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デリン・ベタンセスも処分されるべきだったのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
危険球で退場処分を受けたデリン・ベタンセス投手(右)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月24日のタイガース対ヤンキース戦で起こった乱闘騒ぎに対し、MLBが厳しい裁定を下した。

 騒ぎの発端となったオースティン・ロマイン選手に殴りかかったミギュエル・カブレラ選手に7試合の出場停止処分を科したのを筆頭に、ゲイリー・サンチェス選手(4試合)、アレックス・ウィルソン投手(4試合)、ロマイン選手(2試合)、ブラッド・オースマス監督(1試合)──と計5人が処罰された。

 乱闘騒ぎを簡単に振り返ってみよう。5回表にサンチェス選手が死球を受けた後(ジョー・ジラルディ監督は故意死球だと主張している)、今度は6回裏にヤンキースのトミー・ケインリー投手がカブレラ選手の背後を通過する球を投げ込んだことで、危険球と見なした主審が即座にケインリー投手を退場処分にすると、判定に猛抗議を行ったジラルディ監督にも退場処分を言い渡した。これでやや物々しい雰囲気になった後、ホームベース上で言い争いをしていたカブレラ選手とロマイン選手がもみ合いになり、乱闘騒ぎに発展していった、というわけだ。

 しかしこの日は両ベンチから選手が飛び出し一触即発の状態になったのは、これだけではなかった。7回にはデリン・ベタンセス投手がジェームス・マッキャン選手の頭部に死球をぶつけ退場処分になった場面、さらに8回にもウィルソン投手がトッド・フレイジャー選手に死球を与え退場処分になった場面──と、立て続けに起こっていた。

 つまりウィルソン投手の出場停止処分は8回に死球を与えたことによるもので、6回の乱闘騒ぎとは直接関係なかった。試合後に本人が故意に死球を狙ったことを認める発言をしたことが大きく影響したようだ。

 だがその一方で、7回に死球を与えたベタンセス投手は処分から免れる結果となった。本人の説明によれば、「不運にもボールが滑ってしまった。同点だったあの場面でしっかり抑えることしか考えていなかった。故意に死球を狙いにいったりなんて絶対にしないし、そんなことをするような選手でもない」と釈明もしている。ただこの日記録された4死球の中で最も危険なものだった。

 処分について報じたMLB公式サイトでも、ベタンセス投手に対する裁定を疑問視するファンのコメントが数多く寄せられているようだ。またカブレラ選手がアーロン・ジャッジ選手も自分に殴りかかってきたと主張し、新たな名前も登場してきた。

 いずれにせよ、処分を受けた4選手すべてが提訴する方針だという。この問題はまだまだ尾を引くことになりそうで、ヤンキース、タイガースの双方に大きな遺恨を残すことになったのは間違いない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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