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なぜFA権の行使を選手が決めなければならないのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
FA権行使をせずに日本ハム残留を決めた中田翔選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 14日にFAの申請期間が終了した。各チームでFA権を取得した選手の動向が注目されていたが、各選手の記者会見を見る限り、それぞれが思い悩んだ末に結論を下した様子が窺い知れた。今後の野球人生を左右する決断だけに仕方がないことだろう。

 1993年にNPBでもFA制度が導入されてから24年が経過した。2度の改正を経て現在も運用されている制度とはいえ、どうしてもFA制度本来の目的を果たしているように思えない。元々FA制度は労使交渉の末、選手側が勝ち取った大事な権利だ。本来なら選手に利益をもたらすべきものだが、NPBでは選手たちの利益に直結しているのか疑問が残る。

 MLBとNPBのFA制度を比較して最も違和感を感じるのが、FA権が自動行使されるMLBに対し、NPBはFA権の行使を選手が決めなければならないことだ。選手の自由意志でFA権行使を決められるNPBの方が選手の利益になっているように見えるかもしれないが、むしろ逆だろう。選手たちがFA権行使を決めなければならないことで、FA権使用を制限していないだろうか。

 例えばNPBではFA宣言した選手の残留を認めない球団が存在する。いわゆる“宣言残留”というものだ。そもそもFAは選手たちがすべてのチームと交渉する権利を得るためのものだ。つまり宣言残留を認めないということは、FA宣言後は再交渉に応じないということになる。その一方でFA宣言しなければチーム残留を認めるというのだから、球団がFA権を巧みに利用し、球団優位に選手と契約更改しようとと勘ぐられてもおかしくない。

 しかも宣言残留を認めていない球団からFA宣言した選手は、自動的に他球団への移籍を意味する。そうなると過去の例からも明らかなように、選手たちはファンから裏切り者扱いされたり、批難や中傷を浴びることもなりかねない。またFA権取得がMLBよりも長期間を要するため、FA権を取得できる選手は20代後半から30代がほとんどで、選手としてピークに達しているか、時にはピークを過ぎた場合もある。どうしてもFA権行使に慎重にならざるを得ない。

 つまりFA権行使の決断を選手に委ねることは、そうした様々なプレッシャーを選手に与えていることになる。その結果FA権を利用する選手も自然と制限されてしまっているのが現状ではないだろうか。

 繰り返すがFA制度はプロスポーツという特異な業務形態(ドラフト制度でチーム選択の自由が奪われる等)で、選手たちが労使交渉の末勝ち取った大切な権利だ。本来なら取得した選手が平等に使えるものであるべきだ。ならば行使権を選手に委ねるのではなく、MLBのように自動行使にすべきだろう。そこは選手会がしっかりNPBと交渉を行っていかねばならないし、その中で現行の国内FA権と海外FA権の棲み分けについても検討していくべきだろう。

 MLBを見れば推察できるように、FA権が自由行使されれば年俸の高騰化に繋がる可能性は十分にあるだろう。だが年俸の高騰化があったからこそ、MLBや各球団はそれに対処するため企業努力を重ね、現在のような巨大なマーケティング力を身につけていったのだ。ある意味MLBの発展に寄与したといっていい。決してチームやリーグにとってマイナス面ばかりではないはずだ。

 取りも直さずNPBでもFA権の本来の意義を再考すべき時に来ていないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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