Yahoo!ニュース

ウルグアイ戦で見えた柴崎岳の小さく大きなモデルチェンジ。日本代表の4点目を生んだビッグプレーとは。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:田村翔/アフロスポーツ)

日本代表はウルグアイに4−3で勝利を飾った。中島翔哉、南野拓実、堂安律といったフレッシュなタレントが躍動し、ロシアW杯組が概ね貫禄を見せる中で、どちらかと言えばミスが多く、クラブで試合に出ていない影響がパフォーマンスに表れてしまったのが柴崎岳だった。

柴崎自身も「そういう感覚とか多少不安はありましたけど、もっともっと自分は行けるかなというレベルですし、これからさらにあげて行きたい」と語る。ただ、そうした中でも1つ気になったのがチームの流れに応じてポジションを前目に取り、そこで攻守の切り替わり時に前からボールを奪い、あるいはセカンドボールを拾って二次攻撃に繋げる姿勢だ。ボランチから組み立てや一本のロングパス、中盤から機を見て飛び出すプレーも苦手ではないが、あくまでオプションだった。その変化について柴崎は語る。

「(遠藤)ワタルとはよく話てコンビネーションとか、なるべく彼はバランサーとして、僕はちょっと前で関わって行こうという話はしていました」

その意識を象徴するプレーが日本の4点目につながったボール奪取だ。3−2で迎えた後半21分、右サイドを堂安が仕掛け、強引に突破するもクロスに持ち込めず、GKムスレラにボールを拾われる。そこから一気にウルグアイがカウンターというところで、柴崎が起点のトレイラに猛チャージ。トレイラはなんとか縦パスをガストン・ペレイロに出すが、長友佑都がフォローにきたところで、ペレイロがトレイラとのワンツーを狙うと、受け手のトレイラから柴崎が鮮やかに奪い返し、南野スルーパスを通したのだ。

そこから南野のファーストタッチが相手ディフェンスに引っかかったこぼれ球に堂安が反応して左足シュート。GKが弾いたボールを南野がボレーで蹴り込んだ。3点目のシーンでもCKのクリアボールを折り返し、堂安の代表初ゴールにつながる流れを作った柴崎。らしくないミスも目立った試合ではあるが、新しい代表の中でどうやったら効果的な仕事ができるのか、イメージしていたことをピッチに表現したのは確かだ。

「しっかり攻撃した後のこぼれ球を拾って二次攻撃の展開というのも、そこは(新しい日本代表の)肝になるかなと。二次攻撃にするか、相手のカウンターになるか、だいぶ変わってくると思ったので、そこはワタルと話し合っていいバランスで取れた場面がいくつかあった」

そう語る柴崎。モデルチェンジを図る理由について柴崎は「またW杯のメンバーとは前線のタイプが違うので、僕のプレーもちょっとずつ変えないといけないかなとは思いますし、そこは一緒にプレーする選手によって出すパスの種類とか、バランスを考えたりとか。そこはしっかり順応すれば」と語る。つまりロシアW杯でともに戦ったメンバーとはまた違い、縦に推進力を出してゴールを目指して行く攻撃陣に応じて、自分も変わって行く必要があると考え、そのビジョンを確かにいくつかのプレーで示した。

全体的に見れば躍動したチームの中でもそれほど評価が高くなかった柴崎だが、小さく大きなモデルチェンジのビジョンは開けてきている。あとはクラブで然るべき立ち位置を確立し、良い状態で日本代表に合流して行けるかどうかだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

河治良幸の最近の記事