「自然豊かな日本に生まれて幸せ」表もあれば裏もある自然と付き合う心構え
台風、地震、火山などの自然災害は私たち自身の都合に合わせてコントロールすることはできません。自分の命を守ることが優先すべきことなのです。
自然は挑む相手ではないことを知ってください。私たちにできることは自然現象に関心を持つこと、そして脅威のパワーから逃げることです。これらを登山の視点からお伝えします。
毎年確実にやってくる台風でさえ、進路は予想できても被害を全くなくすことができない。そのことは千葉県の広域にわたる被害を見れば誰も否定することはできません。今まさにこの時も被害の復旧に汗を流し、今後の人生設計に大きな修正を強いられている方が多くいるわけです。
1995年に体験した阪神淡路大震災も来年1月17日で四半世紀になります。全国からの支援や多くのボランティアのサポートもありました。
2011年3月11日の大地震や各地での豪雨災害は被害の広域性と被害者数の多さから「明日は我が身」と誰もが考えていかなくてはなりません。
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気象庁によれば日本の活火山は111あることになっています。概ね1万年以内に噴火した証拠があるというのがその大きな条件だそうです。私たちが親しみを感じている「日本百名山(深田久弥氏が決めた)」のうち約3分の1が活火山です。
百名山にこだわりが無い方にとっても、自分が登ろうとしている山が活火山であるかどうか、注意すべき情報が出ているかどうかに関心を持ちたいものです。
最近も火山性微動が観測されたというニュースもありました。
1:空中を飛んでくる噴石や火山弾だけでなく、斜面を転げ落ちてくる落石は私たち人間にとって直接的な脅威です。
岩石の密度は2.5~3.5(g/cm 3)あります。水は1.0(g/cm 3)です。固く重い岩石が勢いよく肉体に衝突すれば、ダメージは致命的です。かつて、上越谷川岳一ノ倉沢奥壁のクライミング中にヒューンヒュンと頭上を飛び越える落石に身を縮めたことを思い出します。
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火山情報が発生されたら登山を中止することを視野に入れ、登山可能でもヘルメットの携行と着用は必ず行いましょう。
2: 強風による物の飛散や倒壊は千葉県の被害を見れば想像できるかと思います。登山においては平均風速15m/S以上吹くと予測されるとき、標高2500mを越える森林限界を超える場所にいることはとても危険です。転倒とそれによる怪我、転落滑落の危険があります。
これからの季節は特に、強風によって体温を失い低体温症を起こすこともあります。
稜線上のピークとピークに挟まれた低い場所「コル(鞍部とも乗越)」では斜面を吹き抜ける強風が収束して猛烈な強風がつくりだされます。かつて私は這って通過中、凧が風を受けるように持ち上げられ叩き落された苦い体験があります。
風は渦を巻き、地形で変化してあらゆるものに襲いかかります。大木をたたき折り根こそぎひっくり返します。決して風の力を侮ってはいけません。
3:豪雨に登山をしてはいけません。沢ルート、雪渓ルートは特に危険です。今年の夏、尾根ルートの小さな沢を横切った時のことです。流された土石と流木がつくった小さな自然ダムが一気に崩壊し、ゴロゴロという気持ちの悪い音を出して流れ下りました。雨は岩のすき間の土砂を流し去り浮いた岩を作りだします。不安定な岩が多くある緩んだ斜面から落石が起きると、視界も悪いうえに音も聞こえにくので致命的です。たいへん恐いものですからそのような地形の場所には入り込んではいけません。
美しい山岳地形は火山活動や氷河が削り、氷結融解は岩を割り、流水が山肌を削ることなど、長い年月かけてつくられてきました。動植物もその環境に適合し変化してきました。これから始まる美しい紅葉の景色を温泉に入りながら見る贅沢と日本の風土に育てられた郷土料理を味わってほしいと思います。
山への怖れを失うことなく謙虚に山を歩いて心身を健康に保っていきましょう。