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Spotify、全世界のユーザー数1億4,000万人を突破

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
Spotifyロゴ(写真:ロイター/アフロ)

定額制音楽ストリーミングサービスの「Spotify」は、月間アクティブユーザーが1億4,000万人以上を突破したと正式に発表しました。

発表したのは、Spotifyの副社長兼グローバルヘッド・オブ・セールスのブライアン・ベネディック(Brian Benedik)。6月17日開催の「カンヌ・ライオンズ 2017」に先駆けてSpotifyの広告主向けサイト「Spotify for Brands」に投稿したブログ記事で、詳細を明らかにしています。

先日アップルが発表したApple Musicの2,700万有料会員数を現在Spotifyは大きく上回り、コンバージョン率も相変わらずのペースを保っているSpotify。2016年9月に日本ローンチを成功させたSpotifyの現状をまとめると、サービス展開国数は60カ国、楽曲数は4,000万曲以上、プレイリスト数は20億個以上となっています。

■関連記事:いつ音楽ストリーミングはキャズムを超える?:ローンチ5カ月のSpotify Japan (DIGIDAY[日本版])

2016年6月に発表されたアクティブユーザーの数値は1億人であったことから、わずか1年で4000万人、月ベースでは平均330万人もの新規ユーザーを獲得してきた驚異的な成長速度を示しています。

今年3月にSpotifyは有料会員数が5,000万人を超えたことも発表しています。1億4,000万人ユーザー数から5,000万人を有料会員化したことは、Spotifyのコンバージョン率は35.7%であると計算できます。

■関連記事:Spotifyの有料会員、ついに5000万人の大台を突破

広告、マーケティングに効果を発揮するSpotify

今回のアクティブユーザー数の発表は、音楽業界に向けてのメッセージでもありますが、広告業界やマーケッターに向けたSpotifyの最新の取り組みを認知させる意味合いも強いと感じます。

発表がCEOのダニエル・エク(Daniel Ek)ではなく、ベネディックから行われたことも、広告主へ向けた直接的な情報開示と捉えて間違いないでしょう。

Spotifyは広告収入の数値も今回公開しています。Spotifyによれば、2016年は前年比50.3%増加して成長し、ブランドや広告主に対しても成果を挙げていることを示しています。ちなみに、2015年の広告収入は前年比98%増加して1億9580万ユーロでした。

音楽ビジネスの分野では、定額制音楽ストリーミングサービスからの収益が、業界の収入源の主流になると世界的に見られています。特に、SpotifyやApple Musicなどが牽引する音楽ストリーミングからの売上は、ダウンロードやCD売上の低迷を補うほど潤ってきました。

一方で、音楽ストリーミングサービスがブランドや企業のマーケティングを支援するツールと成り得るか、という問いは、有料サービスに加えて、広告モデルのフリーサービスの両オプションを提供するフリーミアムモデルのSpotifyが挑み続け、業界の見方を変えなければならないハードルです。

ベネディックは、Spotifyがユーザーの増加に伴って、今まで以上にリッチな一次データを学習し続け、蓄積したインサイトが他社との差別化となり、リスナー個々にパーソナル化した革新的な体験を提供できていると語り、Spotifyはブランドとターゲットとなるリスナーを今まで以上につなぐ、新たなパーソナリゼーションの時代の第一歩を踏み出したと強調します。

Spotifyもこれまで他社の音楽サービスと同様に、ブランド、広告主向けに提供するインサイトは、リスニングデータ(どのアーティストがよく聴かれる、誰が多くフォローされる、など)が中心でしたが、現在はこれらのデモグラフィックとは全く異なり、リスナーのサイコグラフィック情報と行動インサイトまで提供できるようにデータマイニングの技術と質を向上させてきた点が、他社と大きく異なります。

Spotifyが目指すデータ・ドリブンなアプローチによって何か変わるのでしょうか? ブランドや広告主は、リスナーの日常的なムードや行動と音楽のつながりを音楽再生から生まれるリスナーデータから紐解き、どんなコンテクストを使ったメッセージで消費者にアプローチすべきかという、マーケティング担当者が頭を抱える課題の解決を支援するツールとしてSpotifyを活用できるという価値提供へ、音楽ストリーミングが広告ビジネス面で効果を発揮し始めているのです。

■関連記事:揺らぐグーグル広告の信頼性──YouTubeへの「掲載基準」を巡り、広告主の離反が始まった(WIRED.jp)

広告業界やマーケッターは、グーグル/YouTubeやFacebookが設ける独自の広告規制に振り回されている感は否めません。Spotifyは「音楽を通じて人を理解しよう」という考え方の元、音楽というリスナーとのパーソナルなつながりを生み出すコンテンツから、膨大な一次データに基づいた良質なインサイトを独自に産出することで、より効果的で効率的なターゲティングを可能にし、消費者と広告の理想的なマッチングを目指す、デリケートな課題にチャレンジしています。

これらの流れを踏まえて、Spotifyが広告主向けの情報サイト「Spotify for Brands」で情報を開示していることは、他社の音楽サービスとは全く異なるアプローチを取っていることの確認できます。

企業や広告の事例を紹介したり、データや広告プロダクトの紹介に至るまで、現代の音楽ストリーミングサービスと消費者と広告の関係を理解する上で、重要な指針として見ることができるでしょう。

広告の世界では、確かな答えは見つけられていません。しかし、消費者の記憶や経験、行動に直接的に訴えかける音楽というコンテンツを足がかりに、ユーザーのインサイトを見つけていくSpotifyのアプローチは、まさに広告に対する新しい考え方となっていくのかもしれません。

ソース

140 Million Strong (Spotify)

The Time Is Now for Real-Time Audio Ad Buying (Spotify)

この記事は、デジタル音楽メディア「All Digital Music」で2017年6月16日に掲載された記事の転載です。

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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