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入団会見でエンゼルスが見せた二刀流と向き合う真摯な姿勢

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大谷選手の起用法で栗山監督のような親心を見せたマイク・ソーシア監督(写真:ロイター/アフロ)

 2017年12月9日、遂に大谷翔平選手が長年夢に見続けたMLBのユニフォームに袖を通した。5年前に思い描いていたチームのユニフォームとは違っていたかもしれないが、今はエンゼルスの赤いユニフォームを身につけることに心から満足しているように満面の笑顔をみせつけた。

 入団会見場となったエンゼル・スタジアムには多くのファンが詰めかけ大谷選手の一挙手一投足に大歓声を送り続ける中、誰もが注目していたのがエンゼルスが思い描く大谷選手の起用法だった。その点について米国メディアから質問が及ぶと、マイク・ソーシア監督は以下のように答えた。

 「これからショーヘイから情報を入手していくことになるが、彼を間違いなく二刀流で起用していく。その点については何の迷いもない」

 皆が待ち望んでいた答えに、やはりファンから一際大きな大歓声が巻き起こる。この瞬間、1918、19年の2年間、ベーブ・ルース選手が挑戦して以来、約100年ぶりにMLBの舞台で本格的な二刀流に挑む選手が誕生したのだ。

 会見ではこれ以上具体的な起用法について聞くことができなかったが、会見終了後の囲み会見でビリー・エプラーGMは、大谷選手を外野手で起用する考えがないこと、更にはMLBでまだ定着していない先発6人ローテーションに前向きな考えであることを明らかにしている。二刀流としての大谷選手を迎え入れる上で、MLBの常識をも打ち破る覚悟を示したのだ。

 それだけではない。ソーシア監督も会見場で二刀流を受け入れる情熱、覚悟を口にしている。

 「投、打ともにMLBのレベルにあると思う。ただ成長は止まることはない。我々は彼がマウンドで投げ、バッターボックスでバットを振る姿を見られることに興奮を憶えるが、その一方で我々みんなで多くのことに取り組んでいかねばならないし、彼がどこまで素晴らしい選手であるのかを見極めながら、ユニークな才能を伸ばし続けなければならない。

 まだ彼は23歳で、身体面、メンタル面、野球における技術面など、あらゆる面で多くの伸びしろを有している。ショーヘイはマウンドに立つし、バッターボックスにも立ち続ける。とにかく一歩一歩着実に前へ進んでいきたい。そして投手としても、打者としても最高の選手になれるように確認していきたい」

 ソーシア監督の言葉は、まるで大谷選手を迎え入れてから彼が二刀流でやれることを信じ続け、その起用について試行錯誤を続けてきた日本ハムの栗山英樹監督のようだった。高校卒業後にMLB挑戦を決めていた大谷選手と話し合い、日本ハム入団に翻意させたのが栗山監督の熱い言葉だった。まさにエンゼルス首脳陣が大谷選手に示した熱意が、彼に日本ハムと同じような“縁”を抱かせたのだろう。

 「僕自身は(二刀流を)ファンの方々と球団の方々と一緒につくっていくものだと思っているので…。まだ完成した選手ではないですし、そういう意味では皆さんの応援で僕を成長させて欲しいというか、僕もそれに応えて頑張っていきたいなと思います」

 大谷選手が望む通り、日本ハムのバトンを引き継ぐかのようにエンゼルスでも球団、ファンの全面サポートを得ながら二刀流に挑戦できる環境が整った。あとはMLBの舞台でもファンから“一番の選手”だといわれるように研鑽していくだけだ。

 『大谷翔平・二刀流物語~MLB編~』が幕を切って落とされた。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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