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“難敵”柏レイソルに挑む松本山雅。「勝負は細かいところに宿っている」と語る反町康治の戦い方とは?

河治良幸スポーツジャーナリスト

J1は1stステージの第5節をむかえるが、昇格組の松本山雅は1勝1分2敗の12位。ハードワークをベースとした堅守速攻はJ1でもそれなりに通用することは証明してきたが、すでに挨拶の時期は終わり、勝ち点を積み重ねていけるかどうかはここからの戦いにかかっている。

第5節の相手は柏レイソル。ACLで堅調な戦いを披露するチームは1stステージこそここまで松本山雅と同じ勝ち点、得失点差の12位だが、洗練されたパスワークとソリッドな守備組織を兼ね備え、勝負強さはJ1でも屈指だ。松本山雅を率いる反町康治監督はアルウィンでこの難敵にどう挑むのか。

柏レイソル戦でも基本スタイルを変えることなく、ディテールにこだわった対策で柏のストロングポイントを消し、ウィークポイントを突こうとしていくはずだが、それがどこに表れるのかは試合で注目したいポイントだ。

『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』から、「勝負は細かいところに宿っている」と語る反町監督のブレーンでもある柴田峡コーチの言葉を紹介したい。

相手がどこでもブレない幹の部分。対策はディテール

対戦相手を徹底的に分析し勝利のエッセンスを注入していくのが反町監督のスタイルではあるが、興味深いのは戦い方の基本をほとんど変えていないことだ。

3ー4ー2ー1というシステムもそうだが、攻撃での人数のかけ方や守備の位置は対戦相手ではなく、試合の流れで変化するものなのだ。柴田コーチは「トレーニングに関しては、相手がどこだからと言って変えることは基本的にはしないですね」と語る。

「やはりうちのやるべきサッカーは守備から入っているというか、守備の約束事がかなりソリッドになっているので、ボールの位置によって守備を変えていくというやり方は取っていますけど」

それでは毎試合、ミーティングで指示する相手の対策はどういうものなのか?

「それはディテール です。かなり細かいところ」と柴田コーチ。試合の前日か前々日に1時間のミーティングを行い、そこで反町監督やコーチングスタッフが分析を重ねて導いた対策を徹底的に伝える。

「格下相手であれば10分、格上なら1時間というわけじゃないんですよ。ソリさん(反町監督)の中でも、それをやっちゃう勝負の世界はいけないというのがあって、なかなかそれを分かっていても継続するのは難しいじゃないですか。そこがブレないというか、どんな相手に対しても自分のスタンスを崩さないんですよ」

“敵をだますにはまず味方から”という格言があるが、どんな相手との試合にでも真摯に臨み、戦術面だけでなくキャラクターや人間性のところでも隙を作らない姿勢が、研ぎ澄まされたチームを作り上げていったとも言える。そして、その成果は上位を争う相手との対戦でも表れていったのだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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