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なぜ青木宣親はDFAの翌日に解雇されたのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ブルージェイズから解雇された青木宣親選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ブルージェイズが29日、前日DFAにより40人枠から外したばかりの青木宣親選手を解雇したと発表した。この結果青木選手は完全FA選手となり、今後はどのチームとも契約交渉できる立場になった。

 だがDFAと同時にウェーバーに入ったはずの青木選手を、なぜウェーバーの結果を待つこともなく解雇することになったのか。突然の解雇劇について分析してみたいと思う。

 まず考えて欲しいのは、今回の解雇がブルージェイズ、青木選手のどちらにとって有効だったのか、という点だ。

 まずブルージェイズの立場から考えてみよう。28日に青木選手をDFAにした時点で、当然ながらチームはかなりの確率で青木選手を失うことを十二分に理解していた。ウェーバー期間中に他チームが手を挙げれば自動的に移籍が決まるし、またウェーバーをクリアした後でも本人がチーム残留を拒否すればFA選手としてチームを離れることが決まっているからだ。

 つまりブルージェイズは慌てて解雇する必要はなかった。ウェバー明けに青木選手がチーム残留を拒否してFA選手になっても結果は同じだからだ。むしろウェバーで他チームがピックアップしてくれた方が、残りシーズンのサラリー(約102万ドル)の支払い義務が他チームに移るので、チームとしての負担は軽くなったのだ。

 逆に青木選手サイドから考えてみよう。ウェーバーに入った時点で、最長7日間はその結果を待たなければならない。その間はブルージェイズが主導権を握っているため、青木選手サイドは動きようがない。さらに9月1日のロースター拡大を目前に控え、ウェーバーに手を挙げてくれるチームが極めて少ないことが予想される中、ただ待つのは無駄な日々を過ごすことになってしまう。

 また仮にウェーバーがクリアになってブルージェイズ残留を選んだ場合でも、即メジャー復帰できる可能性が高いとはいえ、すでにジョン・ギボンズ監督が若手有望外野手の起用を優先する意向を明らかにしている以上、残り1か月間はほとんど出場機会が与えられないことは確実なのだ。そうなれば来シーズンに向けた契約交渉にも大きな影響を及ぼすことになる。

 ならばウェーバーがクリアになるのを待ってFA選手になるよりも、即刻チームから解雇してもらいFA選手になった方が、すぐに自分たちから他チームと契約交渉できるのだ。しかも解雇された時点で残りサラリーもすべてブルージェイズが支払うことで保証される。さらに仮に8月31日までに移籍先を決めることができれば、そのチームがプレーオフに進出できた場合出場資格を得ることができる。ウェーバー明けではそれが不可能なのだ。

 ということで今回の解雇は、DFAされた時点で青木選手サイドから解雇の要求があり、それをブルージェイズが受け入れて実現したものだと考えるべきだ。今後は青木選手のエージェントの腕次第。果たして数日中に新しい移籍先を見つけ出すことができるのだろうか?

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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