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「クラブが必要ないなら荷物をまとめて出ていくだけ」。移籍報道の渦中でも変わらない長友佑都の原点。

河治良幸スポーツジャーナリスト
代表戦の後には披露宴も控えるが「まずは代表で結果を残すことだけを考えてやりたい」(写真:アフロ)

イタリアに渡り7シーズン目を終えた長友佑都。インテルではこれまでも厳しい時期を経験し、そこから這い上がってきた長友だが、今季は特に苦しいシーズンとなった。目まぐるしく監督が交替するチーム事情の中で数試合続けて使われないこともあったが、ラスト7節は先発が6試合でうちフル出場3試合、最終節のウディネーゼ戦は後半からの出場ながら5−2の勝利に貢献し、”有終の美”を飾った。

気になるのは来季に向けての去就だが、欧州組キャンプからスタートした日本代表に合流した長友は「なんか皆さん、すごい心配してくださってるので、僕が全然自分のことを心配してない」と語り、これまでと同じく必要とされる環境でベストを尽くす気持ちに変わりがないことを強調した。

「まず監督が3回、4回代わったんでね(苦笑)。まずそれが大きな問題だし、その中で監督が代わるたびに最初に出られなくて、長いこと出れないこともあったし、自分の大きな経験にはなりましたけどね。今後のサッカー人生もそうですけど、引退した後にね、この苦しんだ部分がまた生きてくるかなと思います。最終的に最後7試合出られたんで、コンディション的にはいい形で代表に入れたかなと思いますけどね」

ーー去就も注目されているが? 

「いやあ、なんかみなさんすごい心配してくださってるので、僕が全然自分のこと心配してないと言うか、ホントにシンプルなことで何度も言っていますけど、クラブが必要ないのであれば荷物をまとめて出ていくだけで。自分がいる場所で、必要とされる場所で輝く努力をするだけ。それは何度も言ってるので」

そう語る長友は一昨季にも移籍のうわさがあがり、セリエAの中堅クラブへの移籍が浮上した。新シーズンのキャンプがスタートしても立場が不透明だったが、その当時もインテルへの思い入れは思い入れとして、必要とされる環境でプレーする気持ちを表明していた。そして結果としてインテルに残留し、さらに2シーズンを過ごして現在にいたっているが、スタンスに変化は無い。

「シンプルなことで別になんかこう、いろんな話を聞いてるとね、こだわりがあったりとか、インテルの愛があったりとかっていうことを書かれてますけど。もちろんインテルのことは好きだし、僕を育ててくれたクラブなので、その思いはありますけど。ただね、僕はサッカー選手なので、そこはやっぱり試合に出場するっていう。もちろん100%はないですけどね、移籍したからと言って、可能性がやっぱりそれなりに高いところでプレーするというのはサッカー選手として一番大事なことかなっていう風には思います」

ーー来季は”W杯イヤー”でもあるが、高いレベルで試合に出場することにプラスして、そこに関する自分なりのこだわりは?

「正直、こだわりがあんまりなくて。自分に与えられた道というか、クラブで変わらない努力をするだけなので。それで自分がやるべきことを全てやって、W杯に出れるかもしれないし、出れないかもしれない。それを含めてやるべきことをやってれば全て受け入れられるかなと思っていいる」

現在の長友には大きく3つの道がある。インテル残留、イタリア内での移籍、そして国外だ。イタリアで7年間。すっかり生活に馴染み、ある会見では日本語がとっさに浮かばずイタリア語で説明し直すほど溶け込んでいるが、移籍の結果として新しい国に行く場合でも、特に不安は無いことを主張する。

「僕は懐に入るの早いので(笑)。1ヶ月もあれば、別に言葉はなくても馴染めるかなと思ってますから、そこは全く心配してないところです、自分は」

日本代表での競争について「今回だけではないし、新しい選手も来ますし、そこはもちろんまずは負けない。その強い気持ちは持っている」と語る長友。イラク戦の結果によって最終予選の突破も見えてくるが、欧州組のキャンプがあり、親善試合のシリア戦を経てアウェーに遠征する流れに向けての意気込みをこう語る。

「今回はこれだけ準備ができる時間があるので、もう何も言い訳することはできないし、時間が無いなんてことも言えないので。全てはもう結果で証明するしかないってだけですよね。今まではなかなか時間がなかったりとか、チラホラそういう声がありましたけど、今回はもうそういうものは一切言えないと思います」

ブラジルW杯から3年間が経った。あの時の悔しさ、経験したものが彼のキャリアにおいて、とてつもなく大きなものであることに変わりはないはず。しかし、そうした気持ちは胸に秘め、与えられた環境の中で成長を求め、前へ前へ踏み出していく。それこそが長友佑都の原点でもある。

「(ブルガリアのクラブから加藤恒平が加わったが)これまで厳しい経験も沢山してきたと思うので、それが何かプレーヤーとしても人間としても感じる部分はありますけどね。彼を見ていて。(原点を思い出す?)そうですね。同じような、僕もエリートではなく、雑草魂でここまで来たので、なんか似てる部分もあるのかなと思います」

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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