向かってしっかり取り組んでいるし、幸運にも優秀な選手に囲まれながら自分の能力を発揮する機会を得ている」

 カーク選手が説明するように、Bリーグのみならず運動量が豊富なビッグマンはNBAを含め世界中のリーグで重宝される存在だ。このまま彼が活躍を続けチームも快進撃を続けていけば、上部リーグから誘いが来てもおかしくない存在だ。だがカーク選手が優れたビッグマンだからこそ、願わくば本人も希望している通り少しでも長くBリーグのコートに立ってほしいものだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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