気になることはあったけれど――日本代表、ヨルダンに黒星

やはりワールドカップ予選は難しい

5大会連続のワールドカップ出場を決めた……と書き出すつもりでいた。

しかし結果は御存知の通り、ヨルダンに1対2で敗戦。ワールドカップ出場を決めることはできなかった。

「書き出すつもり」でいたのは、やはり前回対戦時(昨年6月)の印象が強く残っていたからだ。

6対0。早々にゴールが決まったこと、前半のうちに退場者が出たこと、日程の関係で強行軍での移動……などを差し引いてもヨルダンは精彩を欠いていた。チームとしての戦術的な狙い(“格上”の日本と対戦するのに)も感じられなかった。

だから、もしも勝てなかったとしても負けることはないだろう……つまり引き分け以上でワールドカップ出場が決まると思っていた。

しかし、この夜のヨルダンは前回対戦時とはまったく違っていた。選手たちの多くはランニングスキルが高く、ロングドリブルを仕掛けても腰が浮くことなく、プレーをやり切ることができていた。

前線の選手たちは懐が深く、キープ力があり、プレーレンジが広く、日本の守備者の手を焼かせていた。

だから前半終了間際に失点して0対1でリードを許した時点で、もしかしたら……という懸念もよぎった。

僕自身の心持ちは、後半に入り2点目を失った時点で「もしかしたら」がさらに強まり、香川が1点を返したところで、「やっぱりこの試合で決まるかも」と揺り戻し……。要するに、まあ、どっちが勝ってもおかしくないゲームだったと思う。

相手が“格下”だったとしても、これはワールドカップ予選。やはり簡単には行かない、そんな当たり前のことを改めて実感することになった。

香川のトップ下?

日本代表に関して言えば、「香川のトップ下」は気になった。

「気になった」というのは、これまで「香川はサイド」にこだわってきたザッケローニ監督が、なぜこの試合で考えを変えたのかということ。

それもトレーニングマッチのカナダ戦で、<前半=香川トップ下>、<後半=中村トップ下>を試し、後半の方に好感触を得ているように見えたにもかかわらず、だ。

実際、ヨルダン戦での香川は(1ゴールは決めたものの)能力を発揮できているとは言えなかったし、(攻撃面だけではなく)守備面でのデメリットもあったように思う。

「バランス」を重視するザッケローニ監督(僕はそう思っている)の中で、どのような心境の変化があったのか。そのあたりが気になったのだ。

そして(その香川のポジションと関わりのある)本田、長友の不在も、試合を見ながら多少感じた。

実は「書き出すつもり」の原稿では、20年前、ワールドカップ出場を決められなかった予選では、<たった一人の左サイドバック不在の穴を日本代表は埋められなかった>というエピソードに書き継いでいく予定だった。

都並の代役探しに日本サッカー界は右往左往したのだ、と。あれから20年が経ち、中心選手が欠場しても大丈夫な日本代表になったのだ、と。

それでもやっぱり

この夜のヨルダン戦では、そんなエピソードは書くことができなかった。それでも結びは予定通りでいいと思う。

確かに本田と長友の不在は感じた。二人がいたら違ったゲームになっていただろう。

しかし、本田がいなくても清武がいるし、中村もいる(乾もいる)。長友がいなくても酒井(もう一人の酒井も含め)がいるし、駒野もいる。別の特徴を持つ選手が出て、別の展開のゲームが繰り広げられるだけのことなのだ。本当に代わりがいなかったあの頃とはまったく違う。

やっぱり日本代表は、20年前とは比べようもないほど、分厚くて、強くなった。

その証拠に……敗れたとはいえ4勝1分1敗で勝ち点「13」で、堂々の首位。残り2試合で勝ち点「1」(事実上それさえも必要ないほど優位な立場だが)はそう高いハードルではない。

だから――5大会連続のワールドカップ出場が決まった。

6月4日か、11日の夜、そんなふうに原稿を書き出すことができるはずである。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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