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レクサス新型ESが採用した「デジタルアウターミラー」のメリットとは? 

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
写真は全て筆者撮影
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 これまでとは違い、そこに物理的な鏡は入っていない。代わりにあるのは高性能なカメラだけ。そしてこのカメラで撮影した画像は車内に設置されたモニターに映し出され、ドライバーはここで確認することになる。

 レクサスが2018年10月23日に発表した新型車「ES」には、量産車として世界初となるデジタルアウターミラーが採用されたことが大きな話題だ。このデジタルアウターミラーは、2016年6月に道路運送車両法が改正されてカメラとモニターでミラーを代用することが認可されて以降、初めて世に送り出されるもの。車両のフロントドア外側のカメラで撮影した車両左右後方の映像を、車内のフロントピラー部(車両フロントガラス左右の柱の部分)に設置された5インチディスプレイに表示する仕組みとなる。

これによって従来のように、ベーシックなサイドミラーがあった位置ほどは視線を動かさない。とはいえ新型ESの方式では、左右のピラーの根元までは視線は移動することになる。それでも視線の移動量そのものは従来よりは少ない、といえるだろう。もっともこの辺りは車内のインテリアデザインも含めて今後変わっていく可能性があるし、そうした変化に影響を与える要素にもなるだろう。

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 デジタルアウターミラーのメリットは、カメラ部を雨滴が付着しにくい形状とした他に、カメラ自体にヒーターを内蔵していることで天候の影響を受けにくいこと。またディスプレイを室内に搭載したことによって天候に関わらず優れた視認性を確保している。特にこれまでは、例えば冬や雨の際の始動時に、窓の内外に露がついたり曇ったりすると、それらが乾くまではミラーも見えなかった。また室内の曇りが取れても雨でミラーの鏡面に雨滴が…というような状況から解放されることになるわけだ。

 さらに新型ESではウインカー操作やリバース操作とこのデジタルアウターミラーを連動させることで、表示エリアを自動的に拡大する機能が与えられる他、ドライバーの操作によって任意で表示エリアを拡大することも可能としており、運転状況に応じた周辺確認支援が実現されているのが特徴となっている。これまでは物理的な鏡であったため、どうしても死角ができたがそうしたこともだいぶ解消されることになるわけだ。

 もちろんミラーのとしての機能だけでなく、従来のミラーをデジタルアウターミラーとしたことで小型のカメラに置き換わるため、斜め前方の視界が拡大するとともに、風切音低減による高い静粛性も実現する。また空力性能にも影響してくるだろう。そしてもちろん、クルマのデザインも変わってくる。

 とはいえ、車内のどの位置にモニターを置くか、どのように表示するか、他のどんな機能と協調させるのかなどを含めて、今後さらにブラッシュアップが求められていくのも間違いない。しかし、デジタルアウターミラーとすることで、自動車はこれまで以上に周辺環境の確認を容易にしてくれるだろう。

なお、このデジタルアウターミラーは、新型ESの最上級グレードであるバージョンLにオプション設定され、価格は21万6000円からとされている。なお新型ESの価格は580万円からで、本日時点での受注台数は月販目標の6倍となる、2200台となっている。

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自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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