国立競技場解体予算を徹底解体しよう。

5月18日のポール・マッカートニーの公演を花道に、神宮外苑の国立競技場は解体される予定だった。しかしその解体は予定からずるずると遅れ、年末に始まると言われている。

主な理由は解体業者が決まらないことだ。5月に解体工事の最初の入札が行われた時には応札価格が日本スポーツ振興センター(JSC)の予定価格よりかなり高く、落札に至らなかった。2回目は予定価格を引き上げて(その根拠もよく分からないが)7月半ばに行われた。今度は落札企業は決まったものの、その決め方に談合疑惑が持ち上がり、内閣府の政府調達苦情検討委員会により調査が行われることになった。結果としては、証拠不十分で談合は認められなかったが、入札そのものは再度行うということになった。報道によると、施工主であるJSCの理事は「十分な調査ができていないが、職員に何らかの思い込みがあったのではないか。杜撰だという指摘を受けても受け入れざるをえない」と述べているという。そして、3度目の正直で落札が成立すれば12月に解体が始まるということなのだ。

しかし、実はこの入札手続きよりもずっと大きい「杜撰さ」がある。

解体費用とそのために用意されている予算額が大きく違っていることだ。

2回目の落札価格は計36億円弱だった。一方、解体のための今年度予算は203億円(文部科学省の平成25年度行政事業レビューシートによる)。この「差額」167億円には、官庁の予算の作り方に共通する問題が盛りだくさんにつまっている。順番に見ていこう。

この予算は文部科学省所管で事業名は「独立行政法人日本スポーツ振興センター施設整備費」。「解体」という言葉はどこにも見えない。文部科学省の自民党行政改革本部に対する説明によると200億円(文部科学省の資料では200億円となっている)の内訳は「現国立競技場等解体工事費」70億円、「埋蔵文化財発掘等調査費」4億円、そして「JSC本部事務所等移転関係費等」126億円となっている。「等」の中にはずい分といろんなものがつまっていると感心する。というより「等」の方が本体より大きいことにびっくりする。表向きは解体費用と説明しつつ、ちゃっかり自分のビルの建て替えに巨額の税金を使うというのも、またかという感じだ。この手のお手盛りは今やあまりないのかと思っていたのだが。さらに、126億円というのも通常のオフィスビルの相場からすると相当高い。この中にもさらに何かが隠されているのだろうか。もう少し調べてみると、JSCの本部と同様、国立競技場の大幅拡張のために移転することになる日本青年館(文部科学省の外郭団体)の建て替え(JSC本部と合築の予定とのこと)費用も含むらしい。税金の使い途に加えて、JSC-青年館の新ビルを建てるために、建設予定地の高さ制限を30mから80mに引き上げ、容積率も2倍にするなど、大幅に緩めている。民間企業は規制に従って建築をしないといけないが、官庁やその外郭団体は、自分の都合にあわせて規制を変えていいのか。しかも、この辺りは明治神宮外苑という日本で最初の風致地区で聖徳絵画館に隣接する。こともあろうに、文部科学省が伝統的な景観を損ねるようなことをしているのだ。そこまでして自分たちの組織のビルを建てたいということに「貧しさ」いや、「あわれ」をすら感じる。

ここでもう一度7月の落札価格36億円を思いおこして頂きたい。文部科学省が自民党に説明した70億のさらに半分ほどだ。この差の34億円は?? 結局国会に解体費等として提出した203億円の2割弱だけが本当の解体費なのか。あとの8割強は国会審議ではブラックボックスなのだ。ここまでくると、「杜撰」を越えて、政治、行政の「後進国」とされる国で、税金が権力者の私腹を肥やすことに使われているのと変わらないと言われてもし方ない。

200億円という金額は、大企業と言えども社員全員が死にものぐるいで働かないと稼げない。入札手続きにとどまらず、この「解体費用等」をもう一度、国会でもチェックしてほしい。

なお、落ちをつけると、上述の「行政事業レビューシート」上で200億円のこの事業予算の「成果指標」が「オリンピック競技大会における過去最多を超えるメダル獲得数」と記載されているのは、もうお笑いとしか言いようがない。

オリンピックは国民の祭典だ。その中心地である国立競技場を将来世代に誇れるものとして残したい。だからこそ、この問題を「他人事」にせず、ネット上で徹底的に議論したい。ネット上で大勢の人が協力して調べ、200億円の予算をすっ裸にするところから国民の祭典が始まると私は思う。

なお、以上は解体に関する問題だが、そもそも国立競技場建て替え自体に問題や疑念が満載だ。これについては5月2日のヤフーニュースで書いたので見て頂ければと思う。