まだ終わっていない――日本、コートジボアールに黒星発進

消極的な立ち上がり

長谷部のコメントが誠実だった。

「相手がよかったというよりも、自分たちが『自分たちのサッカー』を表現できず、負けた。こういう大舞台で(それを)表現する準備ができたと思っていたが……未熟だった」

立ち上がりから、いつもと違っていた。

動きが固く、重い。はじめはワールドカップ(しかも初戦)の緊張感かなと思ったが、時間が過ぎてもあまり好転しなかった。ザッケローニが好んで使う「インテンシタ」(強さ、たくましさのようなニュアンス)どころか、むしろ消極的にさえ見えた。

7分、本田がGKへのバックパスを追いかけ、プレッシャーをかけに長い距離を走った。チームを鼓舞しようとしているようにも、業を煮やしているようにも見えた。

しかし、スイッチは入らず、攻守にわたってアグレッシブさの感じられない立ち上がりとなった。

相手のコートジボアールも同様だった。様子見をしているのか、動きが少ない。

もしかしたらコートジボアールは日本(のパスワーク)を警戒していたのかもしれない。いずれにしても、ここまで今大会では「攻め合う試合」が多かったから、ゲームとしては退屈な序盤になった。

さすが本田。だが…

そんな中、本田がゴールを決める。ワールドカップへ向かう準備の中で、明らかに普段とは違う低調なパフォーマンスしか見られなかった彼だったが、さすがに本田。

ファーストタッチで相手をかわして(身体がずいぶんよれていてやはりコンディションはよくないのかもしれないと感じたが、それでも)ワンチャンスをきっちり決めた。

本当にさすがである。

しかし、その後は「本田らしさ」は薄かった。運動量が少なく、ボールタッチも少ない。

何より最大の長所である「キープ力」さえおぼつかなかった。相手と絡んでボールを失うという、あまり見たことがないような場面も何度かあった。

どこか悪いのか、調子が上がらないのか。(それでもゴールを決めるあたりが、彼のすごさなのだが)大会前の心配が現実となってしまった。

さらに香川はよくなかった。うまくいかず、焦りの仕草を見せることもあった。

そもそも、このところ好調な彼を見た覚えがない。スタメンから外すことも考えた方がいい。ジョーカー的な起用が、彼の「よくない流れ」を変えるきっかけになるかもしれない。

発揮できなかった「日本らしさ」

日本が先制した後、コートジボアールがようやく動き出した。といっても、個人での突破がほとんどで単発。

それでも脅威は十分で、日本は徐々に守勢に回らされることになった。

失点をしたのは後半20分前後だったが、前半の終盤からは「いつ失点してもおかしくない」ような状況が続いていた。

2失点とも同じような形(日本の左サイドからのクロス)だったが、他にも危ない場面はあった。ボールホルダーへプレッシャーがかからず、ゴール前では個人の技術とフィジカルで上回られ……。

もう少し組織力と集中力のあるチームだったら、さらに失点していたかもしれない。

逆転された後、日本は本田を1トップに上げて反撃を試みようとしたが、本田そのものの調子がよくないので、ボールキープができず、期待していたような厚みのある攻撃には結びつけられなかった。

日本が「日本らしいサッカー」を見せたのは34分すぎ。いい距離感で選手が攻め上がり、パスをつなぎながら、動き、追い越し……。わずかではあったが、日本らしさが見えた時間だった(遠藤が入って、少しテンポが出た。やはり日本らしさを出すためには彼は必要かもしれない)。

最後の最後、吉田を前線に上げてパワープレーで同点を目指したが実らず、そのまま1対2で敗れた。

まだ終わってはいない

さて黒星発進となった日本。

しかし、もちろんリーグ戦だから「まだ何も終わってはいない」(スペインは1対5で敗れている。でもこれでスペインのワールドカップが終わったとは誰も思っていないだろう)。

もちろん、初戦で勝ち点をまったく手にできなかったことは痛い。グループ1位候補のコロンビアがきっちり勝ち点3を獲得していることを考え併せれば、さらに痛い。難しい立場に追い込まれたと言わざるをえない。

それでも、まだどのチームも決勝トーナメント進出を決めたわけでも、なくしたわけでもないのだ(1勝1分1敗で勝ち抜けることもあるし、2勝しても敗退することもある。アトランタ五輪がそうだった)。

まずはコンディションをできるだけ取り戻すこと。身体だけでなく、心もだ。

そして、「日本らしいサッカー」をやることが第一の目標であるならば(このチームはそういうチームに見える)、勝敗よりもそこに注力することだ。

「日本らしいサッカー」を披露することができれば、 仮に2対3で敗れても、3対4で敗れても、そこには納得と前進があるはずだ。

次戦はギリシャ。「日本らしいサッカー」をやりやすい相手かもしれない。そして、もしかしたら日本が気分よく攻めた結果、試合には負けてしまう危険性が大きい相手かもしれない。それでも――。

追い込まれた。選べる道も限られた。ならば、貫いた方がいい。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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