Yahoo!ニュース

抜き打ち薬物検査も狙い撃ち?エリック・テームズの規格外の長打力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
4月の月間本塁打の球団記録を塗り替えたエリック・テームズ選手(右)(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ブルワーズの公式サイトが26日付けで、面白い記事をアップしているので紹介したい。

タイトルは、「Thames responds to suspicions after hot start(テームズが快進撃の疑念に答える)」。開幕から本塁打を量産し、ここまで11本と4月の月間本塁打数でチーム記録を更新したエリック・テームズ選手に関するものだ。

本塁打数はもとより、長打率(.904)とOPS(1.393)でも両リーグトップを独走するテームズ選手。一度はMLBに定着できず、3年間も韓国プロ野球に在籍していた選手の変貌ぶりに、今季11号を放った4月25日のレッズ戦終了後に、開幕後早くも2度目の薬物検査を実施されたのだという。

すでにご承知の方も多いと思うが、試合後に実施される抜き打ち薬物検査は、あくまでランダム(無作為)に選手が選ばれている。昨年12月に施行された新労使協定により、今シーズンから抜き打ち検査の数が3200回から4800回(血液検査も260回から500回)に拡大されたのは確かだが、対象選手は単純計算で750人(登録枠25人×30チーム)存在するので、1人当たりシーズン平均で6.4回(つまり月1回ほど)で済むもの。にも関わらずテームズ選手は2度目の検査を受けたばかりか、今回は尿検査に加え血液検査も実施されたのだという。

実は長年MLBを取材して感じるのは、突出した活躍をしている選手が抜き打ち検査に選ばれる確率が結構高いということだ。2013年に大車輪の活躍でレッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献した上原浩治投手も、当時は頻繁に薬物検査を受けたように記憶している。あくまで個人的な見解を脱しているものではないが、今回もテームズ選手がランダムに“狙い撃ち”されているように見えてしまう。

こうした周囲の疑念について十分に理解した上で、テームズ選手は以下のように答えている。

「ここに戻ってくるまでに随分と遠回りしてきたからね。自分にとっても今起こっていることは驚きだ。今年に関しては何の目標もないし、なにか記録を更新しようなんて考えてもいなかった。ただここでうまくいくかどうかを確かめるため、自分が韓国で学んだことを生かしたいと思っているだけだ。ここまでの結果にショックを受けているよ。

とにかくここで野球をするために戻ってきたので、健康を維持し、力を発揮できるように最善を尽くしたい。周りの人々が自分が何か(薬を)やっているんじゃないかと考え続けるのなら、自分はいつでもここにいるよ。血液も尿もたっぷりあるからね(笑)。問題ないよ」

ジョークを飛ばす余裕をみせるテームズ選手。果たして現在のペースでどこまで打ち続けられるか、しばし注視したいところだが、翌26日のレッズ戦で左脚ハムストリングの張りのため途中で退くアクシデントが起こってしまった。それでも試合後は本人、クレイグ・カウンセル監督ともとども軽傷を主張。27日も出場予定だというで、ひとまず安心というところか。

念願だった4年ぶりのMLBの舞台。テームズ選手が望むように、怪我なくシーズンを乗り切ってほしいものだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事