日本版NCAAの受け皿に!関西圏の大学が取り組むコンソーシアム構想
先頃立命館大学大阪いばらきキャンパスで、「第5回スポーツ振興関西地区検討会」が開催された。今年1月に第1回会合が開催されて以降、関西圏で大学スポーツに携わる関係者が一堂に集い、定期的に意見交換を重ねている。
この検討会の主たる目的は、『大学スポーツ推進コンソーシアム in Kansai(仮)』の設立にある。日本版NCAAを創設を前に、大学スポーツのあり方を見直すとともに、大学間で連係しながらアスリートの育成や地域社会との連動を推進し、大学スポーツの発展を目指していくというものだ。
残念ながら現状を見る限り、大学スポーツが一般社会に受け入れられているとは思えない。地上波で全国レベルで放映される人気コンテンツといえば高校野球、高校サッカー、高校ラグビー、高校バレー──等々と高校生が中心だ。一方大学といえば、一時期ラグビーが全国的な人気を博したこともあったが、現在では箱根駅伝ぐらいしかないだろう。あくまで大学スポーツはごく一部の人気競技を除き、高校からの部活動の延長上にある、“閉ざされた世界”というイメージを脱ぎ生きられない。
文科省の目指す『日本版NCAA』の創設は、そんな大学スポーツを一新し、米国のように大学スポーツ自体を成長市場に変貌させようとするものだ。とはいえ、NCAAのように大学スポーツを一括して統轄するには、あまりに多くの障害を抱えているのも事実だ。
各競技はそれぞれの大学競技団体に統轄されており、まさにバラバラな運営が行われている。大学内においても同様で、これまでは各競技の監督やOB会が現場を掌握し、学内での統一感はほとんどなかった(最近では学内にスポーツを統轄する組織を設立する大学が増えてきている)。つまり日本版NCAAができたからと言って、簡単にすべての競技を一本化できる環境にはないのだ。
先の検討会では今流行りのこうした“岩盤規制”を解消しつつ、統合に向けた研究・討論が続いているわけだが、「現状を変え大学スポーツを発展させたい」という参加者のバイタリティーは相当に高いように感じている。
あくまで個人的なイメージで恐縮なのだが、1995年に野茂英雄投手が多くの批判を浴びながらもMLB挑戦を果たして以降、しばらくの間MLBに挑戦する日本人選手のほとんが関西を中心とする西日本出身者だった。とにかく前に推し進めようとする意欲をこの検討会から感じ取ることができた。
その一貫として、検討会のみならず各大学レベルでも、様々な活動が実施されている。
●大阪体育大のDASHプロジェクト
例えば大阪体育大では、2016年から「DASH(DAITAIDAI ATHLETS SUPPORT & HIGH PERFORMANCE)プロジェクト」を始動させ、指導者、研究者が競技の垣根を越えてアスリートを育成、サポートする組織を作り上げている。また大学主催のシンポジウムを開き、関係者との間で意見交換しながら更なる大学スポーツの発展に取り組んでいる。
●武庫川女子大が実施したホームゲーム
また武庫川女子大では、米国のように学内学生が積極的に参加できる「ホームゲーム」方式を実現化すべく、同大ハンドボール部と関西学院大の親善試合を学生や地元住民を無料開放した。ハーフタイムではチアリーダーによるパフォーマンスやイベントを行うなど、通常の公式戦では見られない演出も手がけ、予定の150人を超える200人以上の観客を集めることに成功している。
長年米国で取材活動を続け、大学スポーツがプロスポーツに匹敵する巨大産業であることを体感してきた。果たして日本でも大学スポーツが一般市民、地域社会に受け入れられる存在になるのか。まずは関西圏の大学が立ち上げようとしているコンソーシアム構想に注目したいところだ。