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ベネズエラ戦の延長後半に見られた高度な攻防戦。久保建英のシュートチャンスを阻止したベラスケスの対応。

河治良幸スポーツジャーナリスト
途中出場の久保は延長後半に絶好のシュートチャンスを作りかけたが・・・。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

U-20日本代表は決勝トーナメント1回戦でベネズエラに延長の末0-1で敗れた。相手の強力な攻撃陣を阻止するものの、ここまで3得点の堂安律がタイトな守備にあい、FW陣がゴールを奪えない日本は後半18分に先発の高木彰人に代えて久保建英を投入。なかなかゴール前のチャンスに絡めなかったが、延長戦には右スペースでボールを持つシーンが増え、得点の雰囲気を漂わせた。

セットプレーから1点のビハインドを負って迎えた延長後半13分、久保にとって大きなチャンスが訪れる。右からのFKのクリアボールを後方の藤谷壮が拾うと、キッカーだった堂安が右のサイドラインでパスを要求した。その瞬間、左SBホセ・エルナンデスが堂安に引っ張られたのを瞬間視で確認した久保が藤谷から縦パスを引き出した。

藤谷の右足から、浮き球で裏に抜けるボールを左足のアウトサイドでトラップし、ややインのスペースに入り込んで左足のシュートに持ち込む。おそらく、そこまでのイメージは完璧だったはずだ。しかし、この流れを読んでいた選手がベネズエラにいた。CBのウィリアムス・ベラスケスだ。

中央の密集エリアにいたベラスケスだが、藤谷がロングパスを蹴る瞬間にはスペースに動き出し、久保の左足からワンバウンドで跳ねたボールに久保より一瞬早く触ると、外にかきだした。ボールを失った久保はすぐ奪い返そうとしたが、ベラスケスにうまく切り返されてファウルになってしまった。

ここには2つのポイントがある。1つはベラスケスのアプローチが最短距離であったため、久保の前に生じた危険なスペースを埋めたこと。もう1つは久保本人に聞かないと真相は分からないが、イメージしたよりもファーストタッチでボールをより手前にコントロールできなかったことだ。落とした位置よりバウンドが長くなっていることから、回転数の制御を少し間違えたのかもしれない。ただ、それもベラスケスの動きが少しでも遅れていれば、大きな問題にならなかったかもしれない。逆に久保のコントロールがパーフェクトなら、先に2タッチ目を触ってベラスケスをかわし、シュートに持ち込めたかもしれない。

結果的にシュートにならなかったため、もしかしたら長めのハイライトにも映らないシーンかもしれないが、この年代としてはかなりハイレベルな攻防が刹那の時間で行われていたことは確かだ。久保建英という選手を観る時に、そのテクニックに酔うのもいいが、味方からボールを引き出す動きや次のプレーにいたる流れ、そして相手の対応まで見ると、高度な駆け引きを見ることができる。そうしたプレーに注目することで、久保という選手を通したサッカーの理解度も深まっていくかもしれない。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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