メッツが青木宣親を獲得した理由
日本時間の2日に複数メディアが報じていた通り、メッツが米国時間の2日、FA選手になっていた青木宣親選手の獲得を発表した。しかもチーム合流と同時に、同日のアストロズ戦とのダブルヘッダーの第2戦で「1番・右翼」で先発起用している。
ブルージェイズを解雇され、わずか4日後の復活劇となったが、ロースター枠が拡大されたこの時期になぜメッツが青木選手獲得に動いたのか、その舞台裏を考えてみたい。
今回の契約合意は、メッツ、青木選手ともに両者の思惑が見事に合致したものだった。まさに双方にとってメリットだけをもたらすものだった。
まず青木選手だが、FA選手として新しい所属先を見つける上で最も重要なのが出場機会だった。来シーズンの契約を考えると、残りシーズンでしっかり成績を残しアピールしていくことが理想的だった。もし仮にプレーオフ進出を争うようなチームと契約できたとしても、完全に控え選手の扱いになり出場機会が減ってしまっては何の意味もない。とにかくある程度先発出場できる場を与えてくれるチームを探したかった。
一方のメッツは、完全に外野手不足に喘いでいた。トレード放出やけが人続出で、青木選手を獲得するまで外野手登録は3人の状態だった。もちろんロースター枠が拡大されているので若手有望選手を昇格させることもできるのだが、実は40人枠でさえ残された外野手はたった1人だけ。しかもその選手は今シーズンは1Aに所属していた若干22歳で、まだまだメジャー昇格させられる逸材まで達していなかった。
さらに負傷離脱中のヨエニス・セスペデス選手(右脚ハムストリング負傷)、マイケル・コンフォート選手(左肩脱臼で手術)ともに今シーズン中の復帰が絶望視されており、メッツとしては是が非でもシーズン終盤まで活躍してもらえる“第4の外野手”を獲得するしかなかったのだ。まさに青木選手はうってつけの存在だった。
また金銭面でも両者の思惑は完全に合致していた。すでにブルージェイズを解雇された段階で今シーズンの年俸550万ドルが保証されており、メッツとの契約で金銭面にこだわる必要はなかった。それを周知しているメッツとしても、気兼ねなく最低年俸(しかも日割り計算で在籍日数分だけの支払い)で契約提示できるのだ。すべてにおいて両者の間に障害が何一つなかったといっていい。
ただ1点付け加えておきたいのは、メッツはあくまで今シーズンを乗り切るための“臨時要員”が欲しかった。決して来シーズンを見通して青木選手を獲得したとは思えない。この後どんなに活躍したとしてもメッツに残留するのはかなり難しいと考えておいたほうがいい。たぶん青木選手のエージェントもそれを理解した上でメッツとの契約を決めたはずだ。
いずれにせよ青木選手として思惑通り、シーズン最後までプレーできる場を得ることに成功した。あとは来シーズンの契約に結びつくような好材料をどれだけ増やしてシーズンを締めくくることができるかだ。最後まで青木選手らしい活躍ができることを祈るばかりだ。