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SUVが自動車の定番になりつつあるワケ。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

この2〜3年で一気に自動車の定番になりつつあるSUVというカテゴリー。現在ではボディサイズの大小や価格の高低、そして国産車/輸入車を問わずして続々と新モデルが投入されている状況にある。

先日、スバルが同社のコンパクトSUVである新型XVの試乗会で提示したデータでは、2010年と2016年を比べると国内でのSUV販売推移は実に2倍以上となっており、2010年に全体で約21万台程度だったものが2016年では約45万台へと増加した。加えてセグメントで見ると、コンパクトSUVの増加が激しく、Bセグメントでは2010年比で約3倍以上となる伸びを見せている。また数値を見ると、2014年辺りから一挙に需要が増したこともわかる。

これまでの自動車の定番といえば、コンパクト系ならばハッチバック、それ以上のカテゴリーではセダンやステーションワゴンが存在していた。加えて90年代後半からは様々なカテゴリーでミニバンが主力となっていた状況でもあった。また軽自動車においては、背が高くスペースユーティリティを重視したハイト系が主役となっていた。

しかし時代が変わって、人々の嗜好も変わったからだろうか、ミニバンは徐々に販売台数が落ち着いていく傾向となり、それにとって変わってSUVが人気を得てきたわけだ。

理由は様々に考えられるが、やはり自動車がいわゆる生活のための道具となって久しく、そうした味気なさが当たり前となった中にあって、徐々に自動車において道具以上のプラスαや個性、多様性が求められるようになったからだろうか?

折しも”ライフスタイル”という言葉を耳にするようになった頃と、SUVの人気向上はシンクロしている。道具としての自動車というニーズは変わらなくとも、そこに自分らしさを表現するような要素や、個性を主張できるような要素が欲しい…そうした多様性が求められるようになったこともSUV人気の理由のひとつとして挙げられる。

また実際にSUVは、実に様々な側面を併せ持っていて、まさに多様性の時代に相応しいジャンルのクルマでもある。まずSUVはハッチバックを備えるため、使い勝手はこれまでのハッチバックやステーションワゴンに匹敵する。さらに車高の高さは、運転する時の視点の高さにおける運転のしやすさを実現するとともに、着座位置が通常のセダンやワゴン、ハッチバックよりも高いため、乗降のしやすさも手に入れている。嘘のような話だが、コンパクトSUVなどはこの点が魅力として、意外なほどに高齢者に受けているという。

さらにスタイリングでいうと、どこでも走れるオフロードな雰囲気を持ちつつ、モデルによっては都会的な表現も入るため、いわゆるこれまでの定番モデルよりも存在感があり、所有した場合には満足感も高いといえる。

さらにかつてはSUV=燃費が悪いというイメージがあったが、現在ではディーゼルやハイブリッドなどのパワートレーンを積極的に採用していることで、燃費に関してもエクスキューズがなくなった。実際、ミニ・クロスオーバーは日本でのラインナップは全てディーゼル・エンジン搭載モデルとなり、今後投入されるガソリン・エンジン搭載モデルも、実際にはプラグインハイブリッドとなるため、純粋なガソリン・エンジン搭載車は存在しない。

また駆動方式に関しても、SUV=4WDというイメージが昔は強かったが、最近ではFFモデルを用意するモデルが意外なほどに多く、アウディQ2は日本試乗ではFFモデルのみの販売と割り切っている。さらに国産モデルのコンパクトSUVでも駆動方式にFFを用意するものが多い。

SUVは生活の道具として気軽に使える一方で、どこに乗って行ってもそれなりに様になり、実際に運転しやすく使いやすく、その上で個性を主張することも忘れていない…といった具合である。

それだけに実際に販売店に行くと、これまでの定番モデルに比べて非常に魅力的な商品として眼に映るのもなるほど納得といえる。こうして今やSUVは、自動車の定番になりつつある。果たしてこの人気はどこまで続き、どこまで拡大し、進化、変化するのかにも注目だ。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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