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三菱エクリプスクロスを公道で試す。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
写真/動画は全て筆者撮影

 三菱自動車が4年ぶりに送り出した新モデル、エクリプスクロスをついに公道で試すことができたので早速簡単なレポートと動画で報告したい。まずは先日YouTubeに、このモデルのサーキットでの試乗動画を投稿したのだが、実はこれは1月末に撮影していたもの。正式な発表と試乗会のタイミングまで公開できなかったので、試乗会のタイミングでの3月末に公開した。

 さらにこの時と前後して、このモデルのディテールをチェックする動画も公開している。これは3月末に試乗会が開催された際に撮影したもので、デザインに始まり内外装、そして実際の使い勝手などをレポートした。ご興味があればこちらも合わせてご覧になっていただくと、よりこのモデルへの理解が進むはずだ。

 また2月の頭には、北海道で雪上試乗会が開催されたが、この時も簡単に動画を撮影したので、これも合わせて見ていただければと思う。こちらに関しては動画でも語っているように、三菱のお家芸である4WDのコントロールによる車両制御技術であるS-AWCの効果が存分に確認できる試乗だった。

 そして今回、3月末に公道で試乗した印象をお届けする。こちらもこのレポートに合わせて動画を公開したので他の3つの動画と合わせてチェックしていただければ幸いだ。

 以前に千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで走らせた理由は、この時まだエクリプスクロスが認可される前だったため、ナンバープレートが交付できないのでクローズドコースでの試乗となったからだった。そしてせっかくサーキットで試乗するのだから、このクルマの限界域での挙動を含めたチェックを行なったわけだが、この場所ではとても好印象を受けた。

 

 まずSUVでありながらも、極めて軽やかな身のこなしを実現していた。サーキット走行では公道の数倍の負担がかかるが、そうした領域でも実にしっかりしており、むしろサーキットが楽しく感じられる走りを手にしていたといえる。つまりサーキットでは、雪道同様に、三菱のお家芸のS-AWCの効果が存分に感じられた。背の高いSUVながらも、カーブではグイグイと曲がっていく様がスポーティで、他のSUVにはない個性を感じさせてくれたのだった。また1.5LエンジンとCVTの組み合わせも、限界域でも不満のないものだった。

 では、そうした走りのエクリプスクロスは公道ではどうだったのか?

 実際に御殿場周辺の一般道、高速道路を走らせたが、総じて好印象に変わりはなかった。ただしサーキットで走らせた時と異なるのは、公道ではサーキットほどの個性的な部分(S-AWCの効果)はなく、むしろ「悪いところはない」という印象。エンジンやトランスミッションの印象は、必要にして十分以上で悪くない。また乗り心地も一般道では好印象で、静粛性も平均以上だった。ただ高速道路では、一般道での乗り心地の良さとバーターで、路面の変化や荒れに対してはややナーバスで、振動や衝撃もそれなりにあった。だから高速道路ではもっとフラットな乗り味が欲しいところだが、これを実現すると今度は一般道での乗り心地は、やや損なわれるだろうと思えた。この辺りはどちらを取るかの落とし所でもある。

 そして総じて好印象ではあるのだけど、最近のライバルとの個性での勝負となると、ややキャラクターが弱いと思えたのも事実である。というのも雪道やサーキットではS-AWCの効果で、三菱らしい積極的なハンドリングが得られたが、公道領域ではそうした三菱のお家芸が顔を出すようなシーンが残念ながらない。このため走りは総じて悪くないが、その一方で鮮やかに印象に残るような部分は薄いわけで、この点はやや気になったのだった。詳しくは動画を参照にしてほしい。

 また装備は運転支援を含めて最近のトレンドをほぼ抑えているものの、リアのハッチゲートは電動式を採用しても良かったかもしれない。動画の中でも言っているが、最近はライバル比で「何がついているか?」よりも「何がついていないか?」を指摘されてしまう時代でもある。その意味では最近のトレンドであり、SUVのようなライフアクティブな方の生活に寄り添うクルマには、電動テールゲートは用意されているとありがたいし、さらにバンパー下に足でキックすることで開閉ができる、ハンズフリーがあっても良いだろう。

 もっともエクリプスクロスは、コンパクトSUVのクラスであり、このクラスのライバルも電動テールゲートを備えていないモデルも多いが、最後発に近いモデルであれば、その辺りで差をつけることも手としてはありだろう。

 とはいえ三菱として4年ぶりに送り出された新モデルは、なかなか優れたバランスに仕上げられていたのだった。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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