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横浜F・マリノスのルヴァン決勝進出”影の立役者”。鹿島戦2ndレグで先制点を導いた大津祐樹の動き。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

ルヴァン杯準決勝、横浜F・マリノスと鹿島アントラーズの2ndレグは2−2で引き分けたが、1stレグとの合計スコアを4−3とした横浜F・マリノスが決勝進出。10月27日にリーグ杯としては17年ぶり、主要タイトルとしては2013年に天皇杯を制して以来の優勝を目指し、同じ神奈川県の湘南ベルマーレとファイナルを戦う。

この試合の先制点をもたらしたのはウーゴ・ヴィエイラ、そのゴールにつながるシュートを放ったのは天野純。彼らのプレーは賞賛に値するが、チームで奪ったゴールと呼ぶにふさわしい形だった。右ワイドから起点のロングパスを出した松原健、そのパスに反応して自慢のスピードで追いつき、天野に絶妙のパスを通した仲川輝人の貢献も目立つが、注目したのがボールに触らなかった大津祐樹の動きだ。

4−3−3の右インサイドハーフを根城とする大津だが、もともとアタッカーの選手であることがにわかに信じがたいほどの運動量と攻守のサポート、展開力でここ最近のマリノスの好調を支えている。その中でも特筆に値するのがオフ・ザ・ボールの動きであり、このゴールでも影から崩しを演出した。

起点のところから流れを振り返ると、左センターバックのドゥシャンから右ワイドでパスを受けた松原がやや前に持ち出して前線にボールを蹴り出そうとする。この瞬間、ハーフウェーのやや右にいた大津は相手ボランチのレオ・シルバにマークされていたが、前方を走る仲川がボールに向かい、相手サイドバックの山本脩人より先に追いつく流れで、レオ・シルバが大津のマークを一旦捨ててバイタルエリアの中央スペースを塞ぎに行った。

そこで大津はレオ・シルバが構えるバイタルエリアに向うそぶりから、いきなり外に膨らんで右前方でボールをキープする仲川を外から追い越す走りを見せる。これにレオ・シルバが付いて行ったことで中盤が空き、そこに天野が飛び出してきた。高い位置から永木亮太がカバーに走るも間に合わず、右の仲川からパスを受けた天野は左足を一閃。ディフェンスのブロックに当たったが、リバウンドが天野に当たり、ゴール前にっこぼれたボールをウーゴが右足でゴールに蹴り込んだ。

鹿島のボランチは中盤をバランスよく押さえながらも局面では危険なところにマンツーマンで付いてくる傾向がある。そこで大津は危険な受け手になりかけて、そこから離れる動きをしたことで一番美味しいスペースを天野に提供する形になった。ゴールには運ぶ選手、パスを出す選手、決める選手といった直接ボールに絡むプレーが不可欠だが、ハイレベルな勝負になるほど相手の守備を剥がす、味方をサポートすると行った目立たない働きが重要性を増してくる。

このシーンにおいては、まさに大津祐樹の動きがそれだった。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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