Yahoo!ニュース

レクサスのコンパクトSUV、新型UXの実力は?

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
レクサスオフィシャル映像

動き出した瞬間に、完成度の高さを実感

 レクサスの新型UXを見て、触れて、走らせて「これは売れる」と素直に感じた。レクサスの最もコンパクトなSUVという立ち位置だが、その完成度は高く、先に登場した新型ESにも並ぶ仕上がりの良さを感じた。そしてこれだけ魅力的なプロダクトであり、レクサスの他のモデルと比べても比較的低価格なら、レクサスの屋台骨を支えるモデルにも成長する可能性がある、とすら思えたのだった。

 新型UXでまず印象的だったのは、走り。試乗に向かうために駐車場の中を低速で動かした時点で、「かなり良い!」と思えた。クルマは低速で動かした瞬間に伝わる感触で、その仕上がりの半分を語る。実際に新型UXはタイヤが滑らかに転がりはじめ、その感触はマツダCX−3やトヨタC-HRなどの国産コンパクトSUVの中で比べても頂点を争えるレベルと瞬時に思えた。メルセデス・ベンツGLAやアウディQ2などの輸入車のコンパクトSUVとも競えるか? とも思えたほどだ。ちなみに新型UXは新世代のGA-Cプラットフォームを用いており、これはトヨタのTNGAプラットフォームで、プリウスやC-HRが用いるものと同じ。それだけに同じコンパクトSUVのC-HRのレクサス版といわれるわけだが、厳密にいうとC-HRのそれよりもさらに補強を行い剛性を高めたほか、骨格も独自で設計するなどしている。

筆者撮影
筆者撮影

 それにしても走り出しが滑らかな上に驚きだったのは、このモデルがFスポーツという、その名の通りのスポーツモデルであり、サスペンションはノーマルよりも硬めに設定されていること。にもかかわらず、動き出しで滑らかな印象を伝えてきたのだ。さらに高速に乗ると、やはり第一印象の良さは持続しており、とても滑らかな感触と優れた乗り心地を示してくれた。ここには試乗車がハイブリッドモデルのUX250hのAWDモデルということも関係している。なぜならこのモデルはシリーズの中で最も車両重量が重い1630kgとなる。クルマは車両重量が重い方が、乗り心地も良くなる傾向にある。それゆえにFスポーツでも乗り心地良く感じたのだろうか。

ハイブリッドのフィーリングも熟成された感あり

 次に印象的だったのはドライブトレーン。UX250hは2.0Lの直列4気筒にハイブリッドシステムを組み合わせる。これが今まで以上に熟成されていると感じた。そもそもトヨタが開発したこのハイブリッドシステムは、高効率かつ低燃費という点で世界を変えたわけだが、その反面フィーリングは決して良いものではなかった。ラバーバンドフィールと揶揄されるように、アクセルを踏み込むとエンジンの回転上昇と速度上昇に乖離があり、アクセルを踏んでも回転が上がる一方で、ゴムが伸びるように後から加速がついてくる歯がゆい感触だった。

 トヨタはこのフィーリングを打ち消すためにかなり様々に工夫を凝らしてきており、それが今ではだいぶ自然なフィーリングに近づいた。もちろん今でもアクセルを深く踏み込めば、そうしたラバーバンドフィールが顔を出す。が、一般的な乗り方であれば、アクセル操作に対してすぐに力が得られて、フィーリング的にも以前のような不満は少なくなった。こうした感覚がだいぶ熟成されたものに感じたのが、先に登場したサルーンの新型ESである、今回のUX250hもまた同様だった。ちなみに燃費はFスポーツがWLTCモードで21.6km/L、バージョンLが22.8km/Lとなる。こうして今回、まずUX250h Fスポーツを試乗してみて、その走りの良さが印象に残ったわけだ。普段使いするときに、嫌味のない乗り味走り味を提供してくれる完成度は高いものだ。

デザイン的な魅力も感じるモデル

筆者撮影
筆者撮影

 そして走り同様に印象的だったのはデザインである。エクステリアはレクサスの最新のデザイン言語を具現化しており、単純にコンパクトSUVなのに存在感があると感じた。エッヂを強調して力強さやたくましさを表現するあたりは、アウディQ2などでも見られる手法だが、むしろQ2よりも印象的で存在感がある。またフロントマスクの中心となるレクサスならではのグリルであるスピンドルグリルのデザイン的な融合も巧みになったといえる。さらにリアの横一文字のテールランプなど、個性を探求していこうという思いも感じられる。

筆者撮影
筆者撮影

 そうした印象はインテリアでも同様。フラッグシップのLSなどと同じようなテイストのハンドルおよびメーター周りを構築し、先に登場した新型ESと同じようにひさしのない大型のモニターを与えるなど、全体的なレクサスの世界観を継承する。しかしながら、グレードによってはダッシュボードに和紙シボを与えたこのUX独自の世界観を与えた他、ピアノの鍵盤のようなスイッチ、さらに2トーンのシートなど、コンパクトSUVならではの愛らしさも表現した。このような手法はボルボが昨年日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したXC40で展開するが、それと比べて真っ向勝負できるとは言えないものの、これまでのレクサスにはなかったユニークさも垣間見せた。

 そんなUX250hの高評価は、筆者の動画でも確認できる。

 今回の試乗ではハイブリッドのUX250hのFスポーツのほかに、UX250hのバージョンLというノーマルのサスペンションのモデルも仕様した。Fスポーツよりもソフトなサスペンション設定となるモデルだけに、さらに期待して試乗したが、こちらは先に乗ったFスポーツで感じたほどの驚きはなかった。とはいえ、こちらも悪くない仕上がりで、ここから今回の新型UXはなかなかに高いポテンシャルを持ったモデルだと感じたのだった。

新世代エンジン+トランスミッションのガソリン仕様

 そしてさらにUX200というガソリン・エンジン搭載モデルのFスポーツとバージョンLを試乗した。今回の新型UXの販売比率は、現時点ではその多くがハイブリッドモデルだが、ガソリン・エンジン搭載モデルも注目である。なぜなら搭載する2.0Lエンジンは新世代のもので、熱効率が40%を実現した高効率エンジンである。エンジンの最高出力は174ps、最大トルクは209Nmを発生する。ただし燃料はハイオク仕様となる。そしてここに組み合わせるトランスミッションも新世代のダイレクトシフトCVTと呼ばれるもので、このCVTは1速ギアを持ったユニークな構造。これにより、発進時にダイレクト感あるフィーリングを実現した。ちなみに燃費はWLTCモードで16.4km/Lとなる。

筆者撮影
筆者撮影

 ハイブリッドモデルからガソリンモデルに乗り換えると、先に感じた走りの良さとは違うフィーリングがそこにあった。というのもまず、ガソリン・エンジン搭載車は車両重量が軽く、試乗したバージョンLのFFモデルはシリーズ最軽量の1500kg。それゆえに走り出しから印象が異なった。走り出すとハイブリッドモデルにはない軽さが、走り全体に軽快感を生んでいるのがすぐに伝わる。なのでハイブリッドモデルに比べてキビキビした感覚で、いかにもコンパクトモデルという印象を受けた。

 しかしながら、そうした軽快さの一方で、悪い意味でも軽さを感じ、走っていると路面等に反応してヒョコヒョコした動きが出ることがある。なので落ち着いた感覚を求めるならハイブリッドがオススメだ。また高速道路等ではクルマそのものの座りがややしっかりしていないためフラつく感じがでることもあり、直進性に関しては不満を感じる人もいるだろうと思えた。

 

とはいえ、それでも完成度の高さでみれば、国産コンパクトSUVの中ではトップクラスといえる。さすがに輸入車のコンパクトSUVと比べると、この辺りは輸入車に分があると言わざるを得ないだろう。走りの様子はUX200バージョンLの試乗動画もあるので、そちらを参考にしていただきたい。

 いわゆる純粋な国産ブランドとは少し存在感の異なるレクサス・ブランドのコンパクトSUVだけに、注目度は高く。輸入車のコンパクトSUVを狙う層からも、国産コンパクトSUVを狙う層からも気になる存在だといえる新型UX。様々なモデルを試乗してまとめてみると、その完成度は高い1台だったことは間違いない。走りに関して、やや気になるところがあったが、それでも実力は十分以上。さらにデザインの魅力なども加えると商品性は高い。

筆者撮影
筆者撮影

後席の狭さ、価格は気になるところ

 とはいえ、実用面で気になる部分といえば後席の使い勝手だろう。やはりスタイリッシュなコンパクトSUVだけあって、後席のスペースはハッキリと狭い。例えばマツダCX−3もこの点がネガティブに取られているポイントだが、新型UXもここは高い評価は得られないだろう。

 そして価格だが、UX250hはFスポーツが504万円、バージョンLが509万円と安くはない。とはいえ、輸入車のコンパクトSUVと比べても、ライバルにはないハイブリッドを備えているという点では評価できるだろう。そしてこの辺りをして、輸入車に匹敵する存在とみるか否かでこのプライスの評価が決まる。そしてガソリン・エンジン搭載のUX200は474万円からとなるわけだが、これもオプション等をつければ500万は確実に超えるわけで、そう考えると、ガソリン2.0LのFFモデルとしては割高感が否めない。

 しかしながら新型UXは、発表から約1ヶ月の時点で月販目標台数の約10倍にあたる、8800台を受注する好調ぶりを示している。そう考えると、やはり注目されているモデルには変わりないし、この価格でも一定以上の需要が確実にあることを証明している。

 ちなみに筆者のオススメはハイブリッドモデル。やはりレクサスのコンパクトSUVだからこその個性を考えたときに、ハイブリッドは他にないもの。そう考えると、レクサスらしさで選ぶならコレだし、実際に走ったフィーリングの良さで言えばこちらの方が完成度が高いといえる。FスポーツとバージョンLでは、バージョンLの乗り味にやや雑なところが見受けられるが、全域で乗り心地の良さを求めるならバージョンLだろう。Fスポーツは他のレクサスのFスポーツより乗り心地の良い優れた仕上がりだが、やはり段差や荒れたところだと特に低速で突き上げが厳しいといえる。価格的にはガソリンモデルがリーズナブルなのだが、乗るとハイブリッドに比べて軽快な反面、少々の安っぽさを感じてしまう。

筆者撮影
筆者撮影
自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

河口まなぶの最近の記事