魚介類の半数、資源量危機 日本周辺、水産庁が評価

(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

最近、サンマやスルメイカなどの不漁のニュースを頻繁に耳にするようになりました。今日は、日本周辺の主要な魚介類の半数が資源量危機というこちらのニュースを深掘りしてみましょう。

 日本周辺海域で取られている主要な魚介類を魚種や分布域で分けると、北海道のホッケや日本海のスケトウダラなど、ほぼ半数は資源量が少ない状態だとの評価結果を水産庁が8日までにまとめた。2割超は少ない上に近年、減少傾向にある。一方、資源量が豊かだとされたのは2割に満たず、水産庁は「回復に向けた資源管理が重要だ」と指摘している。

出典:共同通信 魚介類の半数、資源量危機

このニュースの元となったのはこちらの水産庁のプレスリリースです。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/181030.html

資源の半数が低水準というと驚く人も多いと思いますが、実は、現在の資源評価が始まった1996年(平成8年)から一貫して、約半数の水産資源が低水準にとどまっています。あまりメディアに取り上げられてこなかったのですが、最近になって低水準資源が増えたわけではありません。

我が国周辺の水産資源の状態
我が国周辺の水産資源の状態

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/190124.htmlより引用

私は、仕事柄、漁師と話をする機会も多いのですが、魚が減っているというのは彼らの共通認識です。そして、漁獲量も激減しています。日本の海面漁獲量(天然)を下の図に示しました。1996年の600万トンから、2018年には325万トンへと半減しています。サンマやサバなど個々の魚種に着目してみると、年によって増えたり減ったりするのですが、全体で見ると直線的に減少しているのです。このペースで漁獲量が減っていくと20年後には漁業という産業がなくなっているかもしれない。そんな勢いで漁獲量が減少を続けています。

日本の海面漁獲量(天然) 漁業養殖業統計年報より作成
日本の海面漁獲量(天然) 漁業養殖業統計年報より作成

数字に強い読者なら、「低位、中位、高位の比率は安定しているのだから、資源状態に大きな変化はないのではないか?」と疑問に思うかも知れません。魚が減っても低位、中位、高位の比率は変わらないというそのカラクリは、日本が採用している独自の資源水準の定義にあります。

海外では持続的に漁業を行うのに適切な資源水準(MSY水準)を中位と定義して、資源水準を評価するのが一般的です。この場合、魚が減れば低位の割合が増えていきます。日本では、最近の平均的な資源水準を中位と定義しています。魚が減った状態が長く続けば、その水準が中位になるという仕組みです。日本で中位水準と評価されている資源のなかには、過去の過剰漁獲で資源が減少した状態が維持されているものも、多く含まれています。国際的なやり方で水準を評価すれば、ほとんどの資源が低水準になるでしょう。

例えば、福島県が主な漁場であるヒラメ太平洋系群は、原発事故以降、漁獲がほぼ停止したため、資源が大幅に増加しました。資源が高位だったにもかかわらず、急速に増えました。高位や中位の水準が低く設定されていることがわかります。減った状態を中位水準としたので、資源のポテンシャルに対して、極めて低い水準になっていたのです。

平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)http://abchan.fra.go.jp/digests2018/html/2018_57.html
平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)http://abchan.fra.go.jp/digests2018/html/2018_57.html

日本における「豊漁」の報道にも注意が必要です。こちらの記事に詳しく書きましたが、かつては100万トン獲れた北海道のニシンは資源が激減して、数十年が経過しました。最近になって、たまたま数千トン獲れた年があると「ニシンが豊漁」とメディアが大きく報じます。他国であれば資源崩壊と定義されるような状態でも、日本では豊漁になってしまうのです。

以上見てきたように、資源が低位水準から回復せず、漁獲が激減しているのですが、水産庁はプレスリリースの中で「これら資源の回復に向け、的確な資源管理を今後も行っていくことが重要です。」とコメントをしています。すでに的確な資源管理が行われているという認識のようですが、認識を改める必要があるでしょう。