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大河チェアマンが標榜する本格アリーナの登場でBリーグの未来は激変する

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
20日の滋賀対新潟戦で挨拶に立つBリーグの大河正明チェアマン(本人撮影)

 Bリーグの大河正明チェアマンが、20日に行われた滋賀レイクスターズ対新潟アルビレックス戦を視察に訪れた。ハーフタイムでファンに挨拶を行った後地元メディアに対応したチェアマンは、2年目のシーズンを迎えたBリーグの現状や将来像について語ってくれた。

 以下項目別に大河チェアマンの発言を紹介していきたい。

●観客動員状況

 シーズン1年目で1部(B1)の方は50%ぐらいお客さんが増えました。普通放っておくとお客さんは10~15%ぐらい減っていくものなんですけど、あえて2年目は1部、2部(B2)合わせて10%増やすことを目標に立てています。今は5%ぐらいの伸びなので目標には届いていないんですが、ただ悪くはないスタートかなと思っています。

●シーズン2年目の課題

 課題というか(リーグを)つくった以上、今週から始まる日本代表の戦いを注目していきたいし、簡単に勝てるというのではないかもしれないですけど、代表が強くなったなと思われることが1つの課題です。

 もう1つはBリーグがこれからもっと大きくなっていくためにはアリーナ問題ですね。やはり日本に本当の意味でのアリーナというのがほとんどない状況だと思います。それが中長期的には一番大きな課題だと思っています。

●各チームのアリーナ建設の進捗状況

 今一番の俎上に載っているのは沖縄ですね。2023年のワールドカップの日本、フィリピン、インドネシアですか…、その共同開催に向けて今立候補中ですけど、沖縄市に1万人規模のしっかりしたアリーナを建てようというのが割と現実味の高い計画になっています。

 あとは栃木であるとか茨城とかが国体絡みですけど、5000から8000ぐらいの、今までの体育館よりはアリーナっぽいものを建てようと…。本格的なアリーナということになると沖縄になると思います。

●チーム格差の是正(レベル面)

 サラリーキャップやドラフトを導入しているNBAでも、2割台ぐらいしか勝率があげられないチームが出てきてしまいます。そういう意味でいうと、勝率が5割ぐらいで並ぶというのはこういうスポーツではたぶん無いと思います。

 そんな中でレイクスターズを見ればわかるように、昨年は10連敗くらいして今頃はとても苦しんでいたと思いますけれども、ヘッドコーチが代わったり、少し外国籍選手も代わりましたけど、しっかりとした試合運びをしていますよね。(リーグ全体の)底上げは図られている気がしますし、選手も(バランスよく)動いたのかなと思います。

●チーム格差の是正(収益面)

 まずはトップ(のレベル)が上がっていかないと、全体的な底上げがされないと思っています。結局Bリーグの価値は、裾野からトップの高さまでの三角形の面積そのものなので、こうやってクラブがどんどん増えてきたことによって、裾野は大きくなってきましたけど、まずトップのクラブから(収益で)10億を超えるようなチームがいくつか出てくることが大切なんだと思います。その過程の中で他のチームもアップしていく可能性があると思います。

 例えば京都、滋賀、大阪、西宮でも、(人気チームの)栃木とかが来ればお客さんが入るわけです。そういうようなクラブがまずBリーグ全体を引っ張っていくという意味では、そこ(チーム格差)はおかしなことではなくて、それがありつつ基盤を拡大して底上げをしていけばいいのかなと思っています。

 なによりもトップ5といわれるチームの1つが栃木ですよね。何も栃木には大企業がついているわけではないですし、関東北部の地方都市でありながら、あれだけのチームをつくってきたということで、これは(他でも)出来ないことはないなと思っています。

●Bリーグの認知度

 明確な数字があるわけではないですが、認知度が上がってきたなという手応えは持っています。(昨年の)開幕戦、チャンピオンシップ・ファイナルも地上波でTV放送があったりと、またスポーツニュースであるだとか、番組のスポーツコーナーの中で話題が出てくるというのが増えてきたのかなと思います。

●レフリーの底上げ

 簡単にいうと、選手のレベルと審判のレベルは、その国の競技のレベルとほぼイコールだと言われてますが、僕もその通りだと思います。要はリーグの価値、レベルが上がってくることで、審判も内部でいろんな審判のビデオ判定システムを利用して、各審判に(情報を)還元しながら勉強してもらっています。これから徐々に審判を増やしていきますし、増えていかなきゃいけないと思っています。

 更に言うと、選手と審判と指導者(コーチ)ですよね。選手だけがどんどん上達するということはないと思いますので、審判、指導者と3点セットでいい方向にいくことが好ましい健全な発展だと思います。

●変則的な試合日程

 たまに水曜日にも試合をやりますが、週末だけに試合をするというやり方をしているのは確かに日本くらいです。これはひとえにアリーナ事情です。例えば(試合会場を)設営するのに、各チームは相当な労力とお金をかけています。毎回上からビジョンを釣るし、仮設スタンドを組み立ててやってますね。これが本当のアリーナで最初から(設備が)ついていれば、圧倒的にコストと労力が減りますよね。そのことによって1日おきだとか、週に3日だとかNBAのようなスタイルにしていきたいと僕らも思っています。それが一番許してくれないのがアリーナ事情なんです。

 設営の問題であったりアリーナ(という公立体育館)がなかなか押さえられないという事情が変わってこないと、日本のスポーツ文化というか、バレーや卓球も僕は(状況が)一緒だと思います。本当に日本にスポーツが定着してこない。そのためにも日本のスポーツ界自体がもっともっと変わってやっていかないといけないなと凄く思っています。それによって収入が増えれば、プロの審判やいいコーチを雇用できるのではないかなと思います。

 大河チェアマンの指摘通り、本格的なアリーナが誕生することで、あらゆる面でのBリーグの課題が一気に好転に向かうことになる。残念ながらアリーナ建設は地方行政や地元企業の協力なくして実現することは不可能だ。いつしかNBAのように各都市がアリーナを建設し、チーム誘致に積極的に取り組むような日が訪れるのを期待したいところだ。

 それを実現させるためにも、Bリーグの中長期的な成功は必要不可欠だろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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