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YouTubeでライブチケット購入が実現へ、業界最大手と連携し北米から開始

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
YouTube app(写真:ロイター/アフロ)

世界最大の動画プラットフォーム「YouTube」は、世界最大のチケット販売会社「チケットマスター」(Ticketmaster)との提携を発表しました。

アーティストのYouTube動画にコンサート情報を表示させ、Ticketmasterのサイトでチケット購入する連携を本日から開始となり、ファンは好きなアーティストの動画視聴からチケット購入までをより簡単に行うことが可能となりました。

YouTubeではまず選ばれたアーティストの全米ツアー情報から、最寄りの会場で開催されるライブ情報と、今後開催予定のライブ情報を、動画下にある概要の下部に配信し始めます。そして、ライブ情報の隣にある「チケット」ボタンをクリックするとTicketmasterのチケット購入ページが立ち上がり、そのまま購入を進められます。

YouTubeは、チケット販売企業との取り組みで、YouTubeを活用するアーティストの新たな収益源となり、ファンをライブへ誘導するための導線としての役割を果たすことが目的。

今後YouTubeでは、北米で開催するライブのチケットをTicketmasterで販売する全てのアーティストに、コンサート情報機能をロールアウトする予定で、その後は世界展開を目指すとのこと。Ticketmaster以外のチケット販売業者との提携が今後発表される可能性も示唆しているため、国名は明確にしていませんが、日本で実施することとなれば、国内のチケット販売会社との提携が登場する可能性もあると予想されます。

Ticketmasterは、すでにSpotifyとも連携を始めています。SpotiifyでもYouTubeと同様に直近のライブ情報を表示したり、(Ticketmasterが販売するイベントに限り)好きなアーティストの楽曲を聴きながらチケット購入サイトに飛びチケットを購入できる「ライブ・レコメンデーション」機能を昨年から実装しています。

YouTubeは、Ticketmasterとの連携によって、どのようなデータや収益のシェアが両者とアーティスト側と行われるかまでは明確にしていません。もし、アーティスト側がYouTubeからのチケット購入に関するデータが把握できるように分析ツールが改良されれば、動画からライブにファンを誘導したいアーティストたちのビジネスチャンス拡大にYouTubeが今後果たす役割はますます大きくなっていきます。

またこの機能を使って、将来はアーティストだけでなく、音楽フェスティバルやイベントへの拡大も期待できる他、メジャーアーティストだけでなくインディーズアーティスト、さらにライブ活動を行うYouTuberなどがファンに直接チケット購入を促すことが容易になってくるはずです。

問題点として、特に日本人アーティストに導入する場合は、北米ツアーを行う場合は必ずTicketmasterでチケットを販売する必要があることがまず挙げられます。そして、将来的に日本でも同じ機能がYouTube動画に実装されるとすれば、ぴあ、イープラス、ローチケなどの国内大手との連携が必須になってくるはずです。それがなければ、多くのメジャーアーティストたちのライブ情報を表示させたり、チケット購入の導線を作ることは不可能です。

さらに未来へ期待できるのは、「スマートスピーカー」と音楽ストリーミングサービスとが連動して、音声でのチケット購入や予約が可能になることが考えられます。チケット購入への導線を増やすことで、アーティストやマネジメントにとってファンとの接点を拡大させながら、利益増加につながるプロモーション活動に注力できるようになっていくはずです。

ソース

A New Way for Artists to Sell Tickets and Update Fans About Upcoming Shows(Official YouTube Blog)

(デジタル音楽ビジネスメディア「All Digital Music」で2017年11月15日に掲載された記事に加筆しています)

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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