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電気自動車のあり方が変わる? 日産リーフのハイパワー版「e+」が登場

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

 日産自動車株式会社は2019年1月9日、同社の電気自動車「リーフ」のハイパフォーマンス版である「e+」というグレードを追加した。このe+は搭載するモーターこそノーマルと同じものであるが、リチウムイオンバッテリーの容量をアップしてノーマルの40kWhから62kWhへと引き上げている。この結果、車両重量はノーマル比で180〜160kg重くなっているが、航続距離がこれまでの400kmから570km(ともにJC08モード)へと増したのが最大のトピックだ。

 またバッテリー容量と航続距離の増加に加え、モーターの最高出力もノーマルの150psから217psへ、最大トルクも320Nmから340Nmへと性能向上を果たした。これにより動力性能はアップしており、ノーマルでは最大加速Gが50km/hまで持続したが、このe+では70km/hまで持続する。また80〜120km/hの中間加速もノーマルより13%アップしている。合わせてバッテリー容量の変更によって、最大地上高が−15mmとなり(一方で車高は+5mm)重心も低くなったことで、その走りはさらに性能向上を果たした。

 発表会場において、日産自動車株式会社・専務執行役員で日本事業を担当する星野朝子氏に話を伺った。星野氏はまず、日産の電気自動車に関する戦略に関しては、「中・長期戦略で発表している計画に変更はありません。現在はこのリーフとe-NVというラインナップですが、2022年までには軽自動車のEV、そしてクロスオーバーのEVを送り出します」と述べた。

 また現時点で国内市場において、他の自動車メーカーを含めてEVの競争が起こっている状況には達していないことをどう感じるか? という問いに対しては「世界的には38万台以上を販売し、約50カ国で販売されており、欧州では既にシビアな競争になっています。その中でリーフは引く手数多の状況となっています。そして日本でも遅かれ早かれEVが競争する状況はやってくると考えています。しかしそうした状況になったとしても、我々がこれまでの長い時間の中で培ってきたデータやノウハウが膨大にあるリーフはとても高い競争力を持っていると考えています」と答えた。

筆者撮影
筆者撮影

 そしてこのe+の追加によって、現状のEV市場の何を変えると考えているか? という問いに対しては「バッテリー容量が増して、航続距離が伸びたことで、これまで電気自動車に関して特に航続距離や充電に関する不安を感じていらっしゃった方にも、より安心してお使いいただけるものになったといえます」と答えた。

 また今回筆者は昨年の12月に袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された事前取材会において、このe+を実際に試乗することができたのでその模様もあわせてお届けする。

 動画をご覧になっていただいてわかる通り、ノーマルよりも遥かに力強さは増しており、速さに磨きがかかった。あわせて低重心化によるロールの低減やサスペンションの見直しによって、サーキットでもかなりの速さを見せていることが分かる。

 しかしながら、今回のハイパフォーマンス版の真骨頂といえるのは、航続距離が長くなったこと。JC08モードで400kmから570kmに。WLTCモードでも322kmから458kmへと、実に40%も航続距離をアップした。特にWLTC航続距離は、99%以上のユーザーの1日あたりの走行距離を超えるもので、より実用性が高まったといえるだろう。

 実際、現行の2代目リーフになったことで航続距離が伸びて、従来よりも充電を気にせずに普段使いができるようになったのは先代との大きな違い。それがさらに航続距離を伸ばしたことで、今後はより充電を気にせずに普段使いできるのはもちろん、遠出に関しても近場であれば充電することなく帰ってくることができる。そう考えるとこのe+の登場によって、これまでの行動範囲が広がるとともに、生活の中でのEVの使い方にも変化をもたらすことになるだろう。

 また日産リーフe+は、EVとエネルギーシステムをつなぐことで車載バッテリーの充電に加え、バッテリーに蓄えた電力を家やビルに給電したり、電力網に電力を供給可能な「Nissan Energy」を推進する上でも、バッテリー容量が増えたことで重要な役割を果たす。加えてEVを環境負荷低減や災害対策など地域課題に貢献できるソリューションと位置づけ、「日本電動化アクション”ブルー・スイッチ”」活動も推進する。

 星野氏は、「日本は災害の多い国で、災害が起こると生活だけでなくビジネスも停滞してしまいます。そうした状況で、電気自動車だからこそいち早く活躍できることは、先日の北海道の震災においても実証されました。実際に北海道でヴィークルトゥホームを使っていただいている方からも、リーフから電源をまかなうことができて本当に助かったという声も聞いています。その意味においては日産自動車としてリーフを買ってください、ということではなく、安心・安全な社会を作っていきましょうという脈絡の中に電気自動車を置いていただき、生活のインフラをキープするために使おうということが大切だと考えています。そして将来的に他のメーカーさんからも競合車が登場した暁には、より多くの電気自動車のある社会となることで、さらに安心・安全な素晴らしい社会になると考えています」と語った。

 性能アップは実際に走らせて、これまでのモデルとの大きな違いを感じるだけの仕上がりになっていた。しかし今回はやはり、航続距離の増加による実用性がさらに高まったことと、バッテリー容量アップによって「動く蓄電池」としての利便性がさらに高まったことがキモといえるだろう。

まだまだ台数的には本格普及とは言い切れないが、こうしたEVの増加は確かに新たな社会の構築に貢献するだろうし、今後国内市場でも競争が始まろうとする中にあって、日産が現在もつこうした先行者としての知見は強みになると思える。もっとも直近ではゴーン問題に揺れていることに加え、今年は国内で新たなプロダクトが予定されていない状況を考えると、この強みを活かした具体的な商品の登場にも期待したい。なお、この日産リーフe+の発売は1月23日からとなっている。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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