トヨタが作った「ニュル」を、GRスープラで走る【動画あり】

写真:トヨタ自動車株式会社

 トヨタが本社にほど近い豊田市と岡崎市の中間にまたがる山間部の下山村に建設を進めてきたToyota Technical Center Shimoyama(アルファベットが正式名称で通称TTCS)のコースの一部を視察および試乗する機会を得た。

 今回筆者をはじめとした報道陣に公開されたのは、ドイツの伝説的なレーシングコースである「ニュルブルクリンク」の北コースを模した全長約5.3kmのカントリー路と、現在建設中となる高速周回路等を含む「東工区」。さらにカントリー路は、5月24日に発表されたばかりのトヨタGRスープラをはじめとするGRモデルでの試乗も行なった。

 今回公開された”下山のニュル”は、TTCSの一部運用としてスタートしたばかりで真新しく、それこそ前日に豊田章男社長が試走したばかりという状態。実際、我々が招かれた段階でも、まだ社内の人間も走行した人は皆無と聞いて驚いた。しかも今回の取材ではコース内は全面撮影OKという、通常のテストコースでは絶対不可能なルールがあえて適用された。

 今回の取材に関して、トヨタ自動車副社長およびトヨタ・ガズーレーシングカンパニーの友山茂樹氏は冒頭のあいさつで、「CASEの時代にこんな大きなテストコースを作るとはどういうことか? と聞かれますが、我々はCASEの時代だからこそ、走る曲がる止まるという原点に帰って、クルマを鍛え、またクルマを鍛えられる人材を育成することが重要と考えています。この部分が自動車メーカーの強みになるという確信をもって、今回のプロジェクトを進めています」と語ったのだった。

 今回ここで試したのは、前週に発表されたばかりのGRスープラ3グレード全てと、GRのラインナップ群。GRスープラのRZとSZ-Rは袖ヶ浦フォレストレースウェイで徹底的に試しており、今回は名古屋駅からこのTTCSまでの道のりでもスープラSZとSZ-Rを「公道初試乗」してきた。それだけにGRスープラのスポーツカーとしての出来の良さは存分に感じていたが、このテストコースで走らせると改めてその仕上がりの良さを確認できた。

 実際に走らせると、ステアリングフィールが実にしっかりとした感覚を伴う上に、極めてクリアに情報伝達される。結果安心かつ自信を持って的確に操舵していける。また荒れた路面を高速で走るような場面では、相当に荒れた路面にもかかわらず接地感がしっかりと確認でき、これも安心を感じる要素として受け取れた。

 カントリー路は評価用のテストコースとしてはかなり厳しい部類で、実に様々なRのコーナーが用意される他、通常のコースでは生まれない上下Gも発生するため、クルマを鍛えていくのには相応しいコース。今回はそこで、GRスープラのRZ、SZ-R、SZといった各モデルのハンドリングや味付け、そこから生まれるキャラクターの違いをハッキリと知ることもできたのだった。

 さらにその後は、まだ建設中となる高速周回路がある「東工区」も視察。ここは見学に行くのに、カントリー路からシャトルに乗って一度コースの外へ出て、なんと15分も走行して周回路見学場所に到着するという距離で、このコース全体の規模の大きさを痛感した。

 そして約65mもの高さがあるのり面を階段で延々と登って振り返ると、まだ完成してない高速周回路の2kmの直線の遥か先まで、目視できないほどに広がる敷地が現れたのだった。ここに6.5kmの外周路と先の2kmの直線を含む5.5kmの高速周回路が作られるという。

 このTTCSは山間部の土を周囲に持ち出すことなく、高いところを削って低いところにその土を入れて埋めて作る工法を用いたほか、自然の動物や植物も保全して環境との共存も考えたものとなっている。そしてこの山の上の周回路を含む敷地は、実に東京ドーム140個分の広さをもっており、トヨタの東富士研究所の約3倍ともいわれる総面積650.8haにも及ぶ。投資額も約3000億円という、実に巨大なプロジェクトで、全てが完成するのは実に2023年。そしてその頃には、ここで約3300人が働く計画だという。

 まさに圧倒的な広さで、先に走ったカントリー路はまさにこのコースのほんの一部だったというわけだ。トヨタは、ここまでして「走る曲がる止まる」についてをこの時代に追求しようとしている。果たしてこの下山のニュルをはじめとしたテストコースで鍛え抜かれ、味づくりが徹底的に実施された新型車たちはどんな仕上がりとなって我々の前に登場するのだろうか? おそらく結果は数年後に分かるのだろう。