完ぺきな大勝利。ハリルジャパン白星街道は続く――。

「一方的」な実力差

本田が相手の力量を見切ったのは何分くらいだったのだろう。

キックオフ直後こそボールへの激しく挑みかかるような姿勢を見せたイラクだったが、DFラインを高く上げる一方で、中盤でのプレスは緩いなど、組織も個人も機能的とは言い難いチームだった。

ギャップを見抜いたように(ポストに顔を出し)縦パスを受け、ラインの裏へ飛び出し……。そんなふうに本田が攻撃のリズムを作り始めたのは、試合開始からまだそう時間が経っていなかったはずだ。

5分で生まれた先制点は、まさにそんな相手から奪ったゴール。左サイドの狭いエリアではあったが、柴崎にプレッシャーはかかっていなかった。

ボールは弾んでいて簡単ではなかったかもしれない。しかし、あれくらいの時間とスペースがあればピンポイントのパスを出せる技術を、柴崎は十分持っている。

だから本田は、柴崎が前を向いたときには走り出していた。スタートダッシュでDFの前に出て、あとは右手を巧みに使って相手を抑えながら左足を振り抜いて決めた。

それからは、本田だけでなく岡崎、香川、柴崎らが、イラクのDFラインの前や後ろのスペースに巧みに入り込んでポジションをとり、縦パス、ターン、あるいはキープを繰り返しながら、攻撃を仕掛け、たまにボールを失ってもファーストディフェンスで奪い返し、また縦パス……。

主導権を手放すことなく、3つのゴールを決め、相手にはシュートをほとんど打たせず(前半終了間際のFKが初シュート)、ほぼ一方的な展開で前半を終えた。

ハリルジャパン3連勝

前半があまりに一方的だったから、後半の1対0には欲求不満を感じるかもしれない。

しかし、これだけワンサイドなゲームになり、80分前後から大幅に選手を入れ替え、特に攻撃陣の4人がリプレイスしたことを考えれば、多少のチグハグ感は責められないと思う。

しかも湿度75%のコンディションでは、パフォーマンスが落ちるのも仕方ない。いや、落として当然。

特にヨーロッパ組にとっては日本の湿気はきつかったはず。その意味では90分間ピッチに立ち続け、終盤にも攻守に走り回っていた長友のフィットネスとスタミナに(いつものことながら)驚嘆するべきなのだ。

何より「4対0」はリザルトとして妥当にして完ぺき。文句をつけようもない大勝利であった。

これでハリルホジッチ監督就任から3連勝。

「勝利のスパイラルを続ける。今年は一つも負けない」

試合を前に監督が、そう語った通り、ハリルジャパンはまた一つ白星を連ねたことになる。

連勝の中身

とはいえ、連勝の「相手」については、やはり言及しておかなければならない。

ここまでハリルジャパンが戦った相手は、チュニジア、ウズベキスタン、そしてイラク。

チュニジアはランク的には「格下」とは言えないが、来日したチームは本調子とはとても思えず、ウズベキスタンはそもそも「負けてはいけないレベル」だし、今日の「平均年齢23歳のイラク」も完ぺきに勝って当然のチームだった。

つまり「勝って喜べる」ような相手とはまだ試合をしていない。「3連勝」の中身について留保しておく必要はある。

しかも、これから戦う相手もまた「負けてはいけない」レベルばかりだ。

ワールドカップ予選のレギュレーションが変更になり、2次予選からの出場になったからである(この時点ではなんと40か国が参加している)。

ちなみに日本が戦うのは来週のシンガポールから始まり、カンボジア、アフガニスタン、シリア。すべてFIFAランク100位台の国である。

もちろん「絶対に勝てる相手はいない」は正論だ。「ナメてはいけない」も警句としては真っ当である。

だが、今年対戦するこれらのチームがいずれも「勝って当然」の相手であることは紛れもない事実。

もしも黒星を喫するようなことがあれば、それこそ大ブーイングものの相手ばかりなのだ(それに仮に一つくらい負けても2次予選は通過できる)。

白星街道は続くが……

「強化」という面からみても、これから戦う相手は適当とは言えない。

日本がワールドカップ本大会での躍進を目標としているのなら、なおさらである。

これは繰り返し書いていることだが、「アジアの強国」である日本の強化は難しい。

アジア予選で戦う相手と、本大会で戦う相手のレベル差が、あまりに大きすぎるからだ。

もちろん、アジア予選を勝ち抜かなければ本大会に出ることはできない。しかし、アジア予選と同じサッカーでは、本大会では勝つことはできない。だから、そこでどうしても齟齬が生じてしまう。

ファンやメディアもアジア予選で膨らませた期待を、本大会に向けることになるから落胆も実態以上に大きくなってしまう。

これまでも辿ってきた“道”である。

ハリルホジッチが口にしたように、日本代表は「今年は一つも負けない」だろう。

そう、白星街道は続くのだ、間違いなく。

しかし、それがワールドカップ本大会での勝利を約束するものではないことを、僕たちはすでに知っている。

来週から始まるアジア予選。その“使いみち”をそろそろ考えた方がいい。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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