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ウォリアーズがホワイトハウスへの訪問辞退を正式発表

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨シーズンNBA王者に輝いたウォリアーズの選手たち(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨シーズンNBA王者、ウォリアーズが現地23日、公式声明を発表した。声明の内容は以下の通りだ。

 「我々は今朝チームとしてミーティングを開き、ホワイトハウス訪問について話し合いを行った。その結果我々は、自分たちを招待しないと公にしていたトランプ大統領の申し入れを受け入れることになった。我々は自分たちにとって大切な問題に対し、自由にその意見を発言する権利を持つ市民こそがアメリカ国民だと信じている。我々はこの過程(大統領の判断)で自分たちの意見を述べる機会を与えられず、自分たちのコミュニティに影響をもたらすような問題について公の場で意見交換できないことを遺憾に思う。

 我々は2月に首都に遠征する予定だが、ホワイトハウスを訪問する代わりに、平等、人種の多様性、包括──など、我々が組織として信じるところの価値を称えることを決意をした」

 その内容が示す通り、ウォリアーズが全員一致でホワイトハウスへの訪問を辞退することを決めたのだ。米国では、4大スポーツ(NBA、MLB、NFL、NHL)を始めてとして主要スポーツイベントで優勝したチームが大統領の招待を受け、ホワイトハウスを訪問するのが慣例となっていた。

 かつて2013年の優勝メンバーとしてレッドソックス(当時)の上原浩治投手と田澤純一投手もホワイトハウスを訪れことで、日本でも話題になっていたのを憶えているだろう。今回はその慣例を覆し、ウォリアーズがトランプ大統領に“三行半”をつきつけたのだ。

 きっかけは声明にもあるように、トランプ大統領のツイートだった。

 新シーズンに向けたトレーニングキャンプ初日に行われたメディアデーの場で、ウォリアーズの主力選手、ステファン・カリー選手が報道陣の質問に答え、ホワイトハウス訪問を辞退する考えを明らかにしていたのだが、この発言を受けトランプ大統領が「優勝チームがホワイトハウスを訪問するのは名誉なことだと考えられてきたが、ステフェン・カリーは拒んでいるようだ。ならば招待自体を取り止める」とツイートしたことで、ウォリアーズも即座に反応し今回の声明に至ったというわけだ。

 カリー選手のみならず、同じく主力選手のケビン・デュラント選手も、今年8月にバージニア州で起こった白人至上主義衝突に対するトランプ大統領の対応を批判し、ホワイトハウス訪問を辞退する旨を明らかにするなど、ウォリアーズのみならずNBAを含めたスポーツ界の主要アスリート達が次々にトランプ政権を批判する発言が繰り返されていた。

 今回のウォリアーズの声明を受け、NBAのアダム・シルバー=コミッショナーも声明を発表し、「チームがホワイトハウスを訪問することには賛成で、選手たちが大統領と意見交換するのは貴重な場だと思っている。それが実現しないのは残念に思う。だがその一方で、重要な問題について発言を続け、コミュニティにとって重要な役割を担おうとしている選手たちを誇りに思っている」とウォリアーズの決断に賛同する姿勢を示している。

 最近ではトランプ政権への批判を表明する意味で国旗掲揚の際に直立せずにひざまずくNFL選手が登場したことをトランプ大統領が猛批難したことで、大統領とNFLの間でも批判合戦が繰り広げられている状況だ。

 残念ながらスポーツ界とトランプ大統領の間に深く大きな溝ができようとしている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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