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ヘルタ・ベルリンで見る原口元気の成長と日本代表入りの可能性

河治良幸スポーツジャーナリスト

ブンデスリーガ第26節は金曜日にハンブルガーSVとヘルタ・ベルリンの試合が行われ、0−1でアウェーのヘルタ・ベルリンが勝利。暫定で13位に浮上した。

細貝萌はベンチ入りしなかったが、後半1分から投入された原口元気は精力的な仕掛けと献身的な守備でチームに流れを呼び込み、原口のドリブルで獲得したFKからラングカンプの決勝ゴールが生まれた。

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■原口の何が変わったのか?

(日議)原口元気がヘルタ・ベルリンで調子を上げていますね。

(河治)前節のシャルケ戦でついにゴールを決めましたが、ハンブルク戦ではダルダイ監督の求めるハードワークをしっかりこなしながら、ドリブルなど彼の持ち味も出ていたと思います。決勝点となるFKも彼のドリブルでファウルを取ったものでしたね。

(日議)どういう部分が良くなってきたと思われますか?

(河治)まずはチームのためにプレーする意識というか、もちろんそういう意識はあったと思いますが、とにかく決定的なプレーをしてゴールという結果を出すことを以前は狙いすぎていたと思います。

それがダルダイ監督と話す場を持ったそうですが、ハードワークやコンタクトプレーなどの役割をこなした先にゴールがあるというビジョンを描ける様になったのではないでしょうか。

特に球際で躊躇しなくなりましたね。浦和時代からもそうでしたが、せっかくその場にいるのに当たりに行かないとか、以前はちょっと軽いところがあったのも事実です。自分の持ち場である左サイドから少し離れたところでピンチになりかけたところでカバーに行って、相手の攻撃を遅らせた場面は意識の変化を象徴するシーンでした。

(日議)ダルダイ監督はどのような方ですか?

(河治)2月7日にハンガリー代表との兼任でヘルタ・ベルリンを率いることになったのですが、クラブのレジェンドです。本当に熱く、テクニックに優れながら誰よりも走って勝利のために犠牲になれる選手だった。そうした現役時代のプレーが指導者としての振る舞いにも表れているでしょうね。

先日、原口選手の通訳を外して、大変でも選手同士でコミュニケーションを取って行く様に求めた様です。これは苦しいかもしれないけど、今後を考えたら良いことです。原口選手は良い指導者に当たったなと思います。

■日本代表入りの可能性は?

(日議)ハリルホジッチ監督の最初の代表メンバーには選ばれませんでしたが、これから選ばれるには?

(河治)ダルダイ監督が原口選手に求めるものとハリルホジッチ監督のウィング像は似ていると思います。攻守に渡ってハードワークし、攻撃では積極的に仕掛けてチャンスを作り、どん欲にゴールを狙う。そして守備に切り替わったらまた奮闘すると。

体力的にも精神的にも厳しいですが、それを嫌がらずにやり続けることですね。原口選手は体力的には問題ないですが、プレーにムラが出てしまうことがあります。せっかくスペースに走ったのにパスが出ないと、がっかりした態度を取って守備に切り替えるのが遅れたりとか。

ハンブルク戦でもそれは何度か見られました。そういうところはクラブでも改善して、安定して高いパフォーマンスを出せる様になってほしい。あとは裏に飛び出す意識はさらに必要でしょう。とはいえチームの勝利のために何をするべきかという意識は明らかに変わりつつあります。

この試合の映像をハリルホジッチ監督が観ていたら「おっ」と思うでしょうし、細貝選手が同じヘルタに所属していることもあり、視察ルートに入ってくるかもしれません。次のメンバー選考は6月になりますが、個人的にはかなり期待しています。

(日議)河治さんは原口選手を以前から取材しているとお聞きしました。

(河治)小学生の時からですね。全国少年サッカーで取材しましたし、フットサルのバーモントカップとか。一番印象に残っているのは中学生で浦和ユースに昇格してきた時かな。山田直輝選手(湘南)などもいましたが、テクニカルだけど溌剌としていて、背はそれほど高くないのにヘディングがうまかったのを覚えています。

ドリブラーでありながらゴール前に飛び込むプレーもできて、下級生というのもありましたが守備もわりとしていました。トップチームに入ってからは成長した部分はもちろんありますが、エースとしてちょっと背負うものが大きすぎるのかなとか、時に独りよがりになっている様な印象も受けましたね。

ヘルタ・ベルリンの最近のプレーを見ると、良い意味で原点に返った印象です。

(日議)最後に今後の期待を教えてください。

(河治)もともと素晴らしい才能の持ち主ですし、意識次第でどんどん伸びると思っていたので、ついに殻を破る時が来たかなというか。プレーはもちろんですが、取材で話を聞くのが楽しみです。

チャンスがあればベルリンに行きたいですが、日本代表で取材できる日が待ち遠しいです。現状に満足することなくどんどん挑戦して、インターナショナルな選手に飛躍してほしいと思います。

(日議)ありがとうございました。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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