Yahoo!ニュース

築地市場の水産仲卸組合理事長が小池知事の基本方針への協力求めて理事会招集、初の意思表示へ

加藤順子ジャーナリスト、フォトグラファー、気象予報士
東卸組合の理事会はどんな結論を出すのか…

 築地市場(東京都中央区)の540の水産仲卸でつくる東京魚市場卸協同組合(東卸組合)の早山豊理事長は、16日午後に臨時理事会を招集する。議案には、6月20日に小池百合子都知事が表明した基本方針に全面協力する方針が含まれており、組合として初めて態度を明確にする方向だ。

■豊洲一時移転への全面協力を早山理事長が自ら提案

都知事築地市場訪問で面会した東卸組合の早山豊理事長(2017年6月22日)
都知事築地市場訪問で面会した東卸組合の早山豊理事長(2017年6月22日)

 築地市場最大の事業者団体である東卸組合が理事たちに宛てた12日付けの臨時理事会の招集通知には、議案として、

<豊洲築地問題に対する東卸行動方針「小池都知事の基本方針に全面協力し、ともに実現する」を決定し、速やかに小池都知事に提出すること及び臨時総代会の開催日程(案)について>

 と書かれている。

 東卸組合行動方針とは、築地を市場として再開発する種地として豊洲市場(東京都江東区)に一時的に移転をすることに賛同する視点から、企業の株主代表にあたる同組合の総代会(全85人)の有志21人がまとめたものだ。

 東卸組合は昨夏まで、移転推進派の前理事長の下で決めた方針のもと、昨年11月7日に予定されていた豊洲市場の開場日に向けて準備をすすめてきた。しかし、適切な組合員に情報共有がなされず、各事業者の移転準備に混乱や遅延が生じていた。

 昨年8月末、小池都知事が土壌汚染問題の検証を理由に移転延期を発表した後は、豊洲市場の建物の安全対策に不備があったことや、環境基準を大きく上回る地下水汚染が判明した。都が市場の業者に約束したはずの移転合意の前提が守られていなかったことが明らかになり、東卸組合のなかでは、築地での市場再整備を期待する声が高まった。

 今年1月に早山氏が理事長に就任してからは、新執行部は東卸組合として市場移転や築地再整備についての賛否の態度を示さず、早山理事長が会見や囲み取材で、「現段階では豊洲への移転は考えられない」「みんなの意見を1つにまとめることはない」などと話すにとどめてきた。

都知事の基本方針発表を受け、東卸組合執行部は「会員の意見集約の予定はない」と話していた(2017年6月20日、築地市場)
都知事の基本方針発表を受け、東卸組合執行部は「会員の意見集約の予定はない」と話していた(2017年6月20日、築地市場)

 知事の基本方針を受けて、早山理事長は、近いうちに組合員の多様な声を集めて都知事に提出する意向を示していたが、アンケートの実施を待たず、小池都知事の基本方針に賛同する新たな機関決定に向けた議案を自ら諮ることにした模様だ。

 臨時理事会の議決によって、東卸組合は移転延期後初めて組合としての方針を明確にすることとなる。

■都知事の基本方針後の各方面の動き

 小池都知事が「築地は守る、豊洲は活かす」と移転方針の表明をしてから1ヶ月半。東京都と議会の手続きは具体的に進み始めている。

「長年培った築地のブランド力」を活用して築地を再開発すると小池都知事は方針説明(2017年6月20日、都庁)
「長年培った築地のブランド力」を活用して築地を再開発すると小池都知事は方針説明(2017年6月20日、都庁)

 7月21日には、9局長が集まる「市場移転に関する関係局長会議」で、主に早期移転と五輪準備が話し合われ、今月10日には、小池都知事自らが、豊洲移転工事や経費や築地再開発の検討を含む都中央卸売市場会計の8月の補正予算案について、定例記者会見で公表した。

 7月の選挙で議員が一新された都議会も、今月8日には、都民ファーストと都議会公明党が野党の強い反対を押し切る形で、「豊洲市場移転特別委員会」の廃止と、今後、市場移転をめぐる諸問題については常任委員会で話し合うことを決めた。

 築地市場の業者のなかには、この1年間中断していた豊洲移転準備を再開する動きもみられる一方で、依然として築地市場で営業しながらの再整備にこだわる業者もいる。また、知事の基本方針通りに築地再開発で市場機能が整備された後に、築地に戻ることを期待する業者もいる。

 小池都知事の基本方針に対する賛否の表明につながる16日の臨時理事会での理事たちの判断には注目が集まりそうだ。総代有志からは臨時総代会の開催要求が出ていることから、執行機関である理事会での議案が仮に否決となれば、予定通り、中小企業等協同組合法に基づき臨時総代会が開かれる。

ジャーナリスト、フォトグラファー、気象予報士

近年は、引き出し屋問題を取材。その他、学校安全、災害・防災、科学コミュニケーション、ソーシャルデザインが主なテーマ。災害が起きても現場に足を運べず、スタジオから伝えるばかりだった気象キャスター時代を省みて、取材者に。主な共著は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)、『下流中年』(SB新書)等。

加藤順子の最近の記事