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SDGS ゴール14 「海の豊かさを守ろう」について学ぼう その3

勝川俊雄東京海洋大学 准教授、 海の幸を未来に残す会 理事
(写真:アフロ)

それでは、SDGs14「海の豊かさを守ろう」のターゲットの続きを見ていきましょう。

14.5 2020 年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、 少なくとも沿岸域及び海域の 10 パーセントを保全する。

ターゲット14.5は海域の保全に関するもので、その根拠は2010年に名古屋で開催されたCOP10の愛知目標11です。

2020年までに、少なくとも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%、特に、生物多様性と生態系サービスに特別に重要な地域が、効果的、衡平に管理され、かつ生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域をベースとする手段を通じて保全され、また、より広域の陸上景観や海洋景観に統合される。(愛知目標11)

COP10が開催されたのは2010年なので、すでに10年が経過しています。世界の海洋保護区の面積は急激に増加し、2017年には国家が管轄する海面の14.4%が保護区になり、目標は達成済みです。2020年には23.2%が海洋保護区になっていると見積もられています。たった10年で、保護区の面積は4倍に増えて、目標の倍の水準が達成できる見通しです。パラオのように積極的に海洋保護区を設定している国も存在します。

世界の海洋保護区(%と面積)出典:https://www.env.go.jp/council/12nature/y120-35/mat02_4.pdf
世界の海洋保護区(%と面積)出典:https://www.env.go.jp/council/12nature/y120-35/mat02_4.pdf

日本の現状はどうでしょうか。自然公園や自然海浜保存地区など生態系の保全を目的としたエリアは、日本の海面の0.4%に過ぎません。日本政府は、「漁業者が利用している漁場は、漁業者が管理をしているので、保護区に該当する」という独自の解釈によって、共同漁業権が設定されたエリアを保護区と見なしています。海洋水産資源開発促進法の指定海域も保護区と見なしています。法律の名前の通り水産資源の開発を促進するための指定海域であり、種の多様性や、生態系の保全を目指したものではありません。指定海域は沿岸を中心に日本の沿岸域を網羅しており、日本の海面の約7%が該当します。そこに共同漁業権区域などを加えていくと、海面全体の8.3%が保護区ということになります。

共同漁業権が設定されている海域であっても、水産資源すら守られていない事例が数多く存在します。環境負荷を無視した養殖が行われ、海底にヘドロがたまっているような場所も数多く見られます。漁業自体が環境へのストレスになっているのです。また、漁協の許可があれば、埋め立てや護岸工事等も自由に行うことができるので、環境破壊の抑止力としても不十分です。

漁業の指定海域等を保護区としてカウントすることには、自然保護協会からも、異論が出ています。

海洋保護区 (MPA) 8.3% という政府見解を見直し、 生物多様性保全を 目的とする MPA 制度を再構築すべきである。

アクロバティックな解釈によって、見せかけの数字を増やそうという姿勢は、COP10の精神に反していると言わざるを得ません。もう2020年には間に合いませんが、日本周辺の海洋生態系や種の多様性を守るために、実効性のある海洋保護区の設定に取り組むべきでしょう。

東京海洋大学 准教授、 海の幸を未来に残す会 理事

昭和47年、東京都出身。東京大学農学部水産学科卒業後、東京大学海洋研究所の修士課程に進学し、水産資源管理の研究を始める。東京大学海洋研究所に助手・助教、三重大学准教授を経て、現職。専門は水産資源学。主な著作は、漁業という日本の問題(NTT出版)、日本の魚は大丈夫か(NHK出版)など。

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