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E−1初戦に勝利した”なでしこジャパン”を支える新守護神の池田咲紀子。課題に向き合う意識とこだわり。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

東アジアE-1サッカー選手権が開幕。高倉麻子監督は率いる”なでしこジャパン”は韓国と対戦し、フィジカルの強い相手に対して、雨の中でスリッピーな芝に苦しみながらも、岩渕真奈のゴールなどで3−2と勝利。幸先の良いスタートを切った。

GKの池田咲紀子(浦和レッズレディース)は序盤にFKのパンチングがズレたところを韓国の選手に拾われ、味方のDFがファウルでPKを与えるきっかけを作ってしまい、またロングボールにセンターバックの鮫島彩と動きが重なってしまい、鮫島の咄嗟のリカバリーに救われる場面もあった。

それでも攻撃的に試合を進めるチームの背後を的確に守り、相手のFWに飛び出されたシーンも素早いカバーリングで防ぐなど、高倉監督の期待に応えるプレーで勝利を支えた。そうした試合の中で認識した課題、さらには終盤にクロスからフリーで決められた2失点目についても「何かできたかな」と振り返るなど、試合後の話からも高い向上心をのぞかせた。

池田と言えば”ヤングなでしこ”として注目された2012年のU−20女子W杯で正GKをつとめた選手だ。あれから約5年、今年3月のアルガルベ杯でようやくA代表の”なでしこジャパン”に追加招集という形で選ばれた。しかし、そのチャンスを逃さずに先発したノルウェーでは無失点勝利の立役者になると、徐々に指揮官の信頼を得て現在にいたっている。

現在のなでしこはGKの実力が接近しており、韓国戦は控えだった山下杏也加(日テレ・ベレーザ)、松本真未子(浦和レッズレディース)はもちろん、選外にも有力候補がおり、ここ最近スタメンで起用されている池田も決して安泰ではない。だが、1つ1つのプレーにこだわり、成長しようとする姿勢は”なでしこジャパン”の新守護神の資質を示している。

【池田咲紀子(韓国戦後コメント)】

クロスボールとかボールの処理というのはいつもより気をつけろって監督から言われていたので、クロスボールに出た時はしっかり処理しようとは思っていましたし、ビルドアップの部分もいつもよりうまくいかない部分もあったんですけど、雨の中でやるのも珍しいことではないので、そんなに慌てずできたかなと思います。

ーー1失点目のPKにつながるファウルを与える前に拾われたシーンはFKに対するパンチングが思ったより飛ばなかった?

韓国のクロスボールの質がいつも体験しているものとは違うというか、若干重いものだったりするので、判断がいつもより、雨もありますし、一瞬ですけど全ての場面で一瞬を見て、いつもだったらもうちょっと早くというところで、ちょっと遅めの判断になってしまったりとか、そういうのはあったので。まあそこでしっかり自分がコーナーにしちゃえばいいので、弾けてれば1失点目にもつながらなかったと思うので、そこは悔しいです。

ーーそこの判断は大きく飛ばせない時は横に弾くとか?

それとか、本当に出る出ないとか、ディフェンスラインと自分の守備範囲がかぶっているところをどうするのかというのはずっと取り組んでいることなんですけど、はい。そういうところの判断がありました。

ーー鮫島選手がまだセンターバックに慣れないということもあって、ロングボールに二人が被って危ないシーンもありますけど、ただ徐々に立て直したのは試合の中で話し合いを?

そうですね。味方のコーナーの時にも鮫島さんは後ろに残っているので、しゃべったりとか、細かくディフェンスラインを中心に声をかけながら、少しずつ修正はできました。

ーーディフェンスの裏を狙われた危ないシーンをカバーリングで救ったが、あそこは持ち味が出せましたか?

そうですね。ディフェンスと連係して、コースを限定してくれたところに自分が出て行くというのが役割ですし、そこはやらなきゃいけないと思うので、いい場面が作れたんじゃないかと思います。

ーークロスをフリーで決められた2失点目はああなってしまうとキーパーとしては難しいが、チームとしては課題として後ろからも声かけなど良くしていかないといけない部分?

まずは簡単にクロスを上げさせないというところではファーストディフェンスのところで、たぶんそこは声1つで「寄せろ!」と言えばボールは上がってこないと思うんですけど、結果的には中のマークが足りてないので、つり出されちゃったりとかしていて難しい状況だったんですけど、失点の場面は滞空時間の長いボールだったので、何かできたかなというのはあります。

ディフェンスにも声かけはしてましたけど、届いてないというのが現状で、まあ届いてないっていったら出してないみたいなものなので(苦笑)。そこでしっかり伝えることと、最後の場面ではいいシュートでも自分がいい準備していれば、もっと予測して最後まで食らい付いて行ける様な準備は自分の課題としてあります。

ーー競争が厳しい中でも高倉監督に信頼して使ってもらって、そこで信頼に応える気持ちの高まりは?

もちろん使っていただくことで責任感は付きますし、やっぱり監督からも自信を持っていつも通りやれば大丈夫だからって、自信を持って送り出してもらえるので、少しずつ経験しながら自信も付いてきました。

ーー次の中国はリオ五輪で大活躍した素晴らしいキーパーが相手になりますが、その試合でもしっかり自分を見せてなでしこを勝利に導きたい?

はい。失点しなければ引分け以上は取れるので、そこはもちろんこだわっていきたいです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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