作新学院5連覇なるか。国学院栃木と決勝――100年目の高校野球・栃木大会

栃木大会準決勝は、2試合とも「7回コールド」で終わった。

しかし、一方的な試合だったかと言えばそうではない。

たとえば第1試合、「国学院栃木」対「青藍泰斗」。先手をとってリードして試合を進めたのは青藍泰斗だった。

2回、三塁線のツーベースを足がかりにバントと内野ゴロで1点を奪うと、ここまで4試合で39得点を挙げている国学院栃木を先発の左腕・古旗が4回まで0封。

古旗は110キロ台のボールが中心ながら投球術に長け、バットの芯を外しながらうまく投げていた(90キロ台のスローカーブも投げていた)。時折、制球を乱すこともあったが、それがまた相手に的を絞らせないことにもつながったかもしれない。

とにかく(互いに)ランナーを出しながらの展開ではあったが、青藍泰斗が1対0で中盤までリードしていたのだ。

ところが5回につかまる。先頭打者を四球で出したことがきっかけになったから、やはり制球の乱れは災いになったと言わなければならない。

さらにバント処理でのエラーが絡み、逆転を許した。

逆転された後、矢継ぎ早に投手をマウンドに送り、何とかかわそうとした。しかし、そこは強打の国学院栃木。安生にレストスタンドへ運ばれ、一気に突き放された。

この5回、主語を国学院栃木に置き換えれば、そのステディさが際立つ。

相手からもらった「チャンスの芽」(四球のランナー)にすぎなかった。それを確かなチャンスに広げたのはバントだった。

ただのバントではない。相手が嫌なコースに、嫌な強さで転がして、チャンスの芽を大きく育て、ビッグイニングに結びつけたのだ。

そして投手交代にも戸惑うことなく、集中打で一気に勝利を引き寄せた。

さらに目を凝らせば伏線もあった。

大量点を奪う直前の5回表、青藍泰斗の右中間へのライナーを、国学院栃木のセンター、金子がダイビングキャッチで好捕したのだ。抜けていれば3塁打という当たりだった。

その金子が、5回裏にフォアボールで出たランナーを進め、自らも生きる絶妙なバントを一塁線に転がし、チャンスを広げたのだ。

派手なファインプレーと繊細なバント。

相手にリードを許し、自軍は攻め切れない嫌な展開。そんな流れを陽転させる素晴らしいプレーだった。

敗れた青藍泰斗にも追加点を奪う機会はあったし、逆転された後、追撃する糸口はあった。それだけに悔しい試合だろう。まして3番手、板垣の直球に勢いがあっただけに、7回で試合が終わってしまったのは見ている側にとっても残念だった。

もう1試合、「作新学院」対「白鴎大足利」もワンサイドな試合ではなかった。

初回、作新学院が3点を奪ったが、クリーンヒットは一本だけ。バントと四球と内野ゴロでの得点だった。

それでも“王者”相手にいきなりの3失点。意気消沈しそうなところだが、白鴎大足利にそんな気配なかった。

4番大下がブルヒッターらしく猛烈な打球を放ち、塁上で雄叫びを上げると、5番小野寺がライトポール際に打ち込んで、あっという間に同点に追いついてみせたのだ。

何より白鴎大足利は、中軸のクリーンアップをはじめ、すべての打者がボックスで生き生きとしていて、見ていてポジティブな気持ちにさせてくれた。

バッティングが好きで、たくさんバットを振って、たくさんボールを叩いてきたことがスタンドまで伝わってくるようなチームだった。バッティングに自信を持っていることがわかるから期待感も募った。

そして事実、糸を引くライナーや外野への大飛球など、素晴らしい打球を数多く放った。

特に5回の満塁のチャンスで響いた快音(センター正面のライナーだった)にはスタンドが大いに沸いた。そんな惜しいシーンが何度もあった。

その強打の白鴎大足利に対して、作新学院は3人の投手を次々と繰り出した。

2回に先発の今井に打順が回ってくると早くも代打。4回、2番手の有田に打順が回るとまた代打。そしてその裏からはエースの倉井をマウンドに送り、勝利の確率を高めていった。

ちなみにブルペンではまだ二人のピッチャーが投球練習をしていた。

投手だけではない。交代した選手がいずれもレギュラーと遜色ないプレーをしたことからもチーム力の高さが伺える戦いぶりだった。

もちろん内外野の守備もスキがなく、またバッティングにおいてもバントやエンドランなど、すべてを高いレベルで実行していた。

4年連続優勝しているチームの底知れない総合力を感じさせる戦いぶりだった。

さて決勝は「国学院栃木」対「作新学院」。大本命同士の対戦となった。

国学院栃木は、この夏、すべての試合をコールドで勝ち上がってきた。準決勝は背番号「4」の渡辺が完投。明日は満を持してエースの左腕・大垣が登板か。

一方、県初の5連覇のかかる作新学院。大本命だが、準々決勝の文星芸大付戦では9回に追いつかれ、延長戦にもつれるなど苦しんだ試合もあった。しかし、そんな経験こそが大一番で生きるかもしれない。打撃戦が予想されることを思えば、その延長戦でも決勝ホームランを放った朝山がやはりポイント。主軸のバットがチームに歓喜をもたらすか。

どちらのチームにも優勝旗を掲げる力はある。あと1勝。栃木県63校の頂点に立つのは――。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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