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「メンタルゲームでは負けない」。U-19日本代表で安部裕葵が示す”カシマイズム”

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

インドネシアでAFCU-19選手権を戦っているU-19日本代表の10番を背負う安部裕葵(鹿島アントラーズ)は北朝鮮戦で3−2とリードした後半31分に斉藤光毅と交代で途中出場。献身的なディフェンスで相手の反撃の芽を摘みながら、持ち味の仕掛けを見せて日本に良い流れを呼び込んだ。

同じく途中出場した宮代大聖のゴールで4−2とした後半アディショナルタイムには左サイドでの宮代の起点のヒールパスから藤本寛也が前につぐと、タイミングよく飛び出した安部が見事なファーストコントロールから右足を振り抜きゴールネットを揺らした。

「寛也くんからボールが来て、本当は(菅原)由勢が右サイドから上がって来ているのはわかってたんですけど、パスが前の方にきたので、その流れでゴールが見えたのでシュートをうちました」

そう振り返る安部は攻撃の選手であり、もちろんそうした得点力の部分も期待を背負っている。ただし、投入された時間帯で考えていたのは何より失点せずにリードして試合を終えること。「ゴールを狙えるチャンスがあればゴール狙いますけど、僕は途中からだったので、長い時間出ている選手の手助けになるような、為になるようなプレーを心がけた」と語る。

「そんな簡単に行く大会だとは僕らも思ってなかったので、そこで追いつかれても焦らずできたのが勝因だと思います」

大会前のキャンプの段階ではコンディションに不安を抱え、休養をまじえながら準備してきた。影山監督にも無理せず上げて行くように言われており、「僕の中では大会の中でどんどん上がって行く、初戦に向けて作り上げるというよりは1戦ずつ上がるように考えてます」と安部も割り切っている。チームの目標は準々決勝で来年のU-20W杯出場権を掴むこともあるが、安部が狙うのは優勝、アジア王者だ。そこには鹿島と言う、常にタイトルを目指して戦うクラブに身を置く選手の自負が見て取れる。

「もともと国内でも出場時間は多かったので試合感はありますし、やっぱり鹿島っていうチームでやっているので、どのチームでもできる自信はありますし、試合の勝負強さという鹿島らしい部分を試合で表現できればと思います」

ーーその鹿島らしい部分というのは勝負強さというところで、例えばリードをしたまま試合を終えるとか、残り時間の使い方というのを鹿島で学んできてるから?

「そうですね。やっぱりメンタルゲームになったときの自信はありますし、僕個人的にもメンタルの乱れがないので。それが強みですし、それを他の選手に伝染させられるような、そういう立ち居振る舞いは意識しています」

高度なテクニックと抜群の攻撃センスが光る安部のプレーは創造的だが、そうした能力に溺れることなく勝利のために、いつ、どこで何をするべきなのかを意識してプレーする。その”カシマイズム”(全ての試合に勝ちに行く鹿島の伝統は”ジーコイズム”とも呼ばれる)は若き日本代表が世界行きの切符を掴み、さらにそこで満足することなく前回大会に続くアジア制覇を成し遂げる為に必要なピースであることを強く感じさせる。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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