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ボランチでスタメンの酒井高徳。”HSVの闘将”は本職ではないポジションで新たな可能性を生み出せるか。

河治良幸スポーツジャーナリスト
ブンデスリーガのHSVでキャプテンマークを巻く酒井高徳はボランチでタイ戦に先発。(写真:アフロ)

タイ戦に挑む日本代表はUAE戦の先発から離脱した大迫勇也に代わり岡崎慎司、そして今野泰幸に代わるボランチには酒井高徳が抜擢された。UAE戦と同じ[4−3−3]にするのか、あるいは従来の[4−2−3−1]に戻すのか、ボランチには誰を起用するのか多くの予想が出たが、ハリルホジッチ監督の回答は[4−2−3−1]でボランチに山口蛍と酒井高徳を起用、トップ下に香川真司を配置する布陣だった。

複数のポジションをこなすことを強みと考えながら、サイドバックへのこだわりも持つ酒井高徳は代表ウィークの直前に行われたブンデスリーガのフランクフルト戦後にこう語っていた。

「いつも言ってますけど、代表でも右でも左でも使われるので、どこでもしっかりやりたいというのは自分の頭の中にあるし、代表でもある程度はどのポジションでも分かっているし、でも不慣れ・慣れというのがあるので、そこは大きなところがあると思いますけど、自分は絶対ないだろうと100%言えますけど、仮にあった時のために準備はしたい」

起用されればしっかり仕事をこなすが、右膝のけがで離脱したキャプテンの長谷部誠など本職のボランチと比較されることは本望ではないという酒井高徳。ハンブルガーSVでも組み立てより、体の強さと視野を活かしてシンプルに相手の起点を潰し、セカンドボールを拾っては味方にすばやくつなぐという仕事を意識して勝利に貢献してきている。

「アジアとブンデスでは違うと思いますけど、もし監督がするんであれば応えられる様にしたい」と酒井高徳。タイ戦では[4−2−3−1]でも彼がやや下がり目で最終ラインの手前をカバーし、山口が高い位置からプレッシャーをかけ、機を見て攻め上がるという分担になるのか、交互に役割をシェアする形になるのか。もちろん前線に攻め上がれば強烈なミドルシュートを放つことも可能だ。

まずはタイ戦での勝利が重要だが、さらに厳しい相手との対戦を想定した新たな戦術オプションになってくるかもしれない。

UAE戦はベンチで見守った酒井高徳は本職ではないボランチでチャンスを得る形になったが、その中で「チーム全体でリーダーシップを取って、チームとして機能できるか」というビジョンをどうパフォーマンスに発揮していくのか。ドイツで揉まれてきた”HSVの闘将”に注目だ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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