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日本がオランダを圧倒……したのか?――日本2対2オランダ

川端康生フリーライター

ハーフタイムをはさんで2つのゲーム

前半と後半で別のゲームを見ているようだった。

前半は、立ち上がりこそ日本もコンパクトな守備とサイドからの攻撃でいい形を作っていたが、内田のエラーから失点すると、その後は完全にオランダのゲーム。2失点目となったロッペンのシュート(スーパーだった)だけでなく、全体を通じて力の差を感じざるを得ない45分だった。

だからハーフタイム直前に大迫のゴールで1点を返した時点でも、そう明るい展望は描けなかった。

ところが、後半になると日本が躍動する。

交代出場した遠藤と香川をはじめ、選手たちが生き生きとプレー。プレッシングで相手を追い込み、高い位置でボールを奪取。奪ったボールを預けては動き、スペースを次々に突いてアクティブなサッカーを繰り広げた。

圧巻は60分の本田の得点。遠藤のチェンジサイドから始まり、内田、岡崎、大迫、そして本田が絡んだ美しいゴールで、このあたりから試合終了までは(前半とはまったく逆に)完全に日本がゲームを支配した。オランダを圧倒し、3点目(勝ち越し点)が入るのも時間の問題、そんな予感さえ抱かせる展開だった。

結局(予感は外れて)2対2のドローでゲームは終わったが、もしも後半だけを対戦チームの情報をまったく持たずに観戦すれば、「オレンジよりブルーの方が強いチームだ」と感じても不思議ではない、そんなゲームになった(かなりはしゃいだメディアもあったのではないだろうか)。

緩んだオランダ、躍動した日本

もちろん、それは誤解である。

前半2点をリードしたオレンジチームは、後半には(前半あれだけ効いていた)デヨングをベンチに下げ、さらには(やはり前半、格の違いを見せていた)ファンデルファールトも下げ、そんな采配に呼応するように選手たちのテンションも落ち……。

結果、オレンジチームの攻撃のパワーが落ちただけでなく、ブルーチームにはスペースと時間がふんだんに与えられることになっていた。

後半の日本の躍動は、その賜物だったと言っていい。

それは言い換えれば、スペースと時間を与えられれば日本もあれくらいはやれる(香川は、得点こそ決められなかったが、王様のようだった)ことの証でもあるのだが、そんなことはこの一戦を待つまでもなく、コンフェデレーションズ杯のイタリア戦などですでに証明済み。

だから相手が緩んだ後半に、好ゲームを展開したからといって驚くことはないし、喜ぶこともできない。

その意味で、目を向けるべきは(ザッケローニ監督も語っているように)やはり「結果」ではなく「内容」だと思う。

つまり、「強豪オランダと2対2で引き分けた」という結果はあまりアテにせず、「ゲームの中で垣間見えた」内容に目を凝らすべきということだ。

見えてきた可能性

そんな「内容」の中でポジティブな点について列挙すれば……

フィールドをコンパクトに保ち、連動したプレッシングで相手をハメることができれば、日本の時間帯を作ることができる。「ハメられる」ように、ここはもっと突き詰めてクオリティを上げたい。

遠藤は試合途中からの起用でも可(90分の時間がないと持ち味発揮しにくいと思っていたが)。むしろテンポが変わって面白いかもしれない。

その「遠藤」とも関連するが、早い失点を防ぐためにもスターターには守備力の優れたボランチを並べた方が勝機が出そうだ。

……などなど。ワールドカップ本大会での戦いをイメージできる「気づき」もいくつかあった(もちろんネガティブな方もあったが、今日は割愛)。

2対2という結果にはあまり大きな意味を感じられないが、やはり欧州での強豪との対戦は有意義なのだ。

さて3日後にはベルギー戦が行われる。

しかも、こちらは“日本向け”ではないゲームになりそう。要するに「内容」を反映した「結果」がちゃんと出そうな試合になりそうだ。見応えはオランダ戦以上だろう。

そして何といっても、日本代表にとっては今年最後の90分。

日本でのテレビ観戦には辛い時間だが(目ざまし時計をセットして)見る価値があるゲームになると思う。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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