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藤本寛也を知っているか。東京ヴェルディの創造的なUー19日本代表MFが北朝鮮戦で開けた2ゴールの鍵。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

インドネシアで開幕したU-19アジア選手権の北朝鮮戦で影山監督が率いる若き日本代表は5−2と勝利。世界行き、アジア王者に向けて幸先の良いスタートを切った。日本があげた2得点は後ろからの組み立てをうまく攻撃陣がつないで得点に結びつけたもの。その起点として機能したのがボランチの藤本寛也だ。

左足の正確なキックと多彩な攻撃ビジョンを持つ。所属クラブの東京ヴェルディでは攻撃的なポジションで起用されることも多いが、U-19日本代表の影山監督は藤本をボランチで起用。藤本も「自分もボランチでボールをもらってテンポを出すというのが持ち味かなと思うので、ボランチでやる楽しさはけっこうあったりして、今日は初戦だったんですけど、うまくボランチの仕事が全うできたかなと思います」と振り返る。

久保建英の絶妙なスルーパスから斉藤光毅が決めた1点目も、斉藤のパスを受けたボランチの伊藤洋輝が豪快なミドルで決めた2点目も、ともにセンターバックの橋岡から右サイドの菅原を経由して藤本という一緒のルートだった。2つのゴールにつながった展開について「なるべく距離感をうまく(右サイドバックの菅原)由勢と(右センターバックの橋岡)大樹と(右サイドハーフの)郷家、(2トップ右の久保)建英の距離感をなるべく遠くないようにして、近くでボールを回す」イメージは共通していたという。ただ、具体的な藤本のプレーは1点目と2点目で違う効果を出した。

1点目は右の菅原からボールがきたところでトラップせず、1タッチで素早く叩くことで受け手の郷家が前を向いてボールを持てる状況をうんだ。「あそこではがせれば、ああいう風にうまくチャンスが広がってくると思う」とイメージする藤本は1点目のシーンについて「1タッチで弾くことができれば、だいぶ相手をがせて、ドリブルとかのシーンが増えると思った」と語る。

2点目は菅原からパスを受けると3人のディフェンスが藤本に寄せてきたが、左足でコントロールしながらさらに引きつけ、左サイドハーフから中央右寄りに流れていた斉藤に縦パスを通して見せた。1点目はすでにディフェンスが近寄っていた状況で素早く1タッチのパスを通したが、2点目は1タッチで出しても受け手のスペースが狭く詰まってしまうリスクが大きくなる。明確にイメージした部分とフィーリングの割合は分からないが、そうしたスペース感覚とセンスが似た展開の中でも1タッチかためて出すかを的確に使い分けられた理由だろう。

そうした攻撃面では「うまくボランチの仕事が全うできたかなと思います」と言うが、チームが2失点したディフェンスについてはボランチの相棒である伊藤との連携を含めて課題が出たことを認める。

「攻撃の時にいい距離感だと、取られた後とかロングボールを放り込まれた時とかに、距離感がいいのでそこで全員が切り替えて守備に回れれば、セカンドボールとか拾える回数はどんどん増えると思うので。なるべく攻撃に行く人数もバランス見ながら4人、5人、まあ6人はあんまり行かせないように、(伊藤)洋輝が行ったらサイドハーフ一人を落ちさせるとか、いいバランスというのをもっとやっていけたらいいかなと思います」

組み立てやチャンスメークで持ち前のクリエイティビティを発揮しながら、ボランチの重要な仕事である攻守のバランスを中盤の底からどう整えて行くか。グループリーグを突破し、準々決勝に勝利して世界の扉を開ける、さらに優勝ことができれば、非常に大きな自信を持ってヴェルディに戻ることができるはず。高いポテンシャルを持つタレントであることは間違いないが、貪欲に成長して行くことを期待している。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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