Yahoo!ニュース

不退転のウクライナ戦。センターバック植田直通が活躍なら本大会のキーマンに。

河治良幸スポーツジャーナリスト
対人戦に絶対の自信を持つ植田だが、声で守備を統率する意識も高まっている。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

U-17W杯から植田直通を取材してきてはっきりしているのは対人の守備について絶対に弱気な発言をしないこと。相手が190cmを超える大型FWであろうが、メンタルで屈することはない。それは植田の強みであり、センターバックで勝負する理由でもあるからだ。

そのストロングポイントを徹底して磨いてきた植田ではあるが、ここに来て明らかに成長を見せている要素がある。声で周囲を動かすということ。もちろん、これまでもやっていなかったわけではないだろうが、強い自覚が見て取れるのだ。”人に強い”ことは強みだが、それだけでは日本を代表するセンターバックとして世界で戦えない。そうした自覚が芽生えたのは代表での経験も大きいだろう。

「代表だけじゃなく、鹿島でもしっかりと経験を積んでいるし、その経験は生きると思う。いろんな経験をしてきた中で、アンダー17でも世界と戦ってきて、そういった色んな経験を出せると思うので、そこは自分の良さを出すためにも物怖じせず、前の選手にも色んな声をかけたい」

鹿島という常に勝利を求められるある意味、センターバックにとって国内では最も厳しい環境に身を置く植田はクラブでの日々の経験が積み重なって現在があることを代表の現場でも主張する。その一方で15年1月に初招集されてから”アギーレジャパン”、”ハリルジャパン”となかなか出番が巡って来なかった日々の中で、足りないものを認識して歩んできたことが、まさにロシアを前にして実を結ぼうとしている。

昨年12月のE−1選手権では本職ではない右サイドバックで出場し、ぎこちなさが見える中でも中国のサイドターゲットマンであるユ・ダバオを封じるなど、彼なりの仕事をこなしていた。ウクライナ戦で念願のセンターバックで出場となれば、相手の180後半のセンターFWをマークする役割がメインになるが、センターバックとなれば守備を声やポジショニングで統率していくことも当然求められる。

マリ戦の結果を受けて、ベンチで試合を見守った植田は「(苦しい時間帯こそ)センターバックはしゃべって、みんなで行ければいいと思うし、時間が少なくなってくればチーム全員で大きくやろうとか、初心に返るということではないですけど、基本でやっていることをやれれば問題ないと思います」と語る。

「センターバックは一番しゃべらなきゃいけないポジションだと思うし、全体の守備を動かすためにも一番コミュニケーションを取らないといけない。いつも一緒にやってない選手が多いですけど、そこは自分から率先して、こうしてほしいと伝えないといけないと思うし、そこは出た時にはしっかり伝えられるようにやりたい」

今回の遠征で起用されれば「チャンスは大切にしないといけない」という植田。もちろん本大会への重要なオプションとして評価を確かなものにするために、屈強な長身FWを擁するチームに対して、ストロングポイントである守備のデュエルを発揮することが大事だが、マリ戦の結果を受けて守備陣からのゲームコントロールの課題も問われている状況で、センターバックとしてのもう1つの仕事をこなせるかどうかも植田にとって試金石となる。

マリ戦ではチームとして不甲斐ない試合結果の中でも、同期の盟友である中島翔哉がデビュー戦ながら、後半アディショナルタイムに同点ゴールを決めて注目された。「僕も刺激を受けるし、負けてられないなというのはあります」と植田。日本代表におけるセンターバックとしての”初陣”で相手FWを封じ、さらに守備陣を見事に統率して勝利に貢献できれば、本大会の重要な戦力として評価を上げるとともに、日本に追い風を吹かせる原動力になるはずだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

河治良幸の最近の記事